幕間1 信じていた件
【前回のあらすじ】
黒幕を前に何もできず、夢葉とレアを失った件
音もなく落下していく自分の体。
胃がひっくり返るような感覚とはためく髪。
引力には逆らえず、どんどん周りは暗くなっていく。
零れ落ちる涙だけが、引力に逆らう。
目から溢れる涙は、宙に取り残され、自分だけが落ちていく。
そして私の心の中は、ただ苦しさだけが取り巻いている。。
信じていた人に裏切られた。
その事実が、心をキュッと締め付けてくる。
男が光くんの精神的な弱さに付け込み、私の知らない彼のトラウマを刺激し、マインドコントロールのようなことをしたのは分かっている。
分かっているけれど、彼から向けられたあの瞳。
冷たく、恐怖が入り混じり、何を考えているのか分からなくなるような、黒い瞳。
私の前から彼が消えてもなお、その瞳だけは網膜に映し出されていた。
底なし沼のような、永遠に続く落下。
下に落ちるまでまだ続くのだろう。
自分の胸元を強く握りしめる。
こんなに苦しい気持ちになったのは、初めてだった。
何が悪かったのだろう。
信じてもらうにはどうしたらよかったのだろう。
どうして私は夢で生まれたんだろう。
――どうして、生まれてしまったのだろう。
暗い疑問が心を包み込む。
明るい気持ちになんて、なれるはずもなかった。
もしかして、これが男の言っていた、夢の住人と人間の違いなのかな。
私は、間違ったことをしたのかな。
ううん、これじゃだめ。
こんなことで、諦めちゃいけない。
私が諦めたら、その時は本当に、世界が終わってしまう。
脳裏に浮かぶのは、やっぱり光くんの姿。
彼があの日、私に協力をしてくれなければ、私は一人でも戦っていたと思う。
そしてたぶん、呆気なく負けていた。
だからあの日、私に協力してくれると言ってくれた時はすごく嬉しかった。
その気持ちは絶対に嘘じゃない。
だからこそ、辛い。
苦しい。
信じていた人に、裏切られるのは。
……こんな経験を昔にしたことがあるような気がする。
光くんと会う前に。
けれど、私は夢の中で生まれて以来、光くんと出会ったのが初めてのはず。
じゃあ、このもやもやは一体……。
そんな風に考えていると、暗闇が一瞬にして真っ白に染まった。
私はその明るさに、思わず目を閉じた。
しばらく経つと、落下する感覚が消えていたため、私は恐る恐る目を開いた。
そこは何もない、白い世界。
一体ここはどこなのだろう。
すると、私の他にもう一人、この場所にいることに気付く。
そして私は、その人物を見て目を丸くしたのだった。




