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 挿話: 転向

本日は行けるところまで、1時間ずつ更新します。こちらは7話目です。




「ふふん。暗殺は失敗したうえに、あの小娘は味方を一人得たか。さすが“天からの贈り物(ギフト)”というべきかな」


 闇が煙のようにうごめく部屋で、壮年の男がつぶやく。その声は内容にそぐわず、楽しげに響いた。


「まさか、あの小娘がゴザシュの名を捕っていたとはね。それを自分の陣営にも知らせず警備に利用していたとは、王子殿下はどこまで分かっておいでなのやら……」


 しのび笑いながら、男はクリスタルグラスを無造作に落とした。

 石畳に砕け散ったグラスから、濃紅色の酒が染み出す。深紅の液体は、みるみる複雑な紋様を成した。


「なに、シターデルごとき、ゴザシュとは比較にもならん。では議長のいぬ間に、議会のほうを手に入れるとするか」


 赤い染みの上に、クリスタルの破片がぽつんと浮かぶ。それは次第に強く輝き始めた。


「それにしても、期待はしていなかったとはいえ、道化の姫君ももう少し役に立ってくれてもよさそうなものを。そう簡単に殺せないのがめんどうだが……、まあ、あと何度かは使えよう。その後、始末をつけるがよい」


 最後の言葉に、ぽっと灯りがともる。

 贅を凝らした重厚な造りの小部屋に、燭台を捧げ持った小柄なウサギが現れ、


「御意」


うやうやしく一礼し、灯りとともにかき消えた。




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