追放された天才魔法使い、魔法技術の全てを弟子に託す ~今更戻って来てと師匠に泣き付いたのでしようがなく弟子の俺が行くことにする~
それはキラキラした宝石のような結晶だった。
触れると音が鳴り、どこかの建物の一室が中に浮かぶ。
「お願いします、どうか私の話を――」
「もう散々聞かされたよ、フルルリアくん」
師匠の名が聞こえた。
「魔法技術の衰退、耐性を持った魔物の出現、歪みの悪化。たしかにそれらは危惧すべきことだろう」
「では!」
「だが、これらはあくまで仮説に過ぎない。言葉を選ばずに言えば言いがかりだ。現体制への当てつけと取られてもしようがないものなんだよ」
「わ、私はそんなつもりは……」
「キミはそうでも、ほかは違う。現に上はお怒りだ。まぁ……キミの気持ちもわかるがね。キミは天才的な魔法使いだ。魔法技術の向上に多大な貢献をしてきた。だが、魔法の本筋が移り変わった今やキミは自身の立場を失いつつある」
「……去りゆく者の戯言だと、そう言いたいんですか」
「同情するよ。出来ればここ残ってもらいたい。だが、上からの命令には逆らえないものでね」
「そう……ですか」
「ティスキス・フルルリア。現時刻を以て魔法技術部部長の任を解き、追放とする」
ぷつりと音も映像も途切れ、それはただの結晶に戻った。
「タイガ。どこにいるの? 修練の時間よ」
「いま行く!」
その結晶が師匠の記憶を封じ込めた魔道具だと知るのは、それから数年後のことだった。
§
村の中央を流れる川の水面がキラキラと輝く昼下がり。
ふと畑の向こうから幼い子供の泣く声がして、爪先がそちらへと向いた。
泣きべそを掻いていたのは一人の男の子。その側には妹と思しき子が一人いる。
「よう、どうした?」
男の子は指先を上へと向け、それに合わせて視線を上へと向けると風船の形をした花が木の枝に引っかかっていた。
「フウセンソウが取れないから泣いてる……って訳じゃなさそうだな」
男の子は肘に怪我を負っている。
血が滲んでいて痛そうだ。
「転んだのか?」
「あのね。フウセン、取って上げるってお兄ちゃんが……でも、あともうちょっとのところで落ちちゃったの。魔法が解けちゃった」
「そうなのか。優しい兄ちゃんだ」
膝を折って男の子と視線を合わせる。
「リトライだ、兄ちゃん。傷は俺が治してやる」
患部に魔法の包帯を巻き付ければ治療は完了。
擦り傷、打撲程度ならこれですぐに直るし、痛みももうないはずだ。
「痛くない……でも、また落ちたら」
「大丈夫だ。その時は俺が受け止めてやるよ、怪我したら治してやる。ほら、勇気を持て。ここで諦めたら都会の連中みたいに怠惰な魔法使いになっちまうぞ」
「わ、わかった。やってみる」
「お兄ちゃん頑張って」
妹の応援を受けて、男の子は自分の足で立ち上がる。
涙で濡れた目元を袖で拭い、顔を持ち上げてフウセンソウを目で射貫く。
「風車!」
魔法は唱えられ、男の子の周りに旋風が発生する。
風は勢いを増して少年を持ち上げ、フウセンソウまであとすこし。
精一杯伸ばした手が、紐のように長く伸びた茎を掴む。
「やった!」
喜んだのも束の間、気が緩んでしまったのか魔法が制御を失った。
流れが乱れ、浮力を失い、男の子は真っ逆さま。
でも、それは想定内のこと。
「よっと」
落ちてきた男の子を約束通りに受け止める。
「言ったろ? 大丈夫だって」
「うん!」
ゆっくりと地面に下ろすと、フウセンソウが妹の手に戻った。
「お兄ちゃん、ありがとう!」
「どう致しまして。気を付けて帰れよ」
泣き顔から笑顔になった兄妹たちの背中を眺めて良い気分。
「よい行いをしましたね、タイガ」
「師匠」
朝焼けに見る黄金色の髪に、青空を思わせる紺碧の瞳。
慈愛に満ちた眼差しは人を解きほぐし、柔和な人格は周囲を明るくする。
例えるなら師匠は日だまりのような人だった。
「フウセンソウを取ってあげるのではなく手助けに止める。自主性を育む良い行いです。褒めてあげましょう。えらい、えらい」
