第10話 セッティング
本日更新分です。
「あなたが転送させた人と会う?」
「はい、アイさんが女神ミリンに転送されたように、この私、女神ノゾミも転送をしたのです、その世界アルスアリスに……」
「私と同じ転生者がいるなんて……、その人男性ですか? イケメンですか? 身長は? 性格はどんなですか?」
(その質問って、婚活か!!)
思わず心の中でツッコミを入れてしまった。
「えっと、それは会って確認してみては如何でしょうか? まぁ今言えるのは男性の方ですよ」
正直、イケメンではないと思うし、引きこもりだし……。
身長だけは高かったが、条件に合うのはそれだけだろう。
それでも、会ってパーティーを組んでもらわないといけない。
アルスアリスを救うにはもうそれしかないのだ。
「それで、どうでしょうか? 会っていただけますか?」
「はい!! 会います!! 女神様の紹介なら大本命ですよ!!」
即答だった。
(ん? 大本命?)
気になる言い方だけど、まぁ置いておこう。
「ありがとうございます、では私が転送した者と連絡しますので、決まりましたら女神ミリンより連絡させていただきます」
「はい。それにしてもノゾミ様って女神様らしいですよね。私を転送した女神様は思っていた印象と違ったみたいですし……」
あんなに逆ギレしたら当然か。
「なんですって〜、あんたがウエイトレスなんてやって、魔王を倒さないのがイケないんじゃない!! それなのに印象と違ったですって、ふざけんじゃないわよ!! 女神舐めんな!!」
「なっ、なっ、なんですって〜!! 女神様がそんな事言う? あんたなんか女神なんかじゃないわよ!! ノゾミ様見たいに清楚な感じで対応出来ないんですかぁ〜? あっ、出来ないですかぁ〜、そうですよねぁ〜、あ〜可哀想〜」
(わわわ、ヤバいヤバい)
このままだと言い争いがエスカレートして、転生者同士で会うのも無くなる可能性がある。
「えっと、アイさん。また後で連絡しますので、お仕事頑張ってください、では」
「ちょっと、まだ言いたい事はいっぱいあるんだけど!!」
「シロ、通信切って!!」
私は慌ててシロに指示を出した。
「もう切ってあります。先程ノゾミ様が『頑張ってください、では』と言った直後に切断致しました」
流石は良く出来たお世話妖精だ。
「あのアイって小娘、なんて生意気なのかしら?」
「あの〜、流石にあれは女神としてマズイのでは?」
「あれは、人としての教育みたいな物よ!! 女神に対しての態度がなってないのがいけないんでしょ」
この時私は、女神ミリンはダメな女神だと確信した。
女神としてだけでなく、人としてもダメだと……。
「はぁ、とりあえず次に行きますよ先輩、では、東崇人」
今度は私の転送者、東が大鏡に映し出された。
今回は部屋ではなく外だ。
(良かった、まだ引きこもってたらどうしようと思ってたから)
「たぁ〜」
どうやら戦闘中のようだ。
(どれどれ〜相手は……?)
東と戦っているのは、イノシシのような姿をしたモンスターだった。
「先輩、あのモンスター分かります?」
「ん? あああれね、イノシシよ」
まんまだった。
「イノシシですか……。そのイノシシって強いモンスターなんですか?」
モンスターの強さとかは全く分からないので、知っているか分からないけど、先輩女神であるミリンに聞いてみた。
「イノシシはザコよ!! あんたの世界で言うならスライムと同じくらいのザコ」
どうやら、初心者モンスターのようだ。
暫く声をかけないで見ていると、東は逃げてばかりだ。
たまに攻撃を仕掛けても、動きが鈍いので簡単に避けられていた。
それから10分は経っただろうか、ようやくイノシシ1体の討伐は完了した。
(どうしよう、この転生者とあのアイさんを会わせても、世界を救える気がしないんだけど……)
「ねぇ、ノゾミ。こんな奴と組ませてもダメじゃない?」
ミリンにも言われてしまうとは、本気でダメだ。
でも今は他に手はない。
スキルは良いのだ。
正直、倒すのは苦戦したが、見ている限りダメージを受けた様子はない。
つまり回避とかは上手いのだ。
後は攻撃をなんとかすれば良いだけだ。
気持ちの持ちようでなんとかなるかもしれない。
「東さん、東崇人さん」
私は東に声をかけた。
「はっ、この声は女神様、女神ノゾミ様ですね?」
「そうです、お願いがあり連絡致しました」
「お願いですか?」
「はい、それはもう一人の女神が転送した者と会う事です」
「お断りします」
(はいはい、お断りね……えっ?)
その反応は予想してなかった。
「お断り?」
「はい、僕は人見知りなんです。女神様は綺麗な人でしたので大丈夫でしたが、初めて会う人なんて怖いに決まってます。だからお断りです」
引きこもりで人見知りって最悪の組み合わせだ。
「そこをなんとか……、相手はすっごい可愛い女の子ですので……」
「可愛い……、何処で会うのですか?」
切り替え早!!
こいつは、女の子と聞いて会うの決めたのか。
正直、最低だと思う。
でも今は仕事中。
ミリンのような事にはなってはならない。
「あ、ありがとうございます。では、本日の夜に町にある食堂に行ってください。そこでまた連絡致します……ではまた」
とりあえず、2人を会わせる事には成功しそうだ。
しかし、東が女好きだったとは……。
だが、チャンスでもある。
上手く導けばイケるはずだ。
アイさんにリードしてもらって、ちゃんと戦えるようになれば、魔王討伐くらい大丈夫だろう。
「あんた、結構やるわね。この女神ミリンが入れば怖いものなんてないんだけどね」
(いや、ミリンがいるから不安しかないんだけど……)
「ノゾミ様お疲れ様でした。今回は女神らしく振る舞えていました。ミリン様は……」
「何よ、何が言いたいのよ!!」
お世話妖精にもケンカを売るようだ。
「まぁ、まぁ、とりあえずアイさんに連絡をしないと」
「……そうね」
この後、アイさんに連絡し、ミリンとアイさんの壮絶な言い争いが続いた。
この言い争いを見て、この先、ミリンと一緒に住む事と女神としてのサポートを受ける事を拒否したい気持ちでいっぱいになった。
まぁ、拒否出来ないのだけど。
暫く言い争いしていた2人をなだめ、東と会う事が決まった事を伝えた。
その後私は、2人が会う時間まで部屋でゆっくりする事にし、自室に戻った。
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