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神秘 ー1

 ダーヴィットは、エアハルトの話を聞かされてすぐ、隠れ家に向かった。厳重に尾行を確認し、部屋に付いた時には深夜を過ぎていた。


 中に入ると、ヘス神父と、もう一人の協力者と、ソフィアが居た。


「どうした、緊急の召集なんて」


 ダーヴィットは、慌ただしく、エアハルトとの会話を話した。


 ヘス神父は、「ダーヴィットは少し休むんだ。ソフィアは話を聞いてやってくれないか」


 そう言い、協力者と、この話をみんなに伝達するかを話し始めた。


 ソフィアは、ダーヴィットを見つめ、


「《第壱位階》と意思疎通し、〈祝福〉を引き出すなんて、成功するとは思えない」


「どうして……」ダーヴィットがたずねる。その手は震えていた。


「ダーヴィット、あなたは自分の能力がどのようなものか、どの程度理解しているの?」


「発火により、火炎を生み出す。風によって、方向や威力が変わる……その程度だ」


 ソフィアは息を吸い込み、


「ダーヴィット、これからあなたに色々聞くけれど、責めたりしている訳じゃないから、それだけは勘違いしないで」


 ダーヴィットは頷く。


「あなたの能力は、どのように発火を起こしているのか説明できる? 無から発火を起こす何かを作り出しているのか、それとも空中に飛散している発火を生み出す何かを一点に集中しているのか、とか」


 ダーヴィットは首を振る。ソフィアは続け、


「密室ではどのように発動するのかとか、仮に密室の中に別の何かが充満していたらどうなるのか。そう言った危険性について、あなたは分かるの?」


「考えようとすら思わなかった……」


 ダーヴィットの指は細かく痙攣していた。全身から冷たい汗が滲む。


 ふと、よく見る悪夢が脳裏によぎる―



 数年前、北側の拷問場で、ひたすら殴られ続けていた時の記憶。拘束され、身動きができないダーヴィットを従者が暴力を加える。


 すぐそばで子供の声がし、ダーヴィットは炎を出すことができない。されるがままに殴られ続ける。


 ある日、王は子供を連れ、現れる。そして、


『殴られたくなければ、の為に力を使え』と言った。視線の先には、仲間だった傭兵の一人。棒に縛り付けられ、周りには藁。


 ダーヴィットは嫌だ、と言う。すると王は、剣を抜き、子供に見せつける。


『余の命令に従うか、それとも』剣が輝き、子供の怯えた瞳が照らされる。


 ダーヴィットの心拍が跳ね上がる。


『これが最後だ。余の為に力を使え』王の目は、ガラス玉のように表情がない。


 ダーヴィットは絶叫し、傭兵が業火に包まれていく。甲高い断末魔が響き、骨が折れる音が聞こえた。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」


 ダーヴィットは慟哭し、嘔吐し、それに突っ伏す。子供が、怯えた様子でそれを見ている。かつての自分のように。


『これからは余の為だけに力を使え、そして、御業について、余計な詮索はするな。良いな?』


 ダーヴィットは、生暖かい吐瀉物の中で、ぼんやりと頷く。これでは、父と同じだ―



「ダーヴィット」


 ソフィアの声に、ダーヴィットは我に返る。自身の手を見ると、ソフィアが指を握りしめ、震えを抑えている。


「教えてくれてありがとう。でも、能力について詳しくないのは、あなたのせいじゃない。この能力を〈祝福〉と呼び、情報を統制したのは王家よ。そして、能力について研究を怠ったのも」


「俺の怠慢だ」


「違う。方向付けを上手く行えなかったのは、王家よ。あなたには訓練ばかりさせた。そこで感覚的に能力について学んだ……違う?」


「そうだが……」


「罰当たりなことを言うけど、私は〈祝福〉なんて信じていない。神から与えられた力ではないと考えている。これはただの現象に過ぎない。普通の人でも再現可能な」


 ソフィアはそう言って、持っていた冊子を机の上に置く。


「これは氷華伯の部屋にあった物の一部を写したもの」


 めくると、植物の絵と、大量の文章。しかし、黒塗りになっている部分も多くある。最初は研究結果のような内容だが、後半は日記のような形になっている。


「氷華伯は、自身の〈祝福〉は特定の植物がないと発動できない、と感覚で分かっていた。事実、あの現象は、植物に起きる霜害を利用した物と考えられる。でも、その情報を王は握りつぶし、研究を進めることを辞めさせた。聖書の内容とそぐわない、聖なる力がヒトではなく、植物から得られていると分かると〈祝福〉と言えなくなる、という理由からね」


「〈祝福〉は神が、堕天使たる《第壱位階》を倒すために、人間に与えた力じゃないのか……」ダーヴィットは頭を抱えた。


「なら、なぜ戦闘に役立たない〈祝福〉があるの?」


 ダーヴィットは、氷華伯の娘を思い出していた。しかし、自分の核が否定されているような気がし、


「なぜ、そこまで神の存在を疑えるようなことが言えるんだ!」


 ソフィアはうつむき、「私は神を見たことがある」


 ダーヴィットは息を飲み、王太子妃の顔を見た。

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