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プロローグ

作者自身も車椅子で生活する身障者ですが、車椅子のまま異世界に行ったらどうなるんだろう、という思考で描き始めた物語です。


車椅子という変わったシチュエーションだと思いますが、健常者も身障者も楽しめるような作品だといいな、と。


また、念の為<R15>指定をさせていただいています。

「これで終了っと──」


 とエンターキーを叩いて大きく背伸びをする。


 あ、俺は滝川光(たきかわひかる)。二十九歳。


 大学卒業した年に両親を失い、かつ一人っ子であったがために今や天涯孤独の身。奥さんもいなきゃ彼女もいないという悲しい人生を満喫中。

 仕事はシステムエンジニアをやってる。最近ようやく中流を任せてもらえることになった──んだけど、仕事量は余計に増えた。

 

 まあシステムエンジニアと言えば聞こえはいいかもしれないけど、小さな会社だからシステムエンジニアとプログラマ、テスターをすべてを担当しなきゃいけなかったりもする。

 一週間分に相当する分量の仕事をたった「三日間でやれ」という無茶ぶりな案件を()()()()()()()三日間でやり切った──。


 今年に入ってケロナという新型ウィルスによるパンデミックで完全テレワークになったのは良いことなんだけど、テレワークだからとイミフな理由でちょいちょいとんでもない案件を持ってくるのが俺の勤める会社。


「まぁ相変わらずだよね、うちの会社──」


 ほんと、仕事のきつさ、厳しさにかけてはうちの会社は筋金入りかもしれないと思う時が時々ある。

 今回もどう見ても一週間はかかるよね、という案件をたった四日間でやれ、とか、この間は()()()()()()は(プログラマが)ほしいよね、という案件でも()()()()()とか──。

 ホント思い出すだけでなぜか笑いがこみあげてくるそんな状況だったりもする。

 こんな会社だけど、残業代は全くケチらないんだよね。あと有給消化とかもやってくれるからブラックっぽいところもあるけど、なんやかんやと七年もこの会社で勤めてるんだよなぁ。残業代含めてだけど年収もそれなりにいいから居心地はよかったりもする。

 

 まあ、たまにあきれる上司や見ていてイライラする後輩もいたり、テレワークになってからはそれが色濃く映るんだよねぇ──けどまあ、車椅子の俺を普通の社員と同様に扱ってくれるところはかなりポイント高いところだよね!

 

 さて、今日やる分の仕事も終わったしコアタイムも終了──

 

「ちょっとコンビニに行ってこようかな」


 財布が入っていることを確認したウェストポーチを腰に巻き、車椅子漕ぎ用に使用している指抜きの革手袋を手に着けて玄関で靴を履き、玄関に取り付けている車椅子用のリフトで玄関の段差を降りてドアの鍵を解除してドアノブを回そうとしたときにちょっと軽い目眩のようなものを感じた──けど、気にせずにドアを開けて外に出た。

 

「な、なんじゃこりゃあ!」


 そこは俺の住んでるマンションの廊下ではなく、なぜかだだっ広い草原。辺りは草で緑一面。

 

「えーと──」


 とりあえず振り返ってみると、そこには俺の部屋が──そして再度玄関から外へ振り返ってみると緑一面のだだっ広い草原──。

 

「えっと、一旦部屋に戻るか──」


 俺は一旦部屋に戻ってドアを閉める。そして再度ドアを開ける。やっぱりそこはだだっ広い緑一面の草原。

 

「どゆこと?」


 頭を抱えそうになる状況。ドアノブが手からスルッと抜けて閉まる音がしたので慌てて振り返ると、そこにあるはずのドアもマンションの壁もなくてだだっ広い草原が目の前に映っている。

 思考回路が停止──いや、考えろ。考えてもどうしようもないかもしれないけど考える。更に考える。とことん考える──。

 何やら頭から「シュー」と空気が抜けるような音がしてもう訳わかんなくなってる俺。

 

 こういうのってさ、ファンタジー系ラノベなんかに出てきそうだな──。

 

「異世界ものラノベかよ!──いや、とりあえずここは念じてみるか」


 半分やけくそでとりあえず玄関のドアを思い描いてみる。そしてダメ元で目を開けると、そこにはマンションのドアがあった。


「えーと……もしかして、これは異世界に行き来し放題ってこと?」


 ピンポーン!


 突然頭の中に()()()()()が鳴った。

 そして、目の前にこれまた突然半透明の不思議な画面が出てきて、しろいろで文字やら数字やらグラフやらが浮かび上がった。


 つか、これどうなってんの?

 つか、これ開発した人、まさか神?


 ピンポーン!


 また頭の中でチャイム音が鳴った。

 目の前の半透明の画面に『その通り、神が作ったモニターです!』と若干黄色がかった文字が浮かび上がる。


「マジか──」


 『マジです』


 今度は青く大きな文字が出てきた。


 神様っているのか──


 そんなことをふと思ったところ、


 『神はいます!』


 とまた黄色い文字が浮かび上がる。


 えっと、もしかして監視されてたりする?


 『大丈夫です。()()なんてしてません』


 これって…‥監視されてるってことだよね。


 『大丈夫です、監視したくても()()()()()できません』


 システム上できないだけで監視する気満々やんか。

 

 何見えない人(文字)となんで漫才してんだ、俺──


 監視されてるのはもう良いとして──いや、良くはないけど──とりあえず、本当にこの目の前のドアの先が自宅なのかを確認しなきゃな。


 鍵かけてないのになぜか施錠されているドアを開錠して開けてみる。すると普通に俺の家だった。

 

 まぁ鍵が同じだったってとこで気付けよ、俺──

 

 マジで異世界と現実世界とを行き来し放題は、こりゃ良いかもしれない!


 つーか。これってある意味チートなんじゃね?

読んでいただきありがとうございます。


車椅子って不便に思えるでしょう。

実際不便ではありますが『不憫』ではないんですよ。

言い換えれば『車椅子』は我々の『足』なのです。


また、「車椅子の人を見たら押してあげましょう」

なんて教育をしている小学校の先生もいらっしゃるようですが、これは『ありがた迷惑』でしかないものです。

実際車椅子に乗っていただくとわかると思うんですが、いきなり後ろから押されるのって恐怖以外の何物でもありません。

ですから、車椅子の人を見かけた時、その人が困っているようなら「手伝いましょうか?」と声をかけていただけると幸いです。

また、助けてほしい旨のアクションや声を耳にされたらお手伝いいただけると嬉しいです。


後半、道徳的な後書きになってしまいましたがこの点ご留意いただけると、われわれ車椅子ユーザーは暮らしやすくなりますのでよろしくお願いいたします。


また「助けてほしい」旨の声は車椅子だけではありません。これは全ての身障者、健常者にも当てはまることであることも一言付け加えさせていただいて、プロローグの後書きとさせていただきます。


最後に、ご意見、ご感想、誤字脱字指摘等いただけると励みになります。

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