光
満月の夜、男は一人部屋に籠っていた。
電気も点けず、黒いカーテンで閉め切っており、隙間も黒いテープで塞ぐという徹底ぶりである。
男は満月の光に怯えていた。何故ここまで怯えているのかは、男自身も分からない。
とにかく、あの光に当たってはならないと、本能で察していた。
真っ暗な部屋の中心で、膝を抱えて座り、顔を埋めている。一秒も早く、夜が明けてほしいと願うばかりである。
どうして突然、自分がこんな目に遭わねばならないのか。
疑問が浮かび怒りが湧いてきたが、現状、自力ではどうする事もできないので、ただただ時間が過ぎるのを待ち続けて耐えていた。
やがて小鳥たちの鳴き声が聞こえてきて、男は目を覚ました。いつの間にか眠っていたようだ。
しかし、夜は明けた。
男は換気した。ようやくこの得体の知れない恐怖から、解放される!
男は勢いのままに、震える手に力を込めてカーテンを剥がした。
すると陽の光が男を貫き、男は灰となって散った。