表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

前編 日本が「ケチ」だったことによる日米利率差

筆者:

 本日はこのエッセイを選んでいただき誠に光栄です。

 今回はここ最近15年ぐらいの円とドルの流れと今の起きている事象。

今起きている円安、そして今後の展望について見ていこうと思います。


 特に注目したいところは「国債を発行しすぎたから円安になっている」と言う論調があることです。

 積極財政派の僕としてはこれについて真っ向から反論していきたいと思います(これについては中編参照)。



質問者:

 とにかく今、加速度的に円安になっていますよね……。

 どうしてなんでしょうか……。



◇2010年代の円とドルの推移



筆者:

 為替については様々な要因が絡み合っているので、主だったことについて話しているという事を承知して読んでいただければと思うのですが、

 現在の一番の要因としては日米の利率差によるものです。

 

 逆に2010年代初頭は80円前後だったのはなぜなのか? と言いますと、リーマンショックとギリシャ発の欧州債務危機に伴い、「有事の円買い」が起きたからです。


 ただ、円高と言えど日本国内はリーマンショックによって上場企業の倒産件数は過去最大だったので好景気だったからではありませんけどね。

 ただ単にリスク回避のための円高だったという事です。


 更に東日本大震災で円安になりそうなところですが、円高になりました。

 日本の保険会社が保険金の支払いに手元の円を増やすため、海外の資産を売って円買いを進めるのではないかという思惑もあり、海外投資家の動きが円高に繋がったようです。


 このように一つの方向性になりそうだ! となると海外投資家の影響によって過剰に円高や円安に振れやすいという傾向があります。



質問者:

 しかし、その後は110円ぐらいまでずっと行っていましたよね。



筆者:

 いわゆるアベノミクスによってアベノミクスで円安による輸出立国、貿易収支黒字を目指したためです。

 つい先日終わりましたが、2012年7月からマイナス金利が始まり「異次元の金融緩和」と言うのを行ったことから日米金利差が決定的になりました。


 しかし、実際は国際競争力の無さから自動車産業以外ではマイナスになるという結果になりました。


 これは、一つに東日本大震災に伴って原発が停止し、化石燃料を輸入するようになったことによる輸入超過です。


 もう一つはアベノミクス第二の矢と言われた「財政出動をする」と言う宣言が実を言うとウソだったためです。


 というのも、2012年度予算と2018年度の予算を比べると全体の予算は1.9兆円しか増えていません。

 これは同時期に必然的に増える社会保障費の3.4兆円増加よりも下回っているので「安倍政権は実質的には僅かながらも緊縮だった」と言う結論と言えることが出来ます。


 実際として国債発行額は増加しましたが、海外投資家の占める割合は過去最低を記録しました。

 正直、一番国家がデフォルトするケースは海外への返済滞りなのでこの割合が減ってさらに消費増税をしたので「財政健全化していた」ことを意味すると僕は認識しています。



質問者:

 国債の発行額が増えていたのに実際は財政出動していなかったって言うのは驚きですね……。



筆者:

 正確に言うのであれば大企業の法人税減税を行ってその分のトリクルダウンを狙ったのですが、

 残念ながらその分の金額は海外投資に行い日本への投資・給料増加には全くつながらなかったという事です。


 また、一般的には累積の国の借金が~とか言う話になっていますが、一番気にしなくていけないところは海外投資家の割合です。この割合は10%台前半で推移しており全く問題ないという認識です。


 世間では「アベノミクスは失敗」とか言われていますが、

 僕の認識では過去最長の政権でありながら「アベノミクスは実現しなかった」と言うのが正確なところだと思っています。



◇今現在の円安2大要因 ①世界から見た場合の相対的地位の低下



質問者:

 そして、どうして今極端な円安になっているんですか? 



筆者:

 2つの大きな要素があると思っています。

 まず日本の相対的地位の低下が挙げられます。


 僕はGDPを国の国富の評価としてとらえていないのですが、

世間一般や世界の認識としては日本のGDPが伸びていないことについて将来の投資対象にしていないという事が大きな要素としてあります。


 それに対して紛争が起きている国以外ではGDPは成長しており、日本の相対的な地位はかなり低下しているのです。



質問者:

 具体的にどれぐらい低下しているんですか?



筆者:

 ここ30年の世界のGDPに占める日本のGDPの割合の推移というもので見ていこうと思います。


 1995年 5.5兆ドル(458兆円) 世界で占める日本の割合17.6% 

 2010年 5.7兆ドル(510兆円) 世界で占める日本の割合8.5% 

 2023年 4.2兆ドル(558兆円) 世界で占める日本の割合4.2% 


 今年4位に落ちましたが、それまで2位や3位にいたのでそんなに落ちていないんじゃないか? と思っている方もいらっしゃると思うのですが、


 上記のように世界の中での影響力は2010年から見た場合で半分。95年から見た場合には4分の1まで低下しているのです。

 この30年数値として世界から見たら「成長しない国認定」されていると思います。



質問者:

 全てがお金で判断するものでもないと思いますけど、それにしてもちょっとあんまりと言う感じがしますね……。



筆者:

 2010年頃までは「有事の円買い」と言う法則性が適用されていましたが、

 ロシア・ウクライナ紛争やイスラエル危機でもその法則すらも起きないほど今の日本の経済の相対的地位が低下したとも受け取れるわけです。



質問者:

 しかしどうしてGDPが増えないんでしょうか……。



筆者: 

 リーマンショックの時少し触れましたが「世界競争力の低下」が他国と比べた場合競り負け次々と世界でのシェアを奪われていったという事があります。


 その上で真水国債を発行しないことから「パイの奪い合い」に完全になってしまっており、不毛な戦いを強いられているという事です。


 この理由の一つとして僕は「スパイト行動」と言うのを以前挙げさせてもらいました。


 これについて簡単に振り返っていきますと、「他人を妬む気持ち」から「自分が損をしてでも相手を自分のところまで落としてやりたい」といった思考のことです。


 これが日本人全体に蔓延していることからかつてはトップの部門でもあった半導体やドローンなどの部門では今は後塵を拝している状況なのです。


 また、スパイ防止法なども無かったことから「データの盗み放題」の状況が続き、

 技術を折角開発しても先に中国などで発表されてしまう事もありました。



質問者:

 それでは世界の中での競争力が低下しても仕方ないですね……。



筆者:

 GDPを基準に言いますと安倍政権以降で日本の世界的価値は半分になったことを先ほどご紹介させていただきました。

 2011年当時80円ぐらいだったことは考えれば今の水準はある意味“妥当”のラインとすらいえるんですね。

 95年も80円前後だったのでその水準から見たら1ドル320円も極端なことを言えばあり得るというところなんです。



◇今現在の円安2大要因 ②各国との利率差とその裏にある“コロナ財政出動渋り”



質問者:

 ひぇーそこまでいったら本当に私たちの生活は大変ですね。


 でも、この「日本経済の相対的地位の低下」ってここ1,2年の話ではありませんよね?

 直近の要因は何が原因なのでしょうか?



筆者:

 最初にも申し上げましたが日米の利率差です。

 日本は長期的に経済が停滞・地位低下していることは先ほどのことを見ても明らかなわけですが、それに伴って日本は利率を上げることが出来ません。


 

質問者:

 しかし逆にアメリカは利上げをできるぐらいどうしてそんなにも景気が過熱しているんですか?

 やっぱりビックテックと呼ばれている企業が強いからですか?


 

筆者:

 いえ、違います。

 実を言いますとGAFAMなどと呼ばれるトップ企業に所属している従業員は極僅かです。むしろ、レイオフ(従業員を一時的に解雇すること。基本的には業績が回復した際には再雇用するが実際はほとんど再雇用されない)されて人件費削減に走っているぐらいですからね。


 景気過熱の理由の一つはインフレ抑制のための利上げを行うぐらい「コロナ対策でお金を配った」のです。


 日本は個人に対しては10万円1回、企業への雇用調整助成金(雇用保障)ぐらいでした。後は医療への補助金にとどまったのです(例年の赤字国債と比べてプラス70兆円ほど)。

 アメリカは2年間5回にわたり日本円にして700兆円分のコロナ対策出動を行ったのです。

 

 その政策と言うのは、

・一人最大1400ドル(約15万4000円)の支給を毎月行う

・失業保険として従来の支払い額に毎週600ドル(約6万6000円)が一律に加算。(平均的な働き手は就業時よりも収入が増えることになったケースもある)


 この2つが大きなものでした。

 これによって民間の消費能力と言うのが劇的に向上し、景気の過熱になりアメリカの利上げに繋がりました。

 後は過剰な移民などによる住宅不足・供給不足の影響もあるのですが、

 利上げのきっかけはこの「コロナ給付金」であることは間違いないと思います。


 つまり「日本がアメリカより財政出動がケチだった」ことから日米利率差、円安に繋がったのです。

先ほど紹介した「アベノミクスの財政出動」も実際はほとんど存在しなかったように日本は極端なまでに「ケチ」だと言えるのです。



質問者:

 まさかの結果ですね……。結局のところ日本の財政出動の足りなさという事ですか……。



筆者:

 このアメリカの700兆円の原資は国債なので、日本はむしろ国債を発行しなさ過ぎたと言えるのです。


 またアメリカ以外では世界80か国では消費減税を行いました(アメリカに消費税は無いところもある)。日本はケチで減税は何も無し――それどころか最近ではゼロゼロ融資の回収が始まったので、「ゼロゼロ融資倒産」が始まっているという形です。


 実を言うと僕個人としては介護や農業と言った必須産業に人を振り分けるためにある程度の淘汰は必要だと思っているのですが、そういった産業に人が行きわたる支援政策も無い状況での倒産は非常に危険な状況だと僕は考えています。



質問者:

 国民消費支出は1年以上も低下しているんでしたね……。



筆者:

 日本のGDPの5割以上は内需です。

 内需強化がGDPに直結する中、インボイス制度、子育て支援金、森林環境税、防衛増税など国民負担増ラッシュばかりするのは本当に狂っていると思います。


 そして、増税をして引き締めた分を円安でのインバウンド需要で補おうというのは本当に失笑せざるを得ません。


 後半では「そうは言っても国債を発行するのは怖い」と言う方向けに解説するとともに、逆に国債を発行し適切な減税(消費減税、社会保障費徴収減額)をしないまま行くとどういう未来が待っているかを解説していこうと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