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10.『ビザール・マリアージュ』

※少し長めです。

「本日は当ホテルにお越しいただき、ありがとうございます、公爵様、そして姫様も!」


「よ、よろしく……です」


「うふふ……楽しみにしていますわよ」



 結婚式当日。早めに西の森ホテルに到着した公爵様とホムンクルス姫を、エントランスでお出迎えする。


 お二人とも普段着で入ってもらい、ホテルの中で着替えする流れだ。


 そろそろヒュパティアさんとメガラニカ王も来るはずだし、やることは目白押し。


 教会と披露宴会場を併設することになってから、ロプノール君とも話をする機会が増えたけど、まあまあ上手くやれてると思う。



「ミドヴェルト様! 本当にすごいホテルですね!」



 ヒュパティアさんたちより前にロプノール君がやってきたので、慌てて教会フロアに案内する。今日はあんまり変な嫌味言ってこないな……いや助かるけど。


 西の森ホテルの教会は、少し天井が高くなっていて全体的に白っぽい部屋になっている。王都の教会は、ヨーロッパらしく石造りで薄暗くて色とりどりのステンドグラスが映えてるけど、こっちはブライダル特化で現代風に白・黄緑・ペールイエローって感じにしてる。ロプノール大司教は、あまりのシンプルさに驚いたのか、目を見開いて言葉もない様子だった。



「すみません、使いづらいようだったら……」


「いえ! 素晴らしいです! 精神が洗われるようです!!」


「あ、あぁ……それは良かっ」


「教会本部もこうしたかったのでしょうか? なんならこれからすぐ改修に……!」


「やめてください。それぞれ雰囲気がちがうから差別化が図れるんですよ。人それぞれの好みもありますし……」


「あ、そうか……()()()です、ミドヴェルト様!」



 何がさすがなのかはわからないが、理解してくれたようで良かった。ロプノール君に教会フロアを任せ、エントランスに戻ると、ちょうどメガラニカ王とヒュパティアさんが到着した。



「やあ、久しぶりぃ」


「ごめんなさい、遅れたかしら?」


「ようこそ! 西の森ホテルへ! さっそく準備に入りますのでこちらにどうぞ。ウェルカムドリンクでしばらくお(くつろ)ぎくださいませ」


「あんがと、本格的じゃん」


「ははは……」


「あ、ねえねえ、チョコとオレンジジュースある?」


「はい、ございます!」



 まさか、メガラニカで気に入ってたセットをご所望とは。慌てて裏に行って、チョコ魔法とオレンジジュース魔法を発動。それっぽく器に盛って、高級感を意識しつつ提供した。



「あんがと」



 メガラニカ王がなんかニヤついてるけど……大丈夫だよね? こいつ、これから結婚するんだもんね? 転生者ってこともあって、どうも警戒してしまう。基本的には何もしてこないけど、嫌味なクズだし、何より言葉や行動の端々に攻撃性を感じる。私が思う嫌な男の基本みたいなやつだ。もっと公爵様みたいに、清らかな心を持ってほしい。



「お泊まりのお部屋にご案内する前に、本日のスケジュールをご確認いただきますね、この後……」



 さらっと結婚式の流れをおさらいして、ホテルの4階にあるスイートルームに移動。西の森ホテルは湖に沿って、少しカーブする感じで長細くなってて、両端にスイートルームが二つ用意されている。真ん中辺に、みんなで打ち上げをやったテラスがあって、そこから階段で屋上のプラネタリウムに行けるのだ。


 ヒュパティアさんは意外なくらいに大喜びしてて、王も満足そうだった。私は忙しいので下がらせてもらって、前世で会場整理のプロだった王に、スケジュール管理を任せる。



「えぇ? 俺ゲストじゃん? 人使い荒くない?」



 などとブー垂れていたが、オメーだけには言われたくねえわ。どうせ私に罪悪感を植え付けたいだけで、真剣に嫌なわけじゃねんだ、こいつ。もう見切ってるから、完全スルーして、自分の仕事に戻る。

 

