第18話 再びセッティング
本日更新分です
「素晴らしいスキルですね」
文句なしのスキルだ。
むしろ、私が欲しかったくらいだ。
「そうかしら? さっきも言ったけど、この世界の冒険者が弱すぎてあまり使えないわよ」
冒険者が弱いなら強いやつと組めば良いだけだ。
「はっきり言いますね。私達の転生者と協力して魔王を倒してください。倒したあきつきには、何でも願いが叶えられます」
この特典で東もアイさんもやる気を出したのだ。
これならいけるはず。
「ん〜、なんでもって言っても、私なんてもうおばさんよ。おばさんが魔王討伐なんて無理じゃない? 転生直後とかならまだ分かるけどね」
(討伐特典になびかないなんて!!)
「そこをなんとかお願いします。私達の転生者はまだ若輩者の男女で、貴方のような熟練のお人が必要なんです」
こうなったらOL時代の接客術だ。
とにかく下手に出ろ作戦決行。
「私が熟練者?」
「はい。貴方のような方はいませんよ。貴方がいれば2人の転生者も心から安心するでしょう。熟練者なのですから」
(どうだ? )
「ん〜私が熟練者ねぇ〜、そうかしらね〜」
まんざらではないようだ。
「そうですよ。貴方をおいて他にはいません」
もう一息。
「なら、会ってみようからし」
(よし!!)
「ありがとうございます。では、他の方に連絡致しますので、決まり次第また連絡致します」
「ちょっと待ちなさい。こっちにも都合があるんだからね。そうねぇ〜、明後日のお昼に、この町の食事処エキって店があるから、そこにして頂戴」
(そっちから指定してくるのかよ、まぁそれくらい良いか)
「分かりました、明後日のお昼、食事処エキですね。因みにそこの町の名前も教えてくださいますでしょうか?」
町が分からないと行く事が出来ないからだ。
「えっと、メサナよ」
「メサナですね。分かりました、伝えておきます、では当日は宜しくお願いします」
そう言って、通信を終えた。
「へ〜、やるじゃ〜ん、でもぉ〜、あんなおばさんが役にたつのぉ〜」
あんなおばさんでも東やアイさんより冒険者してるだけマシだ。
「大丈夫ですよ、任せてください」
「そうよ、全部ノゾミに任せとけば良いのよ。私はお菓子食べとくから」
そう言って、またポテトチップスを食べ始めたミリン。
(食うしか出来ないのか!!)
ツッコミたいけど我慢。
ツッコミでも面倒しかないからだ。
「さて、さっそく東とアイさんにも連絡しないと、メサナって町が分かると良いけど……」
町が分からなくて合流出来ないとかはやめてほしい。
「大丈夫よメサナなら、だって、アイ達がいる初心者の町だもの」
お菓子を食べながら、サラッと重要な事を言った。
「えっ、初心者の町? 」
つまりあの人も初心者の町の周りで戦ってるって事?
さっきまでイケイケモードだったのに、急に不安モードになった。
それでも東とアイさんには連絡しないとだけど。
現状、パーティーを組むしか道はないからだ。
「東崇人!!」
私は東を呼び出した。
映し出されたのは、いつもの食堂だ。
(ん? 食堂? まさか……)
「東さん、東崇人さん」
私は呼びかけた。
「あっ、女神様、今日はどうされました」
(どうしたもないよ。貴方がちゃんと魔王討伐をしないから、こっちは大変なんだよ。って気持ちはあるけど封印してっと)
「とりあえず引きこもりは脱出したのですね」
引きこもりになってないだけマシになったと思わないと。
「はい、引きこもるとアイさんが怒鳴り込んで来るんです……。仕事サボるなって……。もう嫌なんです、助けてください女神様!!」
いきなりのヘルプ要請だ。
「なにが怒鳴り込んでくるよ!! こっちは変態の貴方に仕事をあげてんのよ!! 感謝なさい!!」
いきなりアイさんが乱入してきた。
「あっ、アイさんも丁度良かった。お2人に話があります」
いよいよだ。
しっかり伝えないと。
「私、女神ノゾミと女神ミリンが転生されたお2人より前に転生されている者がもう1人いましたのです。ですので、もう一度その者に会い、パーティーを組み、魔王討伐をお願いします」
「またですか〜、でもこの変態がいると身の危険なんですけど」
「大丈夫だって、あんた見たいなチンチクリン相手になんてしないわよ、とっとと魔王倒して、私を昇進させなさい」
ミリンが横からとんでもない事を言ってきた。
「ちょっ、この声ミリンでしょ!! チンチクリンってどういう事よ!! 」
ヤバい!!
それから暫く2人をなだめる為に奮闘した。
言い争いが終わったのは30分も後の事だった。
「とにかくぅ〜、会って見てぇ〜、魔王倒したらぁ〜、なんでも願いが叶うんだからぁ〜」
ナナまで口を挟んできた。
もう勘弁してください。
「なに? このギャル口調の人は? まさかこの人も女神様?」
「女神ナナでぇす、宜しくぅ〜」
「はぁ〜、なんか疲れました。えっと分かりました、いつ何処に行けば良いんですか?」
なんか諦めの感じでオッケーを出してくれた。
「あっ、はい。明後日の昼にメサナの食事処エキって店で会う事になってます。分かりますか?」
場所が分からないと、未知子さんに聞かないと行けない。
「えっ? 食事処エキってここですよ。私達が働いてるこの店です」
やっぱりそうだったか。
初心者の町で、食事処と聞いて、多分そうじゃないかと思った。
「えっと、そういう事なら話しは早いですね。とにかく明後日お願いします」
そう言って、通信を切った。
「おつかれぇ〜!! やるねぇ〜ノゾミ〜!! 抱きしめてあげるぅ〜」
いきなり抱きしめられた。
正直離してほしい。
「さっさと終わらせて、私を昇進させなさいよ!! 私はテレビで忙しくなるんだから」
そう言ってミリンは部屋を出ていってしまった。
「さてぇ〜、今日のお仕事は終わりよねぇ〜、さっそく私達の部屋に案内してぇ〜」
(私達の部屋?)
聞き間違いだろうか?
今、私達の部屋って聞こえたような?
「あの、聞き間違いですよね? 今、私達の部屋って聞こえたような……」
「私達が住む部屋よ」
聞き間違いじゃなかったようだ……。
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