第12話素晴らしき力
よろしくお願いします。
「グッガアァァァァ!………」
優畄はその場に跪くと体を捻る様に流れる暗黒の激流に耐え続ける。マリアが「お兄様!」と優畄を気遣いその背中を摩ってくれる。
身体中から汗が滝の様に滴り落ちていき、身体中に引き裂かれる様な激痛が続く……
そしていかほど経っただろうか、徐々に優畄の体を蝕んでいた暗黒の波が引いていき、彼の体に新たな力が芽生えたのが分かる。
「ハア、ハア、ハア……」
「黒石の者でも授皇伎倆の儀の時には気を失ったり悪くは発狂、最悪は死に至る者も居たこの儀式。それに見事耐え抜く…… 流石はお兄様です」
見た目に似合わず、なんともトロンとした酔った様な目で僕を見つつそう言うマリア。
少しハアハア言ってるし……
そんなマリアに僕はなんとも複雑な気分になる。
「で、どうじゃマリア。優畄の授かった力はどの系統のものじゃ?」
「お兄様の系統は変化、それもお爺様と同じ獣器変化ですわ。それにこれは……」
マリアがまだ何か言いたげだったが、お爺ちゃんが脇入りする。
「おおそうか!ワシと同じか!でかしたぞ優畄!!」
「えっ、は、はい……」
(なに、そんなに凄いの?)
お爺ちゃんが嬉しそいに僕の背中をバシバシと叩いてくる。
後から聞いた話によると、授皇伎倆なる儀式で授かる黒石の能力には変化、目術、万能の三系統が有るだしい。
それは、かつて石が3つ有り、それが一つに融合したからだという説もあるが、確かな答えは誰にも分からない。それが世の中の常なのだ。
僕が授かった獣器変化は変化能力の系統に入る。
そして変化の能力は総じて戦闘特化の能力だ。
僕の獣器変化は、身体を獣に変化させる攻撃特化の能力で、段階的に腕や足、頭や体などを自由自在に変化させられる様になる。
それは質量や体積の概念に囚われない変化で、初めは犬や猫、馬や熊などの野獣にしか変化出来ないが、種類は個の段階が上がるごとに増えていく。
段階によって野獣、妖獣、魔獣、聖獣、と変化出来る種族が増えていき、最終段階まで極めれば伝説の神獣や霊獣の龍種にも変化する事が出来るのだ。
ちなみにお爺ちゃんは最終段階まで至っており、神獣変化も出来るとかなんとか。
同じ系統に武威変化と言う、体の一部を自由自在に刀や槍、鈍器などのシンプルな武器に変化させられる能力もある。
これも段階により、武器の強度や切れ味が上がっていく能力だ。最終段階になればダイアモンドですら容易に切り裂く無双の槍にも、全ての攻撃を弾く無双の盾にも変化可能だ。
三系統の2つ目はいわゆる邪眼系の能力で、魅了眼や傀儡眼、鑑定眼などがあり、中には相手を見ただけで呪い殺す黒死奪眼なる恐ろしい能力も存在する。
3つ目はいわゆる万能型と言われる火、水、土、風などの自然界に有る四元素を扱える能力だ。
この万能系はいわゆる魔法とは違い、自然界の四元素が無い場所では行使出来ない。
例えば火がない場所では火殲術は使えず、水の無い場所では水躁術は使えない、と使い用途の悪い能力なのだ。
この能力は黒石家ではハズレの能力とされており、一族間での扱いも総じて軽んじられる。
あのピザデブ兄弟が軽んじられていた理由が分かった。
それでも黒石の直系の者なら万能系でも他とは一線を記する。
だがそのハズレの中にも森羅万象統御術という、世の中の全てを統べる伝説の能力も存在する。
たまに三系統のうちの二系統の能力を授かる者もいるというが。
これ全てマリア先生のご教授で知り得た情報だ。
(やっぱり今回の新しいお兄様は完璧ですわ。獣器変化に加えてあんな隠し球まで持ってるなんて…… これは楽しいことになりそうですわ)
『ギギギ………』
マリアが喜んでいるのが分かるのか、ドゥドゥーマヌニカちゃんも心なしか嬉しそうだ。
ありがとうございました。
 