 1階ロビーに戻ると、厨房のおばちゃんとベアトゥス様が、二人揃って手伝いに来てくれた。



「あ、お疲れ様です!」


「おう」


「あんた、凄いじゃないか! こんな大きなお城!」


「ホテルなんですよー」


「ホテルね、ホテル! うふふ……」



 おばちゃん気分上がりまくってんな……とりあえず、割り当てた部屋に荷物を置いてもらってから、広い厨房に案内する。なんだかベアトゥス様とおばちゃんがカップルみたいになってて「ねえ、凄いじゃないアレ!」とか盛り上がってるので、ニヤニヤしながら眺めていると、ベアトゥス様が「助けろ!」みたいな目線を送ってくる。たまには良いじゃないって意味を込めてうんうんと微笑むと、チッと舌打ちが聞こえた。いけませんよ、レイディに対して。


 ホテルの厨房は、おばちゃんとベアトゥス様に任せて、メニューチェックのスタッフさんを置いておく。


 実は今日の特別ゲストは、ほかにもいるのだった。


 またまたエントランスに戻ると、お留守番のメイドさんが慌てて駆け寄ってきた。



「いらっしゃいました!」


「ありがとうございます」



 小走りで玄関を出ると、王様がフワフワちゃんと一緒に竜車から降りてきた。フワフワちゃんの上には、キラキラした正装で身を飾った妖精王女様もいらっしゃる。



「ムー!」


「ハハハ、今日は楽しい1日になりそうだな」


「起こしいただき光栄至極にございます、王様、王子殿下」


「われもしょうたいされたが……ほんとうによかったのか?」


「当たり前ですよ、楽しんでくださいね!」



 ロイヤルスイートは4階テラスの目の前にある。魔法のエレベーターで一気に上がると、ちょうど公爵様とホムンクルス姫がテラスに出ていた。



「これは王様、本日は誠にありがとうございます!」


「よいよい、めでたいことは大歓迎だ」


「よろしくお願いいたしますわ」



 今日のカップル、どっちも後見人が王様なのだった。王様は私の後見人にもなってくれてるらしく、なんだか面倒見の良いおじさんって印象である。魔国ではこれが普通なのか? それともフワフワちゃんパパが良い人ってこと? ちょっとわからないけど、たぶん妖精王女のアイテールちゃんの後見もしてるはずだから、ここにいるメンバー全員のお父さんと言っても過言ではない、すごい王様なのだった。


 この王様だから、今の魔国は平和なのかもしれない。トラブルは基本スルーで放置系政治だけど、なんだかんだ周りが頑張って事なきを得ているし、もしかして何かすごい能力の持ち主なのかもね。


 お昼前の、清浄な空気を感じる時間帯に結婚式を済ませたいので、一気に準備をはじめる。



 まさかのダブル結婚式だけど、頑張って成功させるぞ!!







☆゜.*.゜☆。'`・。・゜★・。☆・*。;+,・。.*.゜☆゜





「それでは、結婚の儀を執り行います」



 ロプノール大司教の(おごそ)かな声が教会フロアに響く。


 祭壇で待つのは、二人の新郎。ドアから入ってくるのは、二人の花嫁だ。


 なんか……捕まった宇宙人感を醸し出してるおじさんが真ん中にいるけど……王様、案外ちっちゃかったんだね。ハイヒール美女に囲まれてるからか?


 しかし、ホムンクルス姫の花嫁姿が見られるとは……感無量ですな。なんだかんだ生まれるとこから見てるから、勝手に親戚のおばちゃんみたいな気持ちになってしまう。


 ヒュパティアさんも綺麗だな……ヒュパティアさんも一応、ホムンクルスとして再生した瞬間から見てたけど、メガラニカでお亡くなりになったとこも見ちゃったから不思議な気分である。


 花嫁と後見人は一歩ずつゆっくり進むので、ドレスのトレーンが綺麗に開く。しかし真ん中の通路、広くできてよかったぁ……ダブルドレスが入るかちょっと焦ったけど、取り外し可能なベンチで助かった。ありがとう、大工のおっちゃん!


