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篁家のバレンタインな一日

お気に入り登録100名越えました!感謝の気持ちをこめて、爽香とその家族のお話です。登校日にあわせてバレンタインネタ。

2月14日朝。

普段と変わらない月曜日のはずだったが、大学一年の晴明と孔明には少し憂鬱な日でもある。


「おはよう、母さん」

「おはよー、かあさん」


「お早う、晴明、孔明。さっさとご飯食べて支度しなさいよー」


母親の晴季(はるき)のいつもと変わらない挨拶と共に二人の目の前に箱と紙袋を差し出す。


「はい、これ母さんからのバレンタインのチョコ。まぁ、毎年のことだけどイベントはやらないとねぇ」


基本、篁家の朝食は純和食が多い。

今日の朝食だって豆腐とネギの味噌汁に納豆、自家製のキュウリとカブの漬物、鰆の西京焼に白いご飯、食後に玄米茶がつくラインナップだ。


そこに渡されたチョコレートは直ぐに食べるものじゃないとはいえ、なんだかテーブルの上から浮いているように見えた。


それでも双子は笑顔で受け取るとまずはボリュームたっぷりの朝ごはんを食べ始めた。


「そういえばさ、さーやはまだ帰って来てないん?」


孔明が漬物をごくんと飲み込んでから晴季に質問する。


「爽香ならとっくにランニングから帰って来て、さっさと登校したわよ?今何時だと思ってるの?」


あきれたような晴季の言葉に時計を見ればまだ7時前だ。


「えー、でも随分早くねぇ?というか、さーやからのチョコは・・・?」


後半もごもごと口の中で呟く孔明に晴季が呆れた様に肩をすくめた。


「今日はイベント日だからねー。女子高でも何かあるみたいで慌てて行ったわよ。あんた達の分は帰って来てからーって叫んでたから、ま、楽しみにしてなさい」


晴季の言葉に双子は顔を見合わせると残念そうな表情をしたがそれ以上は何も言わないでごちそうさまとだけ言って席を立った。



双子が大学に出かけてまもなく長男の亮も自室から降りてくる。


「お早う、母さん」


「お早う、お兄ちゃん。皆とっくに出かけたわよ?」


「ああ、そんな時間か。俺は講義が午後のみだからまだ大丈夫だよ」


カタンと席に座ればタイミングよく温かな朝食が並べられる。

そしてもちろん双子にも渡されたのと同じチョコレートも。


「毎年ありがとう。色々貰うけど、やっぱり母さんと爽香のチョコが一番うまい気がするよ」


「当然でしょう。母さんの愛情たっぷりの手作りだからね。あ、でも母さんの一番の愛情と一番出来のいいチョコは当然光輝(こうき)さんのものよーv今回の力作も既に送ってあるものv」


結婚して22年。両親は未だにラブラブバカップルと言っても差し支えないほどの愛情をお互いに注ぎまくってるのを知っている亮としては苦笑いするしかない。

父親は現在海外に単身赴任中なので前もって空輸したらしい。

そして多分というか確実に父親から母親宛に真っ赤なバラの花束が送られてくることだろう。


「ところで、この紙袋は例のためのもの?」


「もちろんよー。晴明と孔明(あのこたち)にも渡してあるわよ」


にこにこと言う母親の姿に亮はただひたすらに逞しさを感じて仕方なかった。





そして夜。


「「ただいまぁ~~~~」」


一足先に帰ってきていた爽香と晴季がリビングでくつろいでいるとユニゾンの声が聞こえてきた。


「おかえり~せーちゃん、こーちゃん!今年の戦果はどうだった?」


パタパタと玄関まで出迎えに来た爽香が二人の足元に置かれた紙袋を覗き込んで歓声を上げる。


「わーお、今年も大量だね~。さて、誰が一番かなっ?」


手伝うねっ!と声をかけて準備よく持ってきた二つの紙袋に双子のチョコを間違えないように分けて入れるとリビングに戻る。


「おかーさーん!今年も大量だった見たいよー」


「さすがだねぇ。それじゃ早速数えないとだね」


双子も各自で貰ったチョコレートをリビングまで運んでくるとソファーにどっかりと座り込んだ。


「今日はもうチョコ見たくねぇ~。さーやたちが数えてくれ~」


「…同じく。僕もさすがに、限界…。数えるのは任せる…」


「軟弱者ねぇ。まぁ、いいわ。爽香数えましょう」


「はーい♪それじゃまずこーちゃんのからね~」


孔明が貰ってきたチョコレートは朝はるきから渡された紙袋に入っている他、入りきらなかった分が私物のリュックの中にもぎっしりと詰まっていた。


その分も爽香が容赦なく空けていーち、にーい、さーん…と楽しそうに数えていく。


「68~、69~、70!こーちゃんジャスト70個~。去年より5個増えたね~。それじゃ次はせーちゃんの分~」


爽香が数えたチョコに添付されていたメッセージカードは全て抜き取ってはるきがきっちり揃えて孔明に渡す。


「返事が返せる子にはちゃんと返事書くんだよ?」


篁家の家訓として礼には礼を持って返すというのがあるので、双子も毎年きっちり返事を書いてホワイトデーに返している。


「…85、86、87!おお、せーちゃん過去新記録~!87個だ!やったね!」


「……好意は嬉しいんだけど、これ全部来月お返しするとなると純粋に喜んではいられないんだけどね…」


苦笑いをする晴明にその場の全員が苦笑い返すしかなかった。


「ただいま~」


「あ、亮ちゃんだ。おかえり~って、何それっ?!」


再び爽香が出迎えに玄関まで行ったが直ぐに驚きの声がリビングにまで届く。

疲れてソファーに座っていた双子やはるきですら何事かと思ってドアから玄関先を覗くと。

両手に複数の紙袋(inチョコレート)を持った亮がげっそりした表情で立っていた。




「・・・今日はゼミの飲み会もあってね、教授陣含めて兎に角あった人あった人から片っ端から押し付けられたよ…」


長男の持ち込んだチョコレートの数に双子が圧倒される中、サクサクと女性陣が数を数えてカードとの仕分けを終わらせる。



「はーい、発表しまーす!といっても既にわかってると思うけど、今年のバレンタインのチョコ、一番貰ったのは亮ちゃんでーす!総数なんと138個!亮ちゃんにはこれもプレゼントでーす」


そう言って爽香が取り出したのは上質なカシミアのマフラー。

色は亮の好きなアイボリーだ。


双子のいいなー!コールを背に妹からマフラーを受け取ると早速首に巻いてみせる。


「でもねぇ」


爽香の発表の後、人の悪い笑みを浮かべて晴季が言葉を続ける。


「お兄ちゃんの数より多い140個貰ったのが居るよ?」


「え?まさか母さんとか?」


「残念。私はお友達とかサークルの仲間とかから貰ったけどさすがにそこまで行かないわよー」


晴明の驚きにはるきが答えた所によるとチョコだけではないが30個ほど貰ったそうだ。


「ってことは…」


「はーいv学校の皆で交換したので学年全体140人からプレゼント貰いましたーv」


「「「それって、バレンタインのチョコレートに入るのか~?!」」」



男三人の絶叫がリビングに響いた。





余談。


「はい、おにーちゃんたちにもチョコレート♪爽香の手作りだから当然食べてくれるよねっ?」


溺愛しまくっている愛しい妹からのチョコレートを貰った兄たちは何より先に食べたことは言うまでもない。


「それと、ホワイトデーのお返しはね~」


ちゃっかりと欲しい新しいPCや春物の洋服などをおねだりするところは抜け目のない妹であった。


篁家では貰ったチョコレートは自分で消費するのが原則です。

アレだけの数を貰って食べているのにも関わらず体重の増減がほとんどないこの一家はある意味羨ましい体質ですね。



ちなみに本文中には書ききれませんでしたが、パパさんからママさんへ送られたバラの花束は一抱えもあるもので今年も家中に飾られました。バカップル万歳w


こんなので御礼になるかはわかりませんが楽しんでいただけたら幸いです。

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