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第4話 初めての転送

初仕事開始の新米女神ノゾミです。

「これから初の公務ですが、くれぐれも女神様らしくお願い致します。私はこちらで控えておりますので、あっ、これはこれから来る方のプロフィールです」


 1枚の紙を貰った。


「なになに、東崇人15歳、死因、自動車事故」


 書いてあるのはそれだけだった。


「死因、自動車事故ってひかれたのかな?」


 可哀想に。

 しかも15歳って、まだ学生じゃん。

 若くしての死……、力になってあげなければ。


「いつまでここにいるのですか? 早く最初のいらした場所に行ってください」


 シロが急かしてきた。


「あっ、はい、行ってきます」


 シロは私を見送った。

 正直一緒に来て欲しかった。

 横にいるだけでも良いのに……。


「女神らしく……、女神らしく……」


 とりあえず最初に私がいた場所までやってきた。

 そこには玉座のような物が置いてあった。


「……こんなのあったかな?」


 とりあえず深く考えないようしようと思った。

 家だって急に現れたんだし。

 

「女神らしくするなら、ここに座ってた方が良いよね」


 女神と言えば神々しいイメージだから、この玉座も利用してしまえば良い。

 私は玉座に座った。

 玉座は見かけよりふかふかしていた。


「なにこれふかふかの椅子なんですけど!!」


「コホン」


 奥から咳払いが聞こえてきた。

 シロが隠れて聴いているようだ。

 

(出てきてくれても良いのに……まぁ、頼もしいから良いか)


 その時、光と共に1人の青年が現れた。

 どうやら、この青年が今回のターゲットのようだ。


「えっ、ここは……」


 青年は私が初めて来た時と同じように、ここが何処だか分からないようだ。

 まぁ当たり前の事だ。

 これでここが何処か分かったらその人は特殊能力持ちだろう。


(さぁ、やるわよノゾミ!!)


「東崇人、貴方は死にました」


(って、これじゃあ最初にあった女神みたいじゃない、他に言い方あったんじゃないの私?)


 頭の中はグチャグチャになっていた。


「……えっと……」


「貴方は自動車に引かれ死んだのです」


(死んだ、死んだしか言えないのか私は!! しかも死因まで言っちゃったよ!!)


 自分で自分にツッコミを入れていた。


「……そうなんですか……、貴方は、姿から考えるに美しい女神様ですか?」


 冷静な言葉が返ってきた。

 

(冷静な判断で助かるけど、もっと取り乱しても良いでしょ。自分が死んだって言われたんだよ。もっとこうなにかあるでしょ)


 まぁ泣き叫ばれるよりは良いのかな?

 とりあえずなにか言わないと。


「私は女神ノゾミ、貴方を異世界に導く者です」


(って、いきなり異世界とか言うか私!! てか女神様に見えてるみたいで安心した〜)


 もう自分でも何言ってるか訳が分からない。


「異世界……、それも良いですね……」


 何か引っかかる言い方だ。


「何があったのですか?」


 私は事情を聞いてみようと思った。


「女神様なら知っていると思いますが、僕はやる事なす事裏目に出て、何も出来ない役立たずと言われてきたのです、それで自殺も考えていたんです」


 自殺まで考える程なのか。

 その後もいろいろ話を聞かせてくれた。


「ヒック、ヒック、それは辛かったですね……」


 何故か目から涙が止まらなくなった。


「僕の為に泣いてくれるのですか?」


(役立たずと言われるのは辛い事だ、私も仕事で言われた事があって辛かった覚えがある)


「異世界でまた頑張れば良いのよ、さっ、そこのガチャガチャを引いて見て」


「コホン!!」


 言葉遣いが素になっていたみたいだ。

 

(監視してるんなら、サポートくらいしてくれたっていいじゃない)


「女神様、今のは?」


「あっ、いや、気にしないで下さい、そこのガチャガチャを引くのですよ」


 なんとか誤魔化せたか?


「はい、女神様」

 

 よし、彼は気にしてないようだ。


 ガチャン、コロン


 私の時と同じでカプセルが出てきた。

 違うのはカプセルの色だ。

 私は黄金だったけど、彼のは赤だ。


「さっ、カプセルを開けるのです」


 東崇人はカプセルを開いた。 


『職業・剣士 スキル・絶対切断』


 私の時と同じで文字が目の前に現れた。

 しかもそれだけではなく、ガチャが出た途端に私の頭の中でスキルの概要が浮かんできた。

 それと転送方法も同時に頭の中に入ってきた。


「そのスキル・絶対切断は剣で斬る物はなんでも切断する能力です」


(てか羨ましいんだけど、私も女神じゃなくて、そういうのが欲しかった)


「凄いスキルですね」


「そうだよ、だから次の世界では前向きに生きて魔王を討伐してね」


「魔王がいる世界なのですね、分かりました、美しい女神様の為に頑張ります」


「コホン!!」


 また素の言葉遣いになっていた。


「あっ、えっと、その〜、失礼しました、では……」


 私は目を閉じて手を前に出した。

 さっき頭に入ってきた方法だと。


「東崇人さん、そこに立って動かないでください、貴方の冒険に幸あらん事を……」


 東崇人の周りが光りだした。


「転送!!」


 青年は光に包まれ消えてしまった。

 これで青年は異世界に行けたのだろうか?


「お疲れ様でしたノゾミ様」


「わぁ!!」


 いきなりシロが現れた。


「今回のノゾミ様ですが、10点です」


 厳しい採点でした。


「あれほど女神らしくして下さいと申しましたのに、途中から言葉遣いがおかしかったです、あれでは女神らしく振る舞えてはおりません」


 返す言葉もございません。


「ですが青年の事を聞き、その事に涙した事は評価しても良いと思っております、なので10点です」


 シロが穏やかな表情をしていた。


「えっと、ありがと……って、それがなかったら0点なの?」


「そこは大事にし、次からはもっと女神らしくして下さい」


「うぅぅ……」


 女神らしく……、難しい。

 まぁ、なんとか初の女神の仕事は終わった。

 後はあの青年が異世界を救えれば、私の女神ランクも上がるはず。

 上がったら何があるのかは分からないけど。


 

 数日後



「ノゾミ様、あの東崇人と言う青年なのですが……」


 東崇人?

 ああ、異世界に送った青年の事か。


「どうかしたの? もしかしてもう異世界を救ったとか?」


「いえ、どうやら始まりの町で初日に大人に絡まれたらしく、引きこもりになってしまったようです……」


 引きこもり?

 旅にすら出てないの?


「……なんじゃそりゃ〜!!」


 私の叫びが空間をこだました。

お読み頂き、ありがとうございます。


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