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第11話



 ——暗闇が、意識を飲み込んでいく。


 耳鳴りのような低いノイズ音が響き、身体の輪郭が溶けていく感覚。

 だが、恐怖はなかった。

 タクトは、ただひたすらに前を目指す。


 (……俺は、必ず辿り着く。)


 そう誓った瞬間——


 ——視界が開けた。


 目の前には、再び**「約束の地」**が広がっていた。


 風に揺れる白い草原。

 空は青く、雲がゆっくりと流れている。

 そして、その中心に——


 「……早織!」


 タクトは駆け出した。


 そこには、前と同じように立っている龍野早織の姿があった。


 「タクト……本当に、また来たんだね。」


 微笑む彼女の表情はどこか切なげだった。


 「当たり前だろ。……お前を迎えに来た。」


 「……ダメだよ、タクト。」


 「……え?」


 早織は首を振る。


 「私は、もうすぐ“消滅”する。……私自身が、この世界の一部だから。」


 「お前が……この世界の一部?」


 タクトは思わず問い返す。


 早織は静かに語り始めた。


 「私の意識は、事故の時にこのデジタル世界に流れ込んだの。」


 「流れ込んだ……?」


 「本当は、私はあの時……死んでいたはずだった。」


 タクトの心臓が強く締め付けられる。


 「でも、あるシステムが私を“救った”の。」


 「システム……?」


 「Project SAORI。」


 その言葉を聞いた瞬間、タクトは息を呑んだ。


 (ナオが言っていた、あの計画……!?)


 「でも、この世界は“仮初の命”をつなぎ止めるだけの場所。いずれ崩壊する運命にある。」


 「だったら……だったら、俺がお前を連れ戻す!!」


 タクトは必死に叫んだ。


 「お前が現実に戻れれば、また——!」


 「タクト。」


 早織はそっとタクトの手を取る。


 彼女の指は、ひどく冷たかった。


 「私の肉体は、もう限界なんだよ。」


 「……!」


 「……私を迎えに来てくれて、本当にありがとう。でも、これはもう変えられない運命なの。」


 タクトは、拳を握りしめた。


 そんなこと、認められるはずがない。


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