「俺を幾つだと思ってんだ? もう十八になるんだ、そんな歳じゃない」
「あら、ごめんなさいね。でも、私から見ればまだまだ子供です。いい子いい子して上げましょう。ほらほら」
「やめろ! まったく、いつまで経ってもガキ扱いしやがって」
俺の頭に伸びる手から逃げて、すこし距離を取る。
「身長だって俺のほうが高いんだからな!」
「そうね、いつの間にか追い抜かれてしまいましたね。小さな頃の貴方は本当に可愛かったのよ。師匠師匠って雛鳥みたいに私の後ろをくっついて」
「あー! あー! 聞こえない!」
ここに居てはダメだ。
昔話に殺される。
「まったく、からかうのも大概にしてくれよ、マジで」
「ふふ、ごめんなさい」
「じゃあ、いつも通り森で薬草とか取ってくるから。そっちは?」
「オーディルさんのところですよ。ようやく腰がよくなりそうだから」
「あの爺さん、また歩けるようになるのか。いや、なら引き留めるのも悪いな。行ってくる」
「気を付けてくださいね」
「おう」
師匠と別れて向かうのは村の外れにある大森林。
足を踏み入れてから数十メートル先までは村人による間伐作業によって日当たりがよく、逆にそれ以降は薄暗くじめっとしたエリアに分かれている。
採取物は複数あって薬草や毒キノコ、樹液や花の蜜。
これらは調合によって薬やポーションに化け、俺と師匠の生活を支えている。
まぁ、俺の稼ぎなんて高が知れてるけれど。
「しかし、あのオーディル爺さんがな。今年で幾つだっけ? 七十二、とかか」
去年、派手に腰を壊してからもう寝たきりが確定したようなものだったけれど、師匠の魔法で直にまた再び歩けるようになる。
「やっぱり凄いんだな、師匠って」
木の根元に生えた薬草を幾つか摘む。
「それでも追放か」
詳しいことは知らない。
昔にうっかり触ってしまったあの結晶の魔道具は、思い出したくない記憶を忘れたままにしておくためのもの。まぁ、意識的に思い出そうとすれば思い出せるそうだけど、とにかくあの記憶は師匠にとって悪いものだ。
そのことについて聞くことも、他の記憶を覗くことも、憚られた。
それでも結晶に浮かんだ師匠の絶望は察するにあまりある。
「都会なんてクソだな」
思い出しただけでも自分のことのように腹立たしい。
師匠は不当な扱いを受けたんだ、いつかその雪辱を弟子の俺が晴らしてやる。
まぁ、プランなんてまだなにもないけど。
「よし、こんなもんか」
様々な用途に使われる薬草、薄めれば薬になる毒キノコ、軟膏の原料になる樹液、苦い薬を誤魔化すための花の蜜。人口の半分が老人のこの村では、どれも無くてはならない材料だ。
オーディル爺さんだけじゃない。ほかの老人たちもみんな師匠の世話になっている。
この村に師匠がいなかったら、きっと村は存続していなかった。
拾われた俺も。
「ん? なんか騒がしいな」
材料を抱えたまま村に戻ると珍しいことに人集りが出来ている。
「あ、タイガお兄ちゃん」
「よう。まだちゃんと持ってるな。フウセンソウ」
「もう絶対離さないもんな」
「うん!」
赤いフウセンソウが目印の兄妹。
「ところで、この人集りはなんなんだ? 祭りでもないってのに」
「あのね。都会から魔法使いが来たんだって」
「都会から?」
人集りの隙間から様子を窺うと、それらしい格好をした男女がいた。
片方は冴えない顔をした優男、もう片方は気が強そうな勝ち気な女。
対応しているのは村長か。
「おお、ちょうどいいところに。タイガ、こっちに来なさい」
「げ」
村長と目が合い、しようがなく人集りの内側へ。
「こちらは都会から来られた魔法騎士団の騎士様だ」
「上級騎士のリエッタ・ククルエールよ。こっちはロスト・バロエリア」
「リエッタさんと同じく上級騎士です、はい」
「……タイガです」
魔法騎士団の制服を身に纏った、村人とは違った空気を身に纏う二人。
この場所だけ時間の流れが違うような、世界が違うような、そんな気分にさせられる。
師匠を追放した都会の魔法使いがこんな辺鄙な村に一体なんのようだ?
