第5話 サポート開始
本日の更新です。
「ノゾミ様には転生された方のサポートをしていただきます」
いきなり次の仕事がやってきた。
「えっと、話しが出来るとかだったかな?」
仕事内容は聞いたはずだけど、確認は必要だ。
なにより、あのガイド天使の説明だったのだから。
「はい、転生者との会話はあちらの部屋にある鏡で行います」
シロの案内で大きな鏡が置いてある部屋にやってきた。
(この部屋ってメイク室とかじゃなかったんだ……)
大きな鏡だし、ここでメイクとかするのだと思ってたら仕事部屋だったなんて。
「この鑑から転生者に呼びかける事が可能です」
転生者ってあの東崇人か……。
「どうやって呼びかければ良いの?」
呼びかけれると言ってもやり方が分からない。
「名前を呼べば転生者の姿が映し出されますので、後は話しかけるだけです」
なるほど、それなら簡単だ。
「あっ、こっちの姿は相手には見えるの?」
重要な事だ。
もし見えるなら、鏡の前では常に女神らしい振る舞いをしなければならないからだ。
「こちらから相手は見えますが、相手から姿が見える事はありません。あくまで声だけです」
それを聞いて安心した。
いや、女神らしく振る舞いたくないわけではないですよ。
自分に言い訳してみた。
「相手に姿が見えていなくても女神らしくお願い致します」
シロは頭を下げているが、顔が笑ってない気がする。
「……はい」
「では、さっそくやってみましょう、ノゾミ様、お願い致します」
何事も最初の仕事はキッチリやらないといけないか。
「東崇人」
私は転生者の名前を呼んだ。
すると大きな鏡に部屋の隅っこで縮こまってる姿が映し出された。
「……」
話しに聞いた通り、本当に引きこもっていたのか……。
私はガクッとした。
でも、気を取り直して……。
「えっと、東さん、東崇人さん」
私は鏡に向かって声をかけた。
「えっ? 誰です? はぁ〜幻聴まで聞こえて来たか……」
(私の声が幻聴ですって!! はっ、いけないいけない、落ち着いて……)
深呼吸をして再び声をかけた。
「私は女神ノゾミです。貴方を導く為に声をかけたのです」
女神らしいか分からないけど、こんな感じで良いかな?
横目でシロの方を見てみるが特に問題ない感じだ。
「女神様ですか!! あの、ごめんなさい!! やっぱり僕には無理です。言ってなかったですけど、僕……、すっごく臆病なんです!! 魔王を倒すなんて無理だったんです!!」
完全に心が折れている。
「あ〜、これはダメ……」
シロが睨んできている。
「あっ、いや、ダメなんて事はありません。臆病でも良いではないですか、世界は広いのですよ」
何言ってるんだ私は?
「……女神様は、こんな僕でも魔王を倒せると信じているのですか?」
(思ってるわけないでしょ、あんたみたいな臆病者に倒せる魔王なんていないわよ!! やる気がないなら私と変われ!!)
そんな心の声は表に出せないので……。
「はい、貴方ならきっと魔王を討ち滅ぼせるでしょう」
心にもない事を言った。
「……ありがとうございます。僕やります。きっと女神様の期待に答えて見せます!!」
東は立ち上がり部屋を飛び出していった。
「ふ〜、これで終わりかな?」
「お疲れ様でしたノゾミ様」
鏡も元の状態に戻った。
「今回は女神らしく振る舞えたと思うんだけど……」
自分でも良くやった方だと思う。
「そうですね、もっと具体的にアドバイスを差し上げると良いと思います。女神なのですから言葉も選んで下さい。それと、いくら相手に姿が見えないと言ってもその態度はどうかと思います。よって、今回は30点です」
30点、前回は10点だったから20点も上がった。
「その態度って?」
「最初に声をかけた時、引きこもりと確認してはガッカリされたり、落ち着く為とは言え、深呼吸も良くはありません。更に最後の言葉の時に笑顔は消え、明らかに思っている事と逆の事を言っていると思えた事ですね」
(それくらい良いじゃない……)
「よくありません!!」
「うぁ、心の声読めるの?」
「いえ、顔に書いてあるのですよ」
……そんなに分かりやすい表情をしていたのだろうか?
「とにかく次はもっと女神らしくお願い致します」
「……はい」
(女神らしくって何すればを良いのよ!! はぁ〜、女神なんて前のOLの仕事と同じなんじゃないの?)
「はぁ〜」
もう溜息しか出てこない。
「とりあえず休みます」
私は部屋を出て自室で休む事にした。
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