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サキと子雀

作者: 竹宮小央里

 両親の初孫であるサキは、二〇二〇年五月で十歳となり、時折会う度、成長の目覚ましさに目を見張るものを感じる。


幼い頃、母に守りをしてもらっていたせいか、人に対する優しさや思いやり、言葉の使い方が母にそっくりである。


「小さい頃、ようちゃんと遊んでいる時、本当に楽しかったよ。」自分を決して孫たちに、おばあちゃんと呼ばせない母である。


サキは言った。ようちゃんと、朝の保育園バスを待っている時、ジャンケンをして、勝った方が グリコのおまけ、チョコレート、パイナップル。文字数の歩数だけ歩いて、目標まで先に到達した方が勝ち という遊びである。


その遊びでは、百パーセント サキが勝ったという。


自分が勝ちそうになると、母は数センチずつ進んでサキが勝つのを待った。


そしてサキが先にゴールすると、「サキ、バンザイして。」と言って、サキに万歳三唱をさせ、「優勝!優勝!優勝!」と言いながら、サキのそれぞれの手を両手で引っ張り上げて、三度目に上へ思いっきりサキを飛び上がらせた。


「キャー!キャー!」とサキは大喜びしたという。


子供の心に、満足感や達成感を与えるには、良い方法だと私は思った。心の満足感こそ、子供自身の心身の成長につながるということを、私は信じている。


 サキはそしてさらに、その時ケンケンパや、スキップも母に教わったという。


さらにサキは語る。「保育園から帰って、じいちゃんの畑へ行く途中、スズメの赤ちゃんが道路で動いていたんだよ。」


その小さな黒っぽい塊をサキは「ネズミだ。」と言ったという。


「サキ、これはまだ飛べないスズメの子供だよ。」そう母が言うと、車に轢かれない様に母は被っていた自分のキャップで道路の隅にそっとすくって田んぼのあぜ道の草むらへ置いてあげたという。


「ようちゃん、あのスズメどうしたのかな?」とサキが尋ねると、「あの後にね、スズメのママが探しに来て、一緒にお家に帰れたんだって。」と、母は答えたという。


そして、そのあくる日も、またサキがスズメの事を尋ねると、「あの子スズメさん、よく飛べるようになって、友達と学校へ行ったんだって。ほら、電線にスズメがたくさん止まっていることがあるでしょ。あれが、スズメの学校なんだって。」


母はそう言って、実際にスズメの止まