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接触 ―2

 ソフィアは、貧民街から、自室へと走っていた。


 城を守る衛兵の位置は把握していた。闇に紛れ、影を利用しながら大胆に城に侵入していく。


 ―見られた。奴は誰だ?


 ソフィアは、先ほど、会った男の顔を思い出していた。髭面の若い男だ。仮面をしていたし、問題はない。


 そんなことよりもだ、ソフィアは仮面を脱ぎ、息を吐く。


 唯一の友人が無事なことは確認できた。であれば考えることが一つだけだ。王を、どう暗殺するか、それを考えなくては。まず、考えられるのは毒殺だ。


 しかし、なにも浮かばない。疲れで思考が滞っているのだ。侍女に内緒で城を出て、貧民街に出るのは容易ではなかった。


 考えろ、考えるんだ―


 思考を強引に叩き起こすべく、ソフィアは王にされたことを思い出す。


 かつて同盟関係を強固にするという名目で、王家(アイメルト家)とソフィアの実家は政略結婚を行うことになった。当時、現王太子リュディガーは王位継承者ではなく、その兄が王位を継ぐことになっていた。その為、ソフィアたちの結婚はアイメルト家にとってはさほど意味のある物ではなかった。


 しかし、2年前、とある事故で兄が死んだことで、リュディガーは唯一の王位継承者となってしまう。その事故で多くの騎士が死んだことにより、アイメルト家は力を失い、没落の道へと進むことになった。

つまり、ソフィアの生家とアイメルト家の力関係が逆転してしまったのだ。


  おそらく、王はソフィアの生家にアイメルト家を乗っ取られることを恐れ、ソフィアをどうにか別れさせようと画策したのだ。


 ソフィアは、生家に手紙を出し、助けを求めた。だが、全て黙殺された。


 生家の言い分はこうだ―アイメルト家の没落は認知しているし、ソフィアを使い、家を乗っ取ることも考えている。だが〈祝福〉の力が怖いので、現時点では介入は避けたい。状況が変化するまでソフィアの件は黙殺する。時が来るのを待て―


 こうしてソフィアは婚姻を解消することもできず、追い詰められていった。


 耐えきれなくなったある日、痩せこけた身体で城を抜け出し、気が付くと、路地裏で倒れこんでいた。ここで死ぬのだ、と思った。胸に悲しみが溢れたが、涙は枯れていた。掠れた嗚咽が出るだけだった。そこで助けてくれたのが、先ほど会っていた少年だ。


 王を殺せば、彼の生活も少しは変わるだろうか―


 ふと、そんなことを思ったのも一瞬だった。王への憎悪と、毒殺の計画が脳裏を支配し始めた。

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