第11話授かる何か
よろしくお願いします。
今度の移動は黒石家現当主のお爺ちゃんと何故かマリアも一緒だ。
(お爺ちゃんは分かるけど、なんでマリアちゃんまで一緒なんだ?……)
「お兄様、マリアが付いていますから大丈夫です。安心してください」
トトトッと優畄の横に駆け寄ると、手を繋いでくれるマリア。一瞬マリアが抱く人形の目が赤く瞬いた様に見えたが、気のせいだろう。
(何が大丈夫なんだろう?)
なんでも、これから向かう場所には黒石の根底を支えるある大切な何かがあるだしい。
そしてなぜか、当主候補筆頭になっている優畄にとっても大切な場所だしいのだが……
そしていつもの如く、グニグニと幾多の廊下の角を曲がり、階段を上がり下がりして、地下への螺旋階段を100段ほど降りた先の祭壇の様な広間にその石は有った。
(……この隠されている様な複雑な場所も場所だけど、あ、あれは……石? なんて禍々しいんだ………)
優畄の人並み強い第六感が告げている。アレはヤバい物だと、人が決して触れてはならない禁断の物体であると……
闇を凝縮した様な真っ黒な石、その石を見て優畄は悟った。そうこの漆黒の石こそ、黒石家の名の根源となった物だと。
空より到し'【甚黒魔皇石】。
大きさにして直径5mのほぼ完璧な球体で、どうゆう原理か台座から少し浮いている。
この石は宇宙空間を漂う太古の邪神の魂とも、ブラックホールが消滅した際に生まれた凝縮された闇ともいわれ、正しい経緯は知られていない。
「この漆黒の石は我等黒石家の根源、全てはこの石から始まったのじゃ」
「こ、この石から……」
なぜか体が震えて止まらない……
優畄の心は、霊力は、この石に恐怖しているのに、黒石の血を引くこの体はこの石に共鳴している。
そうこの屋敷に来た時に感じた違和感の正体はこの石だったのだ。
この石と相異なる霊力がぶつかり合う事で不協和音が生じ、彼の体内でせめぎ合いぶつかり合いあっていたのだが、この石の影響をもろに受けるこの屋敷に来た事で霊力が薄まり力の均衡が解けたのだ。
マリアが気遣う様に優畄の手を握ってくれる。
マリアに手を握ってもらっているだけで、優畄は不思議と落ち着きを取り戻していく。
(なぜだろうか、心が落ち着いていく……)
ここに来る前にマリアが言っていた、私が居るから大丈夫の意味を理解した。
「さあ優畄よ、この石に触りお前の中に眠りし黒石家の力を目覚めさせるのだ!」
「ぼ、僕の中に眠りし力?!」
「そうじゃ! 我等黒石に仇なす者共を退ける力。南山不落の力をへてこの黒石家に更なる繁栄をもたらすのじゃぁ!」
いつもは泰然自若としているお爺ちゃんが、異様な興奮状態で話す。
昔の黒石の者は15歳で成人を迎えていた。そのため、この儀式は黒石家の者が15歳になった時に行う。
偶然か優畄も15歳、きっと今回の顔見せも、この儀式のために呼ばれた計らいが大きい。
「これより授皇伎倆の儀式を取り行う。マリア石を起動させるのじゃ」
そしてお爺ちゃんの合図でマリアが石に手を当て石に力を注ぎ始めた。
ここにきてマリアが着いてきた本当の理由が分かった。
マリアはこの屋敷の維持と管理を担う者。この石の起動にも彼女のなんらかの力が必要なのだ。
マリアは石に力を注ぎ込み終わると手を離した。すると石が禍々しく黒光りし始めたのだ。
そして何か強大な力が石から解き放たれていく。
普通の状態の石でも近くのがやっとだったのに、マリアが石を起動させてからは桁違いだった。
並みの人間ならば見ただけでも発狂し、近づきでもすれば狂い死ぬこと間違いなしの暗黒の激流の中、優畄がなんとか立っていることが出来るのは黒石の血のおかげか。
「この石の起動はマリア様にしか出来ません。さあ優畄様、この石にお手をお乗せください」
無謀にもボーゲルがこの石に触れと言うのだ。
「こ、この石を触るのか……」
周りの状況から断る事はまず不可能だろう。優畄は覚悟を決めると、震える手でこの石に触れた。
「ガッ!……」
途端に優畄の体の中に流れ込んでくる漆黒の闇、暗黒の激流。彼の身体が悲鳴を上げて身体中の血管が浮き上がる。
手を離そうとしても離れない…… 暗黒の激流は優畄の体の隅々に行き渡り、彼の中の眠りし力を覚醒させていく。
ありがとうございました。
 




