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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

メリーゴーランド

作者: 夏野 蛍

「あれに乗ってみたら?」


そう言って岳ちゃんが、メリーゴーランドを指差した。


今日は僕と岳ちゃんの初めてのデートの日。バイト先のマクドで知り合った岳ちゃんに、僕が思い切って告白したのは1週間前。嫌われてはいないつもりだったけど、まさか両想いだったなんて思ってもいなくて、


「俺も誠人が好きだよ。」


って言われた時は膝の力が抜けてしまって、岳ちゃんが手を伸ばして僕を支えてくれなかったら床に座り込んでしまうところだった。


その時ほんの少しだけ触れた岳ちゃんの胸の温かさをまだ覚えてる。


だけどその後、バイト先でも笑顔で挨拶をしたり、ちょっとお喋りしたりする以外は特に何の進展もなくて、岳ちゃんは僕の「好き」の意味が分かってないんじゃないかなって不安になってた。そしたら昨日、岳ちゃんが僕を遊園地に誘ってくれたんだ。


「明日、バイト休みだろ?俺も休みだから二人でどっか遊びに行こうか?」


どこに行きたいって聞かれて咄嗟に何も思いつかなった僕が、逆に岳ちゃんにどこに行きたいか聞いたら、遊園地って言われた。岳ちゃんは絶叫マシーン系が好きだったんだ。


僕は岳ちゃんの行きたい所ならどこでも大歓迎だったから、深く考えずに頷いたんだけど、自分がその手の乗り物苦手ってことを忘れてた。子供の頃、ディズニーランドでスペース・マウンテンに乗って、降りた後もフラフラしてたのを、岳ちゃんと来た遊園地でツィスターに乗った途端に思い出した。


凄い勢いでレールの上を走るマシーンが空中で一回転して、身体が空中に逆さ吊りになった途端、それまでは必死に堪えてた悲鳴が迸った。そしたらもう止まらなくて、後はマシーンがスピードを落とすまで、僕はずっと泣き叫んでた。


岳ちゃんは最初僕が叫んだ時は笑ってたけど、直ぐに僕が本気で怖がってるって分かったみたいでびっくりしてた。女の子みたいにギャーギャー泣いたのが恥ずかしくて、降りてから小さな声で謝ったら岳ちゃんは困った様な顔をした。


「俺こそごめん。誠人がこういうの嫌いって知ってたら来なかったのに。」

「ううん。僕がちゃんと言わなかったから。」


それからは何回か岳ちゃんに一人で好きなマシーンに乗って貰った。平日だから人も少なくて、「じゃあちょっと待っててね。」って言って岳ちゃんが列に並んでも、15分もすれば戻ってきてくれた。


僕はそれでも岳ちゃんと一緒にいるだけで楽しかったのに、岳ちゃんは何か僕にも乗れるものがないかって考えてくれたみたいだった。でも、さすがにメリーゴーランドなんて、乗ってるのは小さな子ばっかだし、僕は岳ちゃんが冗談を言ってるんだと思って首を横に振った。


「どうせガラガラだし、誰も気にしないよ。俺も一緒に乗ったげる。」

「ええっ、岳ちゃんも?」


最初はすごーく恥ずかしかったけど、岳ちゃんと一緒に並んでクルクル回るのは凄く楽しかった。木馬は意外と高く上って、身体がフワフワ浮く。僕らの他にメリーゴーランドに乗ってたのは、小さな女の子と一緒のお母さんだけで、誰も僕らのことを気にしてない。


僕が「一緒に乗ってくれてありがとう。」って言うと、岳ちゃんはそれからコーヒー・カップとか、他にも色んな子供向けの乗り物に一緒に乗ってくれた。


「今度なに乗ろうっか?」

「え、あ…。」


そう言いながら岳ちゃんが僕の手を軽く握って歩き出したから、僕はもう何に乗りたいかなんてどうでもよくなって心臓がドキドキしだした。手に汗とか掻いちゃったら嫌だと思うけど、自分から手を外すなんてできなくて、そうやってしばらく岳ちゃんに手を取られて歩いてた。


「どうしたの?」


赤くなったまま俯いて歩いてる僕に、岳ちゃんが足を止めて不思議そうに聞いた。その途端、岳ちゃんの手から力が抜けて僕の手が滑り落ちそうになったから、思わず僕の方から岳ちゃんの手を握り返した。


賑やかな遊園地の放送が急に遠のいたみたいで、僕らはそうやって手を握ったまましばらくお互いの目を見詰め合った。


「次は観覧車に乗ろうか?」


岳ちゃんがちょっと照れたみたいに笑って言った。僕が頷くと、岳ちゃんは僕の手を取ったまま、観覧車の方に歩き出した。握られた手が温かくて、僕は抱きとめて貰った時に感じた岳ちゃんの胸の温かさを思い出していた。


「平気?」


観覧車が高く上ると岳ちゃんが心配そうに聞いてくれたけど、僕は笑って「平気だよ」って答えた。スピード出してグルグル回ったり、逆さ吊りになるのは怖いけど、僕は高い所が苦手ってわけじゃない。


「なーんだ、そうなんだ。」


岳ちゃんがちょっとがっかりしたみたいな顔をしたから、僕は首を傾げた。


「怖いって言って俺に抱きついてくれるかと思ったのに。」


心臓がドキって音を立てて、身体もピクって動いた。岳ちゃんは笑顔だったけど、僕を真っ直ぐに見詰める眼差しは真剣で、僕は岳ちゃんの目線に絡められたみたいに固くなった。


「こっちにおいでよ。」


そう言って岳ちゃんが僕に手を伸ばした。もう観覧車はずっと上の方まで上がっていて、立ち上がった途端にふらついた僕を岳ちゃんが抱きとめてくれた。


「今日は俺に付き合ってくれてありがとう。今度は誠人の好きな所に行こうな。」


岳ちゃんには僕の返事は聞こえなかった。返事をしようとした僕の口を岳ちゃんが塞いだから。


高校1年生の夏。


初めてのキスはコーラの味がした。

生まれて初めて書いた短編です(汗)。何を書こうか迷った末、こんな可愛らしい話に…。正直書くのに凄い時間が掛かりました。こういう話は苦手ということが判明。エロい方がノリがいい…^^;

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