 柔らかな光に包まれた教会で、愛を誓い合う二組のカップル。


 午前中の日光が射すように設計されたフロアは、神々しいほどのアイボリーに包まれている。


 二人とも、つらい時期を乗り越えて今の幸せにたどり着いた人達だ。これからは、明るい未来に進んでいってほしい。願わくば、今後も幸あらんことを。


 私の隣りには、新婦の家族として急遽参加したベアトゥス様がいる。お兄ちゃんだし、泣いてるかな? と思って顔を見たけど、なんだか口を結んで前方を凝視していた。た……耐えてるのか? 泣いていいんだぜ、お兄ちゃん。


 粛々と指輪の交換と誓いの言葉を交わし、結婚の儀は魔国の契約となって二人の運命を繋げる。この世界って結婚指輪の文化なかったみたいなんだけど、指輪に誓いを刻印して交換したらどうかなって提案したら、ホムンクルス姫が超乗り気でトントン拍子に話が進んだ。


 公爵様とメガラニカ王は元々日本人なので、普通に受け入れてくれたけど、ヒュパティアさんは束縛が嫌いみたいで少し考えたいとのことだった。でも「結婚するなら別れることなんか考えちゃダメよね」と結局は賛同してくれたのだった。相思相愛のバカップルかと思ってたけど、何だかいろいろあるみたいね。



「それでは誓いのキスを」



 二組のカップルが、みんなの前でそっと口付けを交わす。


 温かい拍手に包まれて、退場する新郎新婦に花びらをふりかける。ライスシャワーもしたかったけど、ライス貴重なんだよね、魔国。絶対おばちゃんに怒られるから、そこは妥協した。


 参列者の皆様には披露宴にもきて欲しいけど、予定があって来れない人もいるから、出口でお土産を渡す。



「じゃあ俺は厨房に戻る」


「すみません、忙しくさせちゃって。よろしくお願いします!」



 最後にロプノール君がなぜだか厳かな雰囲気のまま出てきたので、お土産ついでに感謝の言葉を伝えた。



「大司教様、ありがとうございました」


「ミドヴェルト様……」


「は、はい?」


「なんですかぁ? あの指輪! 僕()()()()知りましたよ?!」


「ごめんなさい、いろいろ急だったもので、打ち合わせしてませんでしたね……ははは」


「いえ、いいです。あの指輪は最高ですよ。さっそく教会でも取り入れたいのですが!」



 魔法とか契約とか結構いろいろあるのに、結婚指輪がないってどういうこと? ヒュパティアさんも知らなかったみたいだから、人間の国にもそういう文化がなかったってことだよね。謎だ……


 とにかく鼻息の荒い大司教様を宥めながら、一大ビジネスの予感がしたのだった。





☆゜.*.゜☆。'`・。・゜★・。☆・*。;+,・。.*.゜☆゜





 本日は、公爵様および隣国の王ご夫妻のご成婚記念日ということで、コロッセオは無料開放していた。最初は剣闘大会でいっかと思ったけど、またなんか事件が起こったら困るので、ここは穏便にビアガーデンにしてみた。王都の酒屋さんが一堂に会するフェスを開催して、ミッドサマーのお肉料理みたいに点数を競うのだ。魔国の地方の酒造にも打診して、来てくれる酒屋さんには特別に魔車を貸し出すことにした。


 王都の劇団にお願いして、西の森の幽霊を勇者様が退治してくれたっていうシナリオの舞台を上演。午前と午後の2回公演だ。幕間には大道芸とかコメディアンの人を頼んでるから、まあなんとか間は繋げるはず。芸人さんは基本貴族のいうなりにハチャメチャな劇をやってて、どっちかっていうと風刺とか、ちょっと攻撃的な皮肉とかが多い。でも今日はおめでたい結婚式の日だから、平和で無難なやつにしてくれって注文しといた。


 それがあんなことになるとは……



「ああ勇者様! わたくしのために生きて帰ってくださいませ!!」


「わかったよミドヴェルト! 我が愛する人!!」



 やめてくれ……何がどうしてこうなった?!


 コロッセオの出店をやってるメイドさんに、劇がスゴい人気で大変なことになってますよと言われ、慌ててチェックしに来たら、とんでもねえアドリブかましてくれてんな。妄想? 妄想だよね……? どっからこんな設定出てきた?! 酒瓶から直接謎の酒を飲んでる座長さんをとっ捕まえて、まずは冷静に事情聴取をする。



「ちょっとなんですかコレ? こんなの私頼んでませんよね?」


「頼みましたよ、ええ、確かに頼まれました!」


「はぁ?」


「ほらほら、これ! 最高傑作ですな!」



 劇団の座長さんが出してきた紙束を見ると、何やら込み入った台本である。華やかな恋愛を繰り広げる主人公ミドヴェルトが真実の愛にたどり着く物語。終わった……って、華やかな恋愛とは一体?!



「こ、コレいったい誰が……?!」


「おや、()()()()()()()()()かしら?」



 楽屋から出てきた美女は、まさかの赤髪エニウェトクさんだった……! おま、どうしてこうなった!!



「わかっているのよ、あんたがマーヤークを狙っているのは……ね」


「はぇ?」


「所詮、人間には人間がお似合いなの、無駄な夢を見るんじゃない!」


「いやいや、え? ていうかエニウェトクさん、ヴァンゲリス様はどうしたんですか?」


「あの男の名前を私の前で言ったら殺す!!」



 歌。音。メロディ。楽器。あとなんだっけ。



「きゃあああぁぁぁ! やめなさいッ!!」



 知らねえよ。音楽。ざわめき。声。リンリンリン。



 「あぁッ…………」



 ぶっ倒れたエニウェトクさんを、念のためその辺にあったシーツでぐるぐる巻きにし、人を集めて担架で運び出す。



「この女性は()()します。シナリオは書き換えてください。特に私の名前は削ること。いいですね?」


「わ、わかりました……です。はい」



 座長さんは慌てて劇団員の元へ走って行った。





☆゜.*.゜☆。'`・。・゜★・。☆・*。;+,・。.*.゜☆゜





「あーもう、違う出し物したほうが早いよ!」


「でも今から違う演目でグダグダになったら絶対新聞にいじられますよ!」


「新聞発行してるやつを暗殺しましょう」


「やめて、それはマズ過ぎるから……」


「歌……」


「へ?」


「ミドヴェルト様の歌を披露するのはいかがでしょう?」


「そ、そんなことしたら、執事さんに私が()()させられちゃうよ……!」


「悪魔の皆さんは、西の森にいらっしゃってませんし。念のためマーヤーク様には私が報告をしておきますので」



 ホテルのスタッフになってくれたメイドさん達と緊急会議を開く。


 無論、コロッセオの演劇停止に関する対策についてだ。



「私、湯浴みのお手伝いをしていましてミドヴェルト様の歌をお聞きしたことがありますが、結構いい線いってましたよ」


「いい線って……」


「注目を集めつつ、観客の不満を払拭、興味を根こそぎかっさらうにはコレしかありません!」


「ミドヴェルト様、お覚悟を!」


「ひえぇ……!」



 ベテランメイドさんの強めの提案に逆らえず、私は適当なドレスを着せられて、あっという間にコロッセオの舞台に立たされてしまう。ま、まずい……いやお風呂で歌うのと、舞台で歌うのは違うでしょうよ……!


 う、歌か……アカペラは無理よ……そういえばバックバンドほしいって思ってたなあ昔……どうしよ! 落ち着け! 考えろ!!


 ヨーロッパだから洋楽がいいのか?!


 知ってる歌、中世準拠じゃないわよ? クラシックも知らんし……知ってる歌!!


 そのとき、ピアノの前奏があたりに響き渡った。


 museの『Apocalypse Please』ゆっくりな曲だから完コピできたやつ。


 なんで音楽……? 誰かいる? 誰もいない……これは、この場では私しか知らない曲……つまり、まさかのカラオケ魔法?!


 よっしゃぁーーーー俺の歌を聞けやゴルァーーーー!!!



「聞いたことねえ歌だけど、なかなかいい曲だなあ」



 たりめーだゴルァ!! 未来で大ヒットしてんだかんな!! 異世界だけど!


 はぁ……なんかヤケクソだからカラオケを楽しもう。みんなのことはジャガイモだと思えばいいんだよ。





☆゜.*.゜☆。'`・。・゜★・。☆・*。;+,・。.*.゜☆゜





 よくわからないが大喝采を受けた。



「さすがです、ミドヴェルト様」


「ひぃっ……すすすいません……こちらにはいらっしゃらないと聞きまして……」



 舞台を降りると、執事さんが慇懃無礼なご挨拶をしてくれて、殺されるかと思ってしまう。何せ、この悪魔は私にアレを禁じ、場合によっては停止するって言ってたくらいなのだ。


 あれから調子をこいた私は、あれもこれもと長時間カラオケを楽しんでしまった気がする。追い込まれて、吹っ切れたおかげか、新たにカラオケ魔法も取得したし。どこで使うんだ……これ?


 でも確か、某マクロスではアレで戦ってたよね、場合によっては攻撃に使える可能性があるよ。悪魔とか、悪魔とか。



「私にとっては意味をなさない言語でしたので、なんら問題はありませんでした」



 あう……このカラオケ魔法は、この瞬間、完全に趣味の魔法と化した。でもマーヤークさんのOK出たから、外国語だったらカラオケできるー! ヨーロッパ設定の日本語世界スゲえ。現実世界では、三度の飯よりアレが好きで、モノマネ大好きフリスキーだったんだよねー!


 ……じゃなくてさ。


 なんで私ってまともな魔法を覚えらんないんでしょうか……?


 いまだに水魔法ができないんです……


 わりと、悩んでます……


 よろしくお願いします……





☆゜.*.゜☆。'`・。・゜★・。☆・*。;+,・。.*.゜☆゜





 午後からの披露宴は、4階テラスでまったり開催。西の森ホテル特製の料理がずらりと並ぶ。



「それでは、新郎新婦の幸せな門出(かどで)に乾杯!」


「「「「かんぱーい!」」」」



 考えてみたら、魔国トップの人たちは、みんなパーティー慣れしてんだよね……だからガッツリ日本の披露宴のプログラムでいかせてもらうことにした。


 新郎新婦の出会いから現在までを両脇の壁に年表っぽく紹介して、グルンとたどると雛壇の二人につながっていく演出。立食パーティーだけど、主役達のことを知って話しやすくなればいいなと考えてる。本当はブライダル動画流したりしたいけど、中世だからな……


 心配したような滞りもなく、お偉方のお祝いスピーチも進んで、ブーケトスの時間になる。


 ブーケトスの文化は魔国にもあるようで、キャアキャアとご令嬢達が集まってきた。なんせ、公爵夫人と隣国の王妃にあやかれるのである。何としてもいい相手を引き当てたいと思うご令嬢は、どんな小さなチャンスにも前向きだ。



「行きますわよ! それぇ!」



 ホムンクルス姫が投げたブーケは、黄色いドレスのご令嬢がキャッチ! なんか瞬間的に触手っぽいの出た気がするけど、魔国だからOKだ。ヒュパティアさんはまっすぐ私の方に歩いてきて、満面の笑みでブーケを渡してくれた。



「ほぇ?」



 突然のことで、辞する間もなく受け取ってしまう。



「お兄様を、()()()()()()ね」


「うぁ、は、はい……」



 周囲から拍手を受けて、なんだか居心地が悪い。ささっと中心の輪から抜けて、テラスの端に避難する。森のメニューは好評で、色鮮やかな料理を楽しんでいる参加者を、ただぼんやりと眺めていた。



「ミドヴェルト、ちょっといいか?」


「あ、ベアトゥス様、妹さんのご結婚おめでとうございます」


「うむ、すべてお前のおかげだ。礼を言う」


「そんなこと……」


「いや、お前に会わなければ、国は滅んで妹は死んだままだった」


「……急に何ですか……?」


「実はだな、礼を言わなければと思って」


「はあ……今お聞きしましたが」


「つまり、言葉だけでは足りないと思ったのだ」


「え、いやぁ、気を使わなくていいですって」


「すまん、言い方が悪かった。結婚してくれ!」


「え」



 ベアトゥス様は、(ひざまず)いて指輪の箱を差し出した。


 今日一日、結婚の雰囲気に当てられて、ちょっと羨ましいなと思っちゃってたんだけど……


 でもだからって流されちゃ、こんな……え、これってプロポーズ?!


 なんでベアトゥス様が指輪贈る文化知ってんの?


 ……ヒュパティアさんか?



「あ……」




 ……お兄様をお願いしますって……そういう……




 兄想いの妹さんだなぁ……




「わかりました……」



 指輪を受け取ると、満面の笑みでベアトゥス様が私を持ち上げた。






 その後、大々的な催しが話題となって、西の森ホテルは結婚式場として魔国に広く知れ渡った。








ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。


今後はちょっと大人の短編を投稿する予定ですので、大丈夫な方はぜひご確認ください。


また、シーズン3の予定もあるので、出来次第投稿したいと思います。詳しくは活動報告にて。


引き続き、よろしくお願いいたします。




2023.1.1追記

↓「空間をあらわすもの3」はコチラ

https://ncode.syosetu.com/n2709io/

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