「お二人はフルルリアを探しているようでな」
「師匠を?」
「お弟子さんなの? なら、話は早いわ。私たち、フルルリアさんに会いに来たの」
「……ご用件は?」
「それが申し訳ないんですけど、本人しか話せなくて」
「とりあえず、連れてってよ。あんたのお師匠様のところに」
正直なことを言えば、この二人を師匠に会わせたくない。
都会の魔法使いを見れば、たぶん結晶の魔道具に封じ込めていた記憶が蘇る。
思い出したくないからこそ封じた記憶だ。
出来ればこのままお帰り願いたいが、俺の一存で決められることでもないか。
「師匠は多忙の身ですので、いつ体が空くかはわかりません。確認して来ますので、しばらくは村長の家でお待ちください」
「おぉ、そうだな。それがいい。では、お二人とも、こちらへ」
「え、あ、はい」
「あの! 出来る限り急ぎでお願いね! あんまりゆっくりしてらんないから!」
「そう伝えておきます」
足早にその場から離れて帰路につく。
今頃は師匠も家に戻っているはず。
「どう伝えたもんかな……」
一つだけ確実なのは、この件で師匠が嫌な記憶を思い出すということ。
それが避けられないなら、せめて思い出し方を穏便なものにしたい。
都会の魔法使いとの出会い頭に記憶が蘇るなんてのは最悪だ。
あーだ、こーだ、つらつらと切り出し方を考えていると、いつの間にか家の前。
重い手で玄関扉を開くと、意を決して師匠の元へ向かった。
「都会から……魔法使いが……」
言葉を選んだつもりだったが、悪あがきだったようで、師匠の様子は一変し、よろめいた。
「大丈夫かっ!?」
「え、えぇ、大丈夫ですよ。すこしだけ記憶が混濁しただけですから」
案の定、師匠は記憶を蘇らせた。
思い出したくないはずなのに。
「今更私に接触してくるということは……」
「なにか心当たりがあるのか?」
「えぇ、でもそれは――」
その時、玄関から激しいノックの音が響く。
「た、大変だ! フルルリアさん! 村に魔物が出た!」
「なっ!?」
師匠を椅子に座らせ、急いで玄関の扉を開く。
「その話、本当なのか。カトラ」
「あぁ、ついさっきのことだ。柵を破って入って来やがった。村中大パニックだ。俺は村長に言われてフルルリアさんを呼びに。あの魔物を斃してもらわなきゃ村は全滅だ」
「くそ、間が悪い」
今し方、師匠の記憶が蘇ったところだ。
記憶の混濁のせいか、今の師匠はまともに戦えるような状態じゃない。
「いや、寧ろ逆か」
戦いの最中にあの二人を目にして記憶が蘇るよりは随分とマシな状況だ。
「そうだ、あの二人。都会から来た魔法使いは!?」
「戦ってくれてる! でも可笑しいんだ! 魔法が全然効いてないんだよ!」
「魔法が効かない? なんだよそれ、そんな魔物がいるはず」
「います」
弱々しい声で肯定したのは、壁により掛かりながらようやく立つ師匠だった。
「きっと都会の魔法使いではその魔物を斃せない。私がこんな状態な以上、斃せるのはあなただけです、タイガ」
「俺が?」
「私はすぐによくなります。だから」
「……わかった」
師匠がそう言うなら間違いない。
「カトラ、師匠を頼んだ」
「あ、あぁ」
カトラに師匠を任せて地面を蹴る。
いつもと変わらないはずの道が別物のように見え、変わるはずのない距離が異様に長く思える。胸を内側から叩く心臓の鼓動は激しさを増し、息づかいが死ぬほど荒い。
それでも足は止めず、速度は落とさず、フウセンソウが引っかかっていた木を過ぎる。
「見えた!」
牛の上半身と人の下半身を持つ魔物、ミノタウロス。
棍棒を振り回して暴れ狂うそれと相対する二人の魔法使い。
リエッタもロストも強烈な魔法を放っているが、それを受けているにしては魔物のダメージが少なすぎる。火傷も、切り傷も、弾痕も、出血も、魔法の威力からは考えられないほど軽傷だ。
あれでは何発撃ち込んでも表層を削るだけで命まで届かない。
「本当に俺の魔法で斃せるのか?」
魔法が効かないと聞いてはいたが、まさかここまでとは思わなかった。
でも、それでも、俺は師匠の言葉を信じる。
俺なら出来る、俺なら斃せる。
俺にしか出来ないことだ。
「こんの牛肉ッ! なんで魔法が効かないのよ!」
「リエッタさん!」
「やばッ」
棍棒が唸りを上げて振るわれ、リエッタを襲う。
躱しきれないと見て、魔法の防壁を張るも簡単に打ち砕かれた。
「うそ」
振り上げられる拳、その背後に着弾するロストの魔法。
それでもミノタウロスは止まらず、拳は振り下ろされた。
「包帯」
両腕に巻き付けた包帯から複数本伸びてミノタウロスの腕に絡みつく。
包帯は蛇のように腕を締め上げて制御を奪い、勢いそのものを絞め殺す。
拳はリエッタの直前で止まり、何とか事なきを得た。
「二人とも下がっててください。俺が殺ります」
「あんた、なに言って――」
ミノタウロスの咆哮が村中に轟き、標的がこちらに移る。
姿勢を低く、本来の四足歩行に近い形での突進。
頭から生えた角で刺し殺すための前進を、こちらは包帯で作った蜘蛛の巣で絡め取る。
網に掛かったミノタウロスは体制を崩して転がり、致命的な隙を晒した。
藻掻いて包帯を破って立ち上がっても、もう遅い。
「鎖帯」
包帯が解けて鋼糸となり束ねられて鎖となったそれがうねる。
足下から巻き付いては這い上がり、四肢の自由を奪う。
鎖による何重もの拘束はミノタウロスの膂力を持ってしても千切ることは叶わない。
「なんで……私たちの拘束魔法じゃ一秒だって……」
「あの人は、いったい」
動きを封じ、あとはとどめをさすだけ。
「帯刀」
再び包帯を解いた糸が鋼糸となり、束ねられて刃と化した。
拘束されてもなお、鼻息荒くこちらを睨み付けるミノタウロス。
その瞳に射貫かれながら帯刀を握り締め、剣先で弧を描く。
すっぱりとクビを落とし、ミノタウロスの命を断つ。
その巨体は風に吹かれた灰の山のように、塵芥となって掻き消えていった。
「ふぅ」
帯刀を掻き消し、一息をつく。
「師匠の言う通りか」
俺なら斃せると師匠は断言した。
事実そうなったし、なぜか俺の魔法だけはミノタウロスに通じている。
リエッタとロストの二人は怪訝そうな顔を作り、俺の頭の中もそれと同じだった。
なぜ。三人が同様の疑問を抱いていると、その答えを知る人物が現れる。
「師匠、もう歩いて大丈夫なのか?」
「えぇ、大丈夫。心配ありません。カトラくんの手も借りてますから」
「ありがとな、カトラ」
「いやー、俺はなんもしてないけどなー」
全快ではないにしろ、体調に問題はなさそうだ。
ミノタウロスも斃したし、心配事は片付けられた。
「ティスキス・フルルリアさんですね」
「お話があります」
そうだ。まだ一番厄介な心配事が残っていたんだった。
「えぇ、そのようですね」
カトラに変わって師匠の手を取り帰路につく。
都会の魔法使いを二人連れて。
「単刀直入に言います! エルアルマの街に戻ってきてください!」
「貴女の力が必要なんです、お願いします」
空に茜色が混じり始めた頃、すこし暗いリビングでリエッタとロストは深々と頭を下げた。
「随分と虫のいい話じゃないですか。そっちの都合で追放しといて帰ってこいだなんて」
俺は当事者じゃないけど、それでもちくりと言いたくもなる。
「貴方の言う通りです。申し開きもありません。ですが、どうしても戻って来てもらわなければならないんです」
「もしかしたらエルアルマが滅ぶかも知れないんです!」
「滅ぶ? またそんな大げさな」
「大げさではないかも知れませんよ、タイガ」
師匠の面持ちはいつになく神妙だった。
「タイガが斃した魔法が効かない魔物。正確に言えば魔法に耐性を得た魔物が増えているのでしょう?」
「はい。二十年前、貴女が危惧した通りになりました」
二十年前の危惧。
結晶に封じられた記憶の中で、師匠は三つの危険性を訴えていた。
魔法技術の衰退、耐性を持った魔物の出現、歪みの悪。
そのうちの一つ。
「先のミノタウロスのように魔法が通じない魔物で溢れれば、街の防衛を維持できなくなります。エルアルマの住人を救うためにも、どうかお戻りを」
師匠が都会に戻れば、恐らく解決の糸口になるだろう。
俺の魔法は師匠から教わったものだ。
俺の魔法がミノタウロスに利いた以上、師匠の教えがあれば直に問題ではなくなる。
けど。
「師匠を都会に行かせる訳にはいかない」
「な、なぜ!」
「オディール爺さんは今、立てるか寝たきりかの瀬戸際にいる。ルセットは師匠の薬がないと病気が再発するし、クック婆さんは師匠からじゃないと軟膏を受け取らない。みんな師匠がいないと生きていけない人ばかりなんです」
「だ、だけど、何万って人の命に関わるのよ!」
「なら二人で村中を回って頼み込んでくださいよ。私たちの街のために死んでくれって」
「それ……は……」
リエッタとロストは閉口した。
「タイガ、言い過ぎですよ」
「事実だろ?」
「そうね、私はこの村から離れる訳にはいきません」
「そんな……」
「ですので、代わりにタイガがエルアルマに行ってもらいます」
「は? な、なに言って」
「必要なことはすべて叩き込んであります。タイガなら私の代わりが十分に務まるはず」
「待て待て待て、なにを勝手に。知ってるだろ、俺は都会が嫌いなんだ」
「沢山の人の命が掛かっています。いま動けるのはタイガだけ、だからお願い」
師匠は親のいない俺を育ててくれた母親のような人だ。
真っ直ぐに見つめられてお願いされたら頷くしかない。
「……わかった、わかったよ。降参だ。気は進まないし、嫌だけど、都会にいくよ。それでもいいですか?」
「フルルリアさんに来ていただく予定でしたが、そのお弟子さんが来てくださるならこちらに文句はありません」
「予定とはすこし違うけど、手ぶらで戻るよりずっとマシ! よろしくお願いね、タイガくん」
生涯と言うのは大げさだけど、すくなくとも大人になるまではこの村から出ることはないだろうと思っていたけれど、現実は俺の考えている通りには動かないらしい。
「では、タイガ。あなたが成すべきことを教えます」
夜は更け、一晩明けた翌朝、師匠と村人たちに見送られながら俺たちは都会の街エルアルマへと向かった。
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