第27話ビリビリ大作戦
よろしくお願いします。
8月4日
時刻は11時半、僕たちは今ディープスレェトゥンとグール達が寝ぐらにしている入り江前の港に来ている。
「海、黄色いね……」
青い海に期待していたのか少し残念そうなヒナ。
「この黄色い海が奴等の巣に成っているんだ……」
僕たちが海に近づいても奴等が出てくる気配はない。予想通り日中時なら奴等は地上に出て来れないのだ。
グールは陽の光に弱く、日中なら遭遇したとしても今の僕ならたいして脅威ではない。
グールたちがいるであろ入り江は、黄色い謎の物質で汚染されている……
原理は分からないがきっと、この黄色い物質で海を汚染する事によって太陽光を遮り、ディープスレェトゥンやグールが暮らせる環境に海を変えているのだと思う。
「コイツらを誰が連れてきて何をさせようとしているのかなんぞ知った事じゃない、ケリはつけさせてもらうぜ!」
僕らは事前に町中を回ってある物を大量に持って来ていた。
それは長さ10m程のワイヤーや、ドラム式の延長コードなど電気が通りやすいケーブルだ。
ドラム式の延長コードなどはだいたい20〜30mは有るため便利だ。
それをあらかじめ繋いでおき、所々の皮を剥いて銅線を露出させておく。そしてそのケーブルを50m程の入り江を覆う様に敷いていく。
そのケーブルを300m程離れた役場に有る発電器に繋げるのだが、これは運良く村の電気屋さんで100mのロング配線を3束見つけた事で可能と成った。
この役場にあった発電機は災害時用に用意された大型の物で、燃料補給無しで24時間は持つ優れ物だ。
燃料はこの村唯一のガソリンスタンドから頂戴してきている。
ついでにその余った燃料で火炎瓶をしこたま作っておいた。ボロ切れと空き瓶さえあれば幾らでもつくれる。
これも今夜の作戦に必要なアイテムだ。
これらの作戦は全て、ヒナの案と技術によって成り立っている。
なんでも作られる際にインプットされた情報の中に配線関係や罠、武器作成のものも含まれいただしい。
町の電気屋さんも顔負けの知識と技術に脱帽だ。
ヒナは僕の危機の際の活躍もあり加速度的に成長している様子、これで生まれてまだ3日だっていうんだから、本当に頼りになる相棒だ。
ここまでの準備に丸一日かかり今は午後の5時だ。途中からヒナは休ませており、疲労困憊の中僕1人で頑張った。
もちろん作業中の水分補給は忘れずに取るようにした。
日陰で休ませていたが、起きたヒナが「頑張れ〜!」と応援してくれてそれが張り合いになる。
そしてゲートには学校の避難時の脱出用としてあった縄梯子を予備として吊るして置いた。夜と共に閉じるゲート対策だ。
これで準備は万端、整った。
「よし、決戦前に腹ごしらえするぞ!」
「おう〜!」
役場の調理室をお借りして水道は使わずペットボトルの水で湯を沸かす。
2人が食べるはもちろんカップラーメンだ。
どうやらヒナはカップラーメンとアイスにハマってしまったらしい。
今回はカップヌードルで僕が醤油味、ヒナがシーフードだ。ヒナにはもっとちゃんと栄養のある物を食べさせたいが、今は仕方ないだろう。
「この長いのもカップラーメンなの?」
「そうだよ。これもお湯を入れて3分だよ」
「ええ〜、でも仕方ないから待つ」
まんじり待つ事3分、ヒナの顔に笑顔が広がる。
「ラーメン、ラーメン、」
本当にこの子は喜怒哀楽の表現が多彩で、見ていて飽きる事がない。
「優畄のも味見させて」
「うん、いいよ」
ヒナが僕のも欲しいと言うので仲良く分け合う。
そしてデザート。今回のアイスはハーゲ○ダッツのストロベリーとグリーンティー。まさかこんな村のスーパーにハーゲンさんがいるとは思わなかったよ。
ヒナはハーゲンさんの美味しさに体をくねらせて喜んでいた、本当に可愛い娘だよ。
その仕草の一つ一つに癒される。もちろん僕のアイスも欲しがったので分けてあげたのは言うまでもない。
食事を終えた僕らはそれぞれの持ち場につく。
僕は腰に村の金物屋で手に入れたナタをぶら下げて、ヒナはブルドーザーに乗り臨戦態勢にはいる。
そしてグール、ビリビリ大作戦(ヒナ命名)は決行されたのだ。
ありがとうございました。
 




