第2話 お前誰だよ!?
──どこからともなく、声が響いた。
いや、正確には“脳内に直接語りかけられた”ような感覚だった。
耳で聞こえたわけではない。だけど、確かに聞こえた。
「お前誰だよ!?てか脳内に話しかけられるのとか初めてなんだけど!?しかも誰もいないのに声だけ聞こえるって怖すぎぃ!?ホラー!?異世界ホラー!?」
ふぅ……取り乱した。いや、取り乱しっぱなしだな。さっきから。
(落ち着いてください。そして、うるさいのでとりあえず黙っていただけますか?)
……わーお、辛辣。
なにこの理不尽な異世界スタートダッシュ。ジャングルに放置されて、見えない誰かに語りかけられて、それに驚いたら速攻で「うるさい」って言われるとは。やだもう怖い……。
(意外と素直ですね。よかったです。では、先ほど“ステータスチェック!(笑)”などと叫ばれていたので、ステータスをオープンさせていただきます)
うん、いま完全に「(笑)」ついてたよね?バカにされてない?なんか含み笑い聞こえたよね!?
すると、目の前にパッと薄い光が浮かび、半透明のガラスのようなパネルが出現した。
そこには──
⸻
ーーー ステータスパネル ーーー
❪ 名 前 ❫ 斎藤 和也
❪ 年 齢 ❫ 26歳
❪ 種 族 ❫ 異世界人《人間》
❪ レベル ❫ 1
❪ 体 力 ❫ 104
❪ 魔力量 ❫ 37
❪ 攻撃力 ❫ 63
❪ 防御力 ❫ 42
❪ 魔攻力 ❫ 21
❪ 魔防力 ❫ 29
❪ 俊敏力 ❫ 78
❪ スキル ❫ なし
❪ 固有スキル ❫ ナビゲーション
⸻
「……なるほどね?」
パッと見、体力とか攻撃力とか、まあまあありそうだけど──
「なんか……普通じゃね? 異世界人って肩書きついてるくせに、何の恩恵もなし!? レアスキル爆誕とか、伝説の勇者っぽいのは!?」
固有スキル“ナビゲーション”って、絶対あれだろ。チュートリアル案内係だろ?
「うーん……恩恵なさそうだし、固有スキル“ナビゲーション”とか、正直クソじゃ──」
(……ほう? 私がクソと?)
「えっ」
(なるほど。では以後、主様に一切の案内はいたしません。この世界の知識、魔法の使い方、危険地域の警告等すべて──永久スリープモードに入らせていただきます)
「ま、待って!ウソウソ!冗談っす!ナビゲーション超重要っす!!生きるために必要っすからぁぁぁ!!」
(……はぁ。仕方ありません。仮にも私は主様のスキルですので。嫌でも逆らえません。チッ)
今、ため息と舌打ち聞こえたんだけど!?怖っ!
「と、とにかくナビちゃん! 色々と教えてください!」
(……仕方ないですね。ではまず自己紹介から。私は主様、斎藤和也様の固有スキル《ナビゲーション》にございます。呼び方はナビちゃんで構いません)
「ナビちゃんって……お前、女かよ(笑)」
(一応、性別設定上は“女性”です。主様の脳内情報を元に、外見を構築することも可能です)
「……え? それってつまり……俺の“理想の女性像”ってこと?」
(その通りです。ご希望であれば、今ここに“視覚化”してお見せいたしますが?)
やっべ、ちょっとテンション上がってきたぞ!?
つまり俺好みの美少女が出てくる可能性が……!
「ぜひお願いします!!俺の理想、見せてくれぇぇぇ!!」
(……了解しました)
ナビの声が静かに響き、目の前が淡い光に包まれる。
やがて、輪郭がゆっくりと形を成していき──
そしてそこに現れたのは──
全 裸 の お か ん。
「…………は?」
(主様の“理想の女性像”を脳内から抽出した結果、こうなりました)
「お、俺、そんな性癖ねぇからあああああああああ!!」