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不思議な少女との出会いから始まるロマンスとかいう都市伝説

・これ、女性向けです。一話目の時点では女性向けに見えないかもしれないけど女性向けだということが大事なので四回言います。女性向けです。自衛をよろしくおねがいします。

・鹿の角切りについて。神社とかの行事でやる角切りは、成長しきった角を切るので血管とかなくて痛みもないけど、そういう角は栄養価値とかはありません。

一方、漢方薬などで使うのは鹿の幼角、いわゆる「鹿茸」で、そちらは成長しきってない角なので、神経とか血管がたっぷりあって切るときは血がいっぱい出るしめっちゃ痛いです。


――百年前、世界は「ケガレ」に侵された。それに抗うべく、一部の人間は特殊能力に目覚めて「覚醒者」になった。覚醒者たちはいずれも動物の姿をした「精神体」を持ち、同時に自身の体のどこかにその動物の「特徴」が生えている。


――わたしの「特徴」は鹿っぽい角。っぽい、と言うのは、わたしは未だ精神体を実際に実体化させられていないから。実体化の時期は能力の強さに繋がり、10歳になってもできてないわたしは控えめに言って雑魚。ので、めでたく鹿茸を採るための家畜にされちゃった。


――百年前、予言能力を持つ覚醒者はこう言った。いつの日か、龍を従えた聖女は生まれてくるだろう。彼女はケガレを浄化する力を持ち、その力で世界はついに救われるのだ。

無数の覚醒者たちはその予言だけを希望に、必死に戦ってきた。私/俺/僕はここで倒れるが、その死で繋がっていく明日の果てに、やがて世界は救われるのなら、もう悔いはない、と。

しかし、縋られている当の聖女はどうやら、血だまりと絶望の中で悪堕ちしちゃったみたい。




***




翔太14歳は不良とかヤンキーに憧れるお年頃で、先日ついに狂龍連合という地元最大な暴走族に入った。と言ってもまだバイクすら持ってない下っ端。幹部とかもダチの紹介で入った時に自分が入る予定の七番隊隊長と副隊長にお目通しされただけである。総長とかに至ってはおそらく彼の存在すら知ってはいないだろう、そんな下っ端。

それでも狂龍連合に入れたことはうれしいし、ダチと同じ隊にいて、新しい仲間とも知り合って、特攻服に至っては袖を通すだけで気分が高揚してきて、最近毎日が楽しい。



あの子に初めて出会ったのも、そんなある日のことだった。


あの夜は、いつものように同じ隊の仲間たちとよくたむろするコンビニに向かう途中、すれ違うように誰かに肩をぶつけられた。見遣れば、どうやら相手は道端でナンパしている見知らぬ不良だった。こちらに背を向けるように立っていたそいつはふらっと後ろに下がる際に、タイミング悪く通りかかる翔太にぶつかっちゃったのである。

お互い良識ある社会人だったら「あ、すいません」「いえいえ、こちらこそ」っておわるところだが、残念ながら両方とも血の気の多いお年頃の、しかもヤンキーときた。


「どこ見てんだコラ!」と未だちょっとやり慣れない巻き舌で条件反射のように怒鳴った翔太を、ナンパを邪魔された相手の不良は売られたケンカは買うぜ、というように振り返ってきた。しかし、怒鳴り返す前に、翔太たちが着ている特攻服が目に入ったようで、狂龍連合……とつぶやくその人は見る見るうちに顔が真っ青になった。

そのまま、「す、すみませんでした!」とナンパしていた女性を置いて、逃げるように走り去った。


虎の威を借りるようなその体験にちょっと感動しながらも、翔太はケンカできなくて残念だったというように「チッ」と舌打ちして、かっこつけるような表情を崩さない。

そして、彼はさっきナンパされてたらしい、未だフードをかぶって道端に立ち尽くしている少女を一瞥した。

結果的に助けたことになったけど、狂龍連合は進んで女に暴行をするような凶暴なチームでこそないすれ、女子供を助けるとか任侠あふれる雰囲気もない。もし相手の不良にぶつかられてなかったら、彼女があの後連れ去られようがそのままひどい目に合おうが、翔太の知ったことではなかった。

それに、ここで大丈夫?とか聞いたあかつきには、同じく思春期真っ只中の少年である仲間たちに冷やかされるのは目に見えている。

それが嫌だから、あえて声をかけることもなく、翔太はそのまま仲間たちとコンビニに向かうべくその場を後にした。


たったそれだけの出来事。去り際に見た、暗闇に潜むように立つ少女のシルエットに少しだけ違和感を覚えるも、もう二度と会うこともないだろうと思った翔太はすぐにその出来事自体を忘れることにした。


***


しかしながら、人生という野郎は予想外の出来事に満ち溢れるところがチャームポイントで、翔太と少女の二回目の出会いは、思いのほか早く訪れてきた。

少なくとも、そんなに頭がよくない翔太でも、少女の姿を目視すれば、まだ一回目の出会いについて思い出せるほどには早かった。


あれはまたある日の狂龍連合の集会の帰りだった。いつもはダチにバイクで家まで送ってもらうが、その日はダチが風邪のせいで集会に出られなかった。だから電車で帰ることにした。

改札口から入り、すぐに目視で確認できる範囲に人は一人もいないことに気づく。時間帯はそろそろ終電になるころ。とはいえ、結構賑やかなエリアにあるこの駅は、普段なら全く無人になる、ということにはならないはずだった。


じーんと静まり返った駅を見渡して、やっぱり今からでも同じ隊のやつらに頼んで送ってもらおうかと少し考えてみる翔太。しかし、そしたらきっと理由について聞かれるはずだ。人気のない駅にちびった、なんて言ってみろ。次の日から笑いものにされるのが目に見えている。プライドと不吉な予感にも似た違和感を天秤にかけ、暴走族に入ってるようなバキバキなヤンキー翔太くん14歳は前者を取ることにした。


それに、よく見てみれば、少し離れたところに駅員もちゃんといるじゃないか。


結構な距離にいても一目でわかるような満面の笑みを浮かべながら、その駅員はただ一人だけいる乗客である翔太を見つめている。そんな駅員の姿に、翔太は少し変な気持ちになるが、その気持ちを無理やり安心感と名づけることにした。


電車に遅れてはいけないと走り去った翔太の後ろで、その駅員は張り付いたような笑顔のまま、人間では到底できないような角度で首だけを動かし、こびりつくような視線で翔太の後ろ姿を追っていたことに気づかずに。


***


無事電車に乗れた翔太は、数こそ少ないが、ちゃんと一人だけいる自分以外の乗客の姿を確認出来て、少しほっとした。

知らぬ間に随分とビビっていたらしい自分に気づいて思わず舌打ちをする。そんな翔太を、もう一人の乗客は一瞥したあと、すぐさま目をそらして、しかし数秒後に何かに気づいたように二度見をしてきた。


そのまま目をそらすこともなく見つめてくるその人をヤンキーお得意な睨み付けを返すが、すぐにその姿はどこかで見たことのあるものだと気付く。


「おまえ、あの時の……」


前回と同じようにフードを被っていて顔がよく見えないその人は、恐らくだけどこの間ナンパされていた子だ。

あんな危ない目に合ったばっかりなのに、また懲りずに一人で真夜中に出歩きか。


感心にも似た感想を他人ごとのように思い浮かべながら、この子と初めて会う時に、自分が着ていた特攻服を見るや否や尻尾を巻いて逃げた不良の姿も思い出す。

それで少し得意でいい気分になり、同時に相手がおそらく年が近い女の子だということもあって、怒鳴る気が失せた。

そのまま相手からの視線を無視して適当なところに座る翔太だが、腰を下ろす際の物音に我に返ったのか、その子はしどろもどろになりながら声を発する。


「えっ…あ…、なんで……あの、わたし、は……っ、その、あなた、は、なんで……ここは、しょの……」


しかしながら、伝えたかったことを伝えることもできないまま、ついに噛んでしまったらしい。

やや裏返った涙声やどもってる口調から判断するに、確かに年の近い女の子で、それも内気なタイプに分類されるであろう人種だ。不良である自分とは普通一生関わりのないようなやつだ。向こうはこっちを怖がるし、こちらとしてもあからさまにびくびくとしているやつの相手をするのもめんどい。


だからそのままお互いを無視すればよかっただろうに、噛んだ後そのまま黙り込んだその子は、うーうーとうねりながら、どうやら何かを伝えたいという旨を未だあきらめていないらしい。


見るからに陰キャのくせに無視するには少し強すぎる存在感を醸し出す少女に、翔太は機嫌悪そうな低い声で「んだよ」と問いかける。

すると少女はビクッとしばらく固くなった後、なにかに思いついたように、自分が被っているフードに手を伸ばした。


そして電車内の不気味なほどに白い灯りの下で翔太はやっと少女の姿をその目で確認できるようになり、それで思わず息をのんだ。フードによって隠されていた少女の頭には、オス鹿のようなどでかい角が生えていて、その姿は人間と呼ぶにはあまりにも異質なものだったのだ。


同じように異質で、爬虫類のような縦長のその瞳は緊張からか涙がうっすらと浮かんでいて、その目に見つめられている翔太は今度こそ本格的にどうすればいいかわからなくなった。


今まで一度も実際にあったことはなかったが、その存在については常識レベルで子供の頃から頭ん中に叩き込まれていた。体の一部が人ならざるものの特徴が生えている人間。覚醒者。

彼女は、覚醒者だったのだ。


「え。待て、じゃあ、ここは……」


そして、覚醒者とは手をつないでトイレに行く女子高生もびっくりするほどに分けては語れないもの、「ケガレ」。

おおよそ百年前に突如として世界中に現れたそれらは、予兆もなく現れては異空間のような場所を作り、人間を取り込んで捕食するらしい。

らしい、と言ったのは、翔太も教科書でしか知らないからだ。恐ろしいものだと思うが、自分自身も周りの人たちも今まで実際に遭ったことはなかったし、ぶっちゃけ学校で学んだ時も半分ぐらいはファンタジー小説を読む気持ちでいた。

それぐらいケガレもケガレと戦う役目を背負う覚醒者も、一般人とは接点のない存在なのだ。


なら、そんな覚醒者がちょこんと居座っているこの、思い返してみれば明らかに異質な雰囲気がある空間は。



ケガレ

結界のようなものを張って人間を取り込む化け物。取り込んだ人間をいろんな手で殺そう(捕食しよう)とする。

覚醒者

不思議パワーに目覚めた人達。ケモミミもモフモフしっぽもあるよ。ケガレと戦う主力で一般人とはあまり接点がないらしい。

少女

一話目が終わってもプロフィールの名前のところが「??」になってる系主人公。

「えっ…あ…、なんで……あの、わたし、は……っ、その、あなた、は、なんで……ここは、しょの……」

―>私は覚醒者です。

あなたのような一般人は何でここにいるのですか。

ここはケガレの結界の中で危ないですよ。

といろんな手を使って状況を説明したかったが、結局どれも成功できなかった。可哀そうなほどに陰キャ。

翔太

主人公よりも名前が早く出た不良くん。憧れの族に入ってヒャッハーしてるところにケガレの結界に迷い込んだ不憫な子。しかし陽キャ。

ちなみに最初に出会う少女がメインヒロインでそこからさらにいろんな不思議な少女たちと出会いハーレムを築いていく日常の裏側系ファンタジー、ということにはなりません。翔太くんはどっちかってーとその少女の逆ハーメンバーです。女性向けです。

狂龍連合

少なくとも七番隊まである、でかい規模の暴走族。龍というネームはヤンキー特有のかっこいい生物好きから来たもので、別にタイトルのあれとは関係ない。


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