第6話 ぶっ壊しちゃったんですが?
「……なぁナビちゃん」
(はい、主様。どうかされました?)
「……もしかしてだけど、やっちゃった?」
(はい。大変見事に、盛大に♡)
「やっぱかああああああああっ!!」
──焼け野原となった森の中。クレーターの近くで俺は頭を抱えていた。
全方位約800メートル、木々は灰、地面は黒く溶け、空には立ち昇る黒煙。
鳥の影も虫の音もなく、広がるのは──静寂と絶望。
(初級魔法により、この森の一部分は壊滅状態です)
「……あのさ、何度も聞くけど、これ“初級”なんだよな?」
(ええ、炎属性の初級魔法です。正確には……“初級だったもの”ですね)
「“だった”ってなんだよ!? なんで過去形なんだよ!?」
(主様の魔力量と、取り込んだ自然魔力。そして──)
(私の魔力操作補助が、少々……本気出しすぎました♡)
「お前かああああああああっ!!?」
(でも、敵は倒せましたし、結果オーライですよね?)
「いやいやいやいや! 森ごと焼いたのオーライじゃねぇだろ!!」
(ちなみに爆心地にいたブラックウルフは、原子レベルで消滅してます)
「消し炭どころじゃねぇ……!?」
(……ところで主様。追加のご報告があります)
「やだやだやだ、もう聞きたくない……」
(主様のいた地点の地下には、高密度魔力構造体──ダンジョンコアがありました)
「え、ダンジョンコア!? ゲームでラスボスが守ってるやつじゃね!?」
(そのとおりです。しかもそこは、国家機密指定の未踏破迷宮でした)
「未踏破って……え、ちょ、じゃあオレ……」
(“誰も近づけなかった危険領域”のど真ん中に、ノー装備で放り込まれてますね)
「どんだけ運悪いんだよ俺ぇぇぇ!!」
(そして、主様の魔法により)
「……まさか」
(ダンジョン、コアごと消し飛びました)
「おぉぉぉぉおおおおおおぉぉぉぉおおおっ!!?!?!」
俺の絶叫が、焦土と化した空に虚しく響く。
(未踏破迷宮の消失は、世界規模の事件として記録されるでしょう)
「俺、一日目だよ!? まだ街にもたどり着いてないんだけど!?」
(現状、主様は“災害級存在”とみなされる可能性が高いです)
「俺!? 魔王じゃなくて、人類の敵になってない!?」
(正確には“環境破壊型・人型魔獣”カテゴリですね♡)
「やめて!? そんなデスネーム要らないから!!」
(加えて──迷宮内のモンスター群も)
「……全滅?」
(はい。爆風と熱で、焼却済みです)
「オーマイゴット……」
(ピンポイント精密魔法でした)
「俺じゃないからね!?補助したナビちゃんだからね!?」
(さらに──アーティファクトが4つ、迷宮内部に安置されていましたが)
「それって……神話級のアイテム的なアレだよね?」
(はい。それぞれ“神代級スキル”を宿していたはずの、超希少品です)
「ま、まさか──」
(──跡形もなく、蒸発しました♡)
「おれもう国に土下座しても許されないやつじゃん……」
(でもご安心ください。実は、主様の“もっとヤバい現状”が判明しました)
「……え?」
(現在、主様は戦力的に【人類の限界域を突破】しております)
「聞きたくなかったあああああ!!」
(なお、戦力評価は“人間圏外”。端的に言えば、バグです♡)