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194話 再会


「【コメットストライク】で〜ス!」


ボブが押し寄せる死者の群れに必殺技の【コメットストライク】を放ち蹴散らして行く。


今黒石の地は、黒石の闇が地表を多い尽くした事で地獄の門が開き、阿鼻叫喚の地獄と化していた。


そこから溢れ出た瘴気に侵された人々が生きながらに腐りアンデットとなり、辺りを徘徊している。


そんな中をボブと千姫の2人は、生き残っていた者達を助けて、瘴気の及ばない高次元の世界に避難させているのだ。


本来アンデッドは【ゾンビキング】のボブの配下なのだが、黒石の闇による汚染の影響でボブには従わない。


まあ、腐って腐臭漂うゾンビに好かれても迷惑なだけだろう。


今回も生き残った者を助ける為と彼等の食糧を得る為に外に出たボブ達。


ボブは【ゾンビキング】のおかげでゾンビに噛まれても問題は無い。千姫も結界内からサポートをしている為問題はない。


今回訪れているのはかつてお世話になった精神会館るせ。


近くのスーパーから食糧を補給していた際に争い合う音が聞こえて来たのだ。


精神会館は鬼の襲撃を受けて常に結界を張ってある状態だったため、中の人々が地獄の瘴気に触れる事なく助かった。


そして精神会館の人々がアンデッドの大群に襲われている所に助太刀に入ったボブ達。


ボブがアンデッドを退けると、すかさず千姫が強力な結界で精神会館を覆う。



「ボブさん! 千姫さんも! 2人とも無事だったのね」


加奈や兵吾、他の師範代達も無事な様で、アンデッドの大群を退けたヒナ達に走り寄る。



「オウ、加奈殿に兵吾殿、皆が無事で良かったで〜ス!」


「この建物周辺には死者に対して絶対耐性の結界を張っておいたから安心するのじゃ」


「千姫さんありがとうございます」


「いいのじゃ、何の問題もないのじゃ」


久しぶりに会った2人は手を繋ぎ合い、お互いの近況を話し合う。精神会館に居た頃はほとんど狸の花子状態だったため、千姫状態の彼女とはあまり面識はなかったが、久しぶりに会った女子にそんな事は関係ない。


まるで昔からの友達だったかの様に話しが盛り上がる。


一方ボブの荒々しい戦いを見ていた兵吾老が彼に歩み寄り語りかける。



「ボブよ、お主、しばらく会わぬ間にデタラメな強さになったのう。もうワシじゃあ足下にも及ばんワイ」


「そうで〜スか? 気のせいだと思いま〜ス」


基本能天気なボブは自身が邪神をも超越した強さになっている事に気付いていない。


使える様になった大技も、「いつの間にか使える様になったラッキー」程度にしか思っていない……


まあそこが彼の良さでもあるのだが。


「…… お2人は康之助さんは知りませんか?」


密かに康之助を想っている加奈は彼の事が心配なのだ。


「すみませ〜ン、優畄達と戦っている所は見たのですがァ、その後は……」


「そ、そんな優畄君達と康之助さんが……」


優畄もヒナも康之助も、彼女にとっては大切な人達だ。その大切な人達が戦わなければならない現状に加奈は落胆を隠せない。


「まったくあの馬鹿者が、優畄達の事は任せろと言うておったのに……」


自分達の力では彼等の力にはなれない。兵吾が無念そうに溢す。


「彼奴も太陽神の加護を持つ御子じゃ、そう簡単には死なんじゃろう。


「今はァ彼等のォ帰還を待つのみで〜ス。彼等なら必ず戻って来るはずで〜ス!」


ボブと千姫は彼等の安否を信じて止まない様子。


「千姫さん、これから世界はどうなってしまうのでしょうか?」


「…… あの闇は未だに膨張を続けておる。このままではこの日の元の国はおろか、世界全体が飲み込まれるじゃろう……」


「そ、そんな……」


闇の膨張は加速度的に進んでいる。千姫の言う通り、このままでは日本はおろか世界を犯し、闇の時代が訪れるだろう。


「そうはさせませ〜ン。優畄達がァ帰還するまでェ、私ァしが皆さんを守るで〜ス!」


そしてボブは今では太陽の代わりに天に瞬く巨大な暗黒球を見やる。その暗黒球からは全ての生を貪る暗黒の波動が放たれており、まるで彼を挑発する様に波動を触手の様にうねらせている。


それを見て悔しそうにボブは拳を握る。攻撃力特化の彼ではあの闇を払う事は出来ない。それが悔しいのだ。


そんなボブの肩を叩き、千姫が彼を励ます。


「案ずるなボブ、何事にも相性というものはある。我等は救える者を救って、今は待つのじゃ」


「分かっていま〜ス、花子、分かっているので〜ス……」


ーー


次元の狭間の暗闇の中、体感にして更に200年の時間が過ぎただろうか。


【ン.グア.エポス】との戦いのおりに吹き飛ばされた康之助は、体力を温存するために体の力を抜いた状態で亜空間を漂っていた。


「……」


考える事は離れ離れになってしまったイーリスの事。彼女が無事ならばそれでいいのだ。


このままでは自分は助からないだろう。それでも彼女だけは、彼女ならこの時間軸のズレた暗黒の無限世界から抜け出せるだろう。


康之助は絶望の淵にいた。先の戦いでのダメージはすでに癒えている。


それでも優畄の導きからそれてしまい、外界での1時間が1年にも数年にも感じる狂った世界。


この永遠に続く闇の中で生き抜くのは、彼程の精神力を持ってしても限界なのだ。


そんな彼の意識が深い深い暗黒の底に沈もうとしていたその時、どこからか聞き覚えのある声が響いて来る。


「…… こう……の……」


康之助は閉じていた瞳を開けた。すると輝いばかりの光が彼に近付いて来るのが見えた。


「……あ、あの光は……」


どんどん光が近付いて来る。それと共に声もはっきりと聞き取れる様になって来た。


「…… 康之助…… 康之助……」


「…… い、イーリス……」


光は人の姿へと変わり、その顔もはっきりと確認出来る様になった。


「康之助! 康之助ぇ〜!!」


そしてやっと実体の無い精神体の彼女が康之助に抱きついた。


「あ、おお…… イーリス。俺の女神様……」


「康之助! 私の王子様…… やっと辿り着けた」


互いに触れ合う事は出来ないが、気持ちは通じる。


2度の分かれと再会。立場は逆になったが彼等は再びお互いを探し出す事に成功したのだ。



「でもイーリス、何で…… せっかく出口が見えていたのに……」


康之助を探すために彼女も光の導きから逸れてしまった。これでは共倒れになってしまう。


「大丈夫よ康之助。光の導きへの道標は残して来た、だから帰りましょう」


そうイーリスは迷ってもまたゲートに戻れる様に、道標を残しながらここまで来たのだ。


「成程、小さな恒星【ホルス】を創り出して道標に残して来たのか」


数千キロ単位で道標の【ホルス】が瞬いている。この【ホルス】は光を発する為だけに作られたものでも小さな恒星だ、1000年単位なら余裕で保つ。


これでどれ程掛かるかは分からないが、確実に出口のゲートに辿り着けるだろう。



「よし行こうイーリス」


「ええ、今度こそこの地獄から脱出しましょう」


2人は出口のゲートを目指して進み出した。



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