宝石
夜まで村の小さな神殿で一休みする流れとなった。依頼主の家は夜は誰も入れないよう締め切りたいとの事でドラゴンが現れるまで時間潰しが必要になった。
「締め出されたのね、結局」ザイカは納得できないように呟く。
「事情が事情だからな。普通は家で待機させてくれる」
神殿は小さく、祈祷の部屋と待合室だけの簡素な造りだった。待合室がカラスの糞だらけだったので天井の梁に巣があるのは明らかだった。
祈祷室に梁はなく低い天井にベンチが数席あるだけだった。ザイカの強い希望で祈祷室で日が暮れるのを待った。
「もし戦闘になったらどうする?」
「アポスは見ているだけで良い。ドラゴンなら倒せる。多分」
多分なのか。
「今までどのくらいのモンスターを倒してきたんだ?」僕は不安にかられてザイカに質問した。
「アポスと出会った森のモンスターでしょ? アポスと出会った森のモンスターでしょ? アポスと出会った森のモンスターだ!」
「一匹じゃないか!」
叫んだものの僕も人のことは言えない。タラカーンパーティーにいた頃はほとんど他のメンバーが倒してきた。
『前途多難だね』コーシカは慰めのつもりか、付け加えて言った。『幽霊生活も悪くないよ!』
『まだ死ぬつもりはないよ』
そう言ったもののこのままでは死ぬ可能性もある。アーク・モンスターである可能性は高いがそれは裏返すとそれだけ知力があるということだ。
「これ何?」と唐突にザイカはベンチの下に潜って何かを取り出した。
「宝石だ。誰か落としたのかな」
「宝石って何?」
「装飾品に使われる綺麗な石だよ」
「装飾品って?」
「体につけるものだよ」
ザイカが宝石を知らないという事実に驚きを覚えた。だがそれを取り立てていうつもりはない。シンアルの国土は広い。色んな部族がいてそれぞれにルールと生活様式がある。それに彼女は天罰執行者だ。
「へえ。これもらっていいの?」
「後で依頼主に届けよう。おそらく村の誰かのものだから」
「そうか。綺麗だったな」
『私も欲しいな』
『コーシカには着けられないだろう』
言外に二人からおねだりされているような気がしたのは気のせいか。クエストを完遂したら町で見繕うのも悪くない。
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