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第7話



 「……早織……なのか?」


 目の前の少女は、確かに早織だった。

 病院のベッドで眠っていたはずの、彼女が。


 だが、何かが違う。


 透き通るような肌。

 淡い光を纏うような輪郭。

 まるで、ここに存在しているのに、完全には「現実」ではないような——そんな不安定な気配。


 「やっと……来てくれたんだね。」


 早織は微笑んだ。


 「どうして、ここに……? 本当に、お前なのか?」


 タクトは混乱しながらも、必死で問いかけた。


 「私にも、よくわからないの。でも……私の意識は、この世界にいる。」


 「お前の体は、病院にあるんだぞ……!」


 「うん……知ってる。」


 早織は、悲しそうに目を伏せる。


 「……私は、もうすぐ消えるの。」


 その言葉に、タクトの心臓が締めつけられる。


 「何を言ってるんだ……!? 俺は、お前を助けに——」


 「違うの、タクト。」


 早織はそっと首を振った。


 「助けるんじゃなくて、最後の約束を果たすために来たんでしょう?」


 タクトは息を呑んだ。


 最後の約束——?


 (そんなの、俺は……。)


 だが、その瞬間。


 脳裏に、幼い頃の記憶がよみがえった。



 「約束の地に行こう。いつか、ふたりで。」



 それは、ずっと忘れていたはずの言葉。


 (……俺たちは、約束を交わしていた……?)


 「……もう、時間がない。」


 早織の体が、微かに透け始める。


 「……っ、待て!」


 タクトは思わず早織の手を掴もうとした——


 だが、その瞬間——


 世界が、崩れ始めた。


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