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ザイカと出会う

 首都シンアルにほど近い地方都市ゴフェルに向かうには深い森を通らねばならない。タラカーングループと一緒に狩場に来た時はパウークによる魔除けが効いていた。魔除けはモンスターに対する忌避剤のような効能を発揮する。


 全力で駆け抜けても半刻はかかる。モンスターには人を襲うモンスターと襲わないモンスターがいる。人を襲わないモンスターを僕はアーク・モンスターと呼んている。ただその違いが分かるスキルはあっても襲われる時は一瞬だ。


 戦闘能力は低くても鍛錬を欠かした事はない。周囲に気を配りつつ全力で駆け抜ける。


 もうすぐ森を抜けるという所で何かが袖に引っかかった。


 急停止しても勢いは殺せない。

 クルッと方向転換すると袖に引っかかった何かが外れ、代わりにモンスターの姿が目の前にあった。


 鉤爪を持ったネコ科のモンスターが咆哮を上げている。

 せっかく捕まえたと思った獲物が狡猾に逃げおおせたのに腹を立てているのだ。


『君はお腹が空いているのか?』

 心の声を投げかけた。万が一アーク・モンスターが間違って人を襲う事もあるからだ。

 返事はない。

「やはりな」腰に刺した短刀を構える。どう考えてもモンスターの懐に届きそうもない。


 鉤爪が弧を描いて斜め上から迫ってくる。

 これは死んだか、と思った。

 次の瞬間、モンスターの咆哮が聞こえた。それは威嚇よりも嘆きに近い声だった。

 目の前に僕よりも背の低い女の子の背中が見えた。

 構えた大鎌がモンスターの鉤爪を切り裂いていた。

「え?」

「今! 懐に飛び込んで臍に刺す! 弱点は臍だから」


 女の子に指示されるまま僕は動いた。体毛があって臍がどこにあるが分からない。なので適当にあたりを付けて刺した。


 モンスターの動きが止まる。そしてゆっくりと横様に倒れた。

 女の子の方へと振り返る。大鎌を二、三度体の周りに振り回すとどういう仕組みか刃と取手が折り畳まれて背中の鞘に収納した。


「凄い」思わず称賛してしまった。まるで大道芸だったからだ。

「練習した!」女の子は自慢げに言った。

 そうなのか。

 が、体の周りを旋回させた時に大きめの枝が切れたのか女の子の頭に落ちた。

「痛っ!」そのまま女の子は頭を抱えてうずくまる。


 僕は背負った鞄から湿らせた布を取り出し彼女の頭に置いた。

「鎮痛剤の薬草の汁が染み込ませてある。しばらく頭にあてておいて」

「本当だ。痛みがひいてきた」

 そう言った彼女の顔を見ると驚くほどの美少女だった。

「僕の名はアポス。助けてくれてありがとう」

 手を差し出すと彼女はその手を握って言った。

「私はザイカ。天罰執行者だ」

 僕は一瞬で青ざめる。

「あああ、嘘、嘘。何でもない。忘れてください。忘れろ!」

 今度はザイカが青ざめる。そして背中の大鎌を構えて僕に向けた。

「大丈夫。僕は誰にも言わないよ。それにその役職を知っている人はこの世にはほとんどいない」


 天罰執行者ーー。それは一般には知られていない種族だ。



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