勇者タラカーン 1
「本当に頭にくる!」タラカーンは仕留めたモンスターの素材を蹴って言った。
「おい、折角集めた素材だろうが。使い物にならなくなる」大剣使い・ムナガノーシカはうんざりしたように言った。
「この程度の素材なんて二束三文にしかならない」
「じゃあなんでクエスト依頼を受けたのよ」ズミヤもまた疲れ切ったように呟いた。いつもの事とはいえタラカーンの愚痴にうんざりしていたからだ。
「こんな雑魚しかいないとはな。もっと大物がいると睨んでいた」
「フィールドクエストは運だからな。敷地内のモンスターを狩るだけだが報酬はモンスターの個数による歩合だから」ムナガノーシカは懐から取り出した短剣でモンスターから牙や角を切り落としていく。「クソッ。こんな作業はアポスの役割なんだが」
「だったらドラゴンでも狩る? クエストを掲示板で見たわよ。報償金も桁違いだった」
「ドラゴンなんて相手にしたら死んでしまいます」とパウークは心底恐怖して言った。
「ドラゴンか」タラカーンは顎に手をあてて考え出す。「ここからクエスト依頼も出来るよな?」
「テイムした鳥に依頼内容をギルドに届ければおそらく」ズミヤは不思議そうに言った。
「ではドラゴン退治の依頼を受諾するとギルドに送ってくれ」
「何を言っているんだ! 俺たちではまだ無理だ!」ムナガノーシカは素材を剥ぎ取る手を止めて叫んだ。「それにこの後は遠征クエストもあるだろう?」
「落ち着け。依頼を受けるのは俺たちじゃない。アポス一人だ」タラカーンはニヤけた表情を浮かべて言った。「このままのうのうとパーティーを抜けさせてたまるか」
「そんな事、出来るんですか?」パウークはムナガノーシカが剥いだ爪を拾い集めながら訊いた。
「パーティーからの依頼とその参加者を明記するという決まりはギルド自体が決めた事だ」タラカーンは腹を抱えて笑だした。
「確かにここのギルドは規約が明確な分、抜け穴も多い。こんな悪知恵を働く奴は想定外だろうが」ムナガノーシカは再びモンスターの皮を剥ぐ作業に移る。
「仕方ないわね」ズミヤは近くにいた土鳩をテイムしてその足に依頼内容を明記した紙片を括り付けた。「さあギルドまで飛んでこの紙片を届けるのよ!」
「アポスさんが依頼を受けない場合はどうするんですか?」パウークは思いつきを口にする。
「それについては私も知っている。キャンセル料は報酬の料金に比例して高くなるのよ。つまりクエストを受けてもキャンセルしても地獄ってわけ」ズミヤは訳知り顔でパウークに講釈を垂れた。
「はえー」パウークは笑い転げるタラカーンを尻目に興味なさげに呟いた。
「まあこの後俺だけ素材を換金しにギルドへ行くからその時に確認してやるよ」ムナガノーシカは素材をまとめつつ言った。
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