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捜査

 氷華伯暗殺から4時間後―


 早朝にも関わらず会合が開かれることになった。王立騎士団の主要メンバーと王宮の関係者が招集された。


 静謐な空気の中、鳥のさえずりが聞こえる。しかし、王宮内は騒然としており、時折騎士たちが廊下を駆けていく。


 ソフィアが廊下を進んでいると、男が声をかけてきた。


「これは、これは、王太子妃おうたいしひ殿」浅黒い肌の中年で、どこか軽薄な雰囲気を漂わせている。


「ジーモン副団長。おはようございます」ソフィアは礼をする。


 ジーモンは飛び出た腹を叩き、獰猛に微笑む。


 この男は官僚(中央集権制度の元、王のもとで政治を補助する貴族たちの総称)であり、騎士団のナンバー2だ。その為、騎士団に強い影響力を持っている。同時にダーヴィットが所属している王家打倒を目的とする組織のスポンサーの一人でもある。出自の低さから冷遇を受けてきたらしく、水面下では王家の打倒を狙っているのだ。


「やってくれたな」ドスの効いた低い声で、ソフィアに囁きかける。


 ソフィアは、はっと息を飲み、ジーモンを見る。ヘス神父を始めとする過激派の動きをあまりよく思っていない、という事は聞いていたが真意は掴めない。


 ジーモンと完全な協力体制を取れれば、騎士団を掌握出来る。だからこそ、逆らうことができない。


「余計な事は話すなよ」耳元でジーモンが囁く。


 分かりました、とソフィアは怯えながら言う。


「ま、また話しましょうや」ジーモンは、手をひらひらと動かし、会合が行われる部屋へと向かって行った。


 部屋に王立騎士団の主要メンバーが集まった。


 王は居なかった。代理なのだろうリュディガー王太子が肩を丸めて、周囲を見渡している。


 長身痩躯、40代くらいの男が声をあげる。氷華伯の息子で二つ名は〈冷気〉。騎士団長を任されている。


「父を殺した者を最速で見つけたい。考えがある者は居るか?」騎士団長は苦々しい口調で言う。


「捜査には最大限協力するが、まだ情報が少ない。俺が思うに、捜査するべき対象は二つだ」


ジーモンが二本指を立てる。


「一つ目は貧民街を中心とした市民運動組織、二つ目はゼーフェリンク家を始めとする隣国組織だ」


 ソフィアの動悸が一気に上がる。喉元に剣先を突き付けられたような気分。ジーモンは仲間なのか、それともそうでないのか。


 ジーモンは騎士団長に手を向け、「外国の件は、そちらに任せたい。外交とも関わってくる重要事案だ」


「初めからそのつもりだ。証拠になるか分からんが、敵は炎や熱を操る能力者であると聞いている」


「事件現場で、硫黄のような匂いがしたのは聞いているか?」


 騎士団長は首を振り、


「後で報告を上げさせる……かつてのゲルブを思い出すな」


「我々の知らない異能者が居るとすれば、外国だろう」


 隣国―ゼーフェリンク領への捜査に人が多く割かれることとなった。その後、細かい話し合いが行われたが、ソフィアは言葉を発することはなかった。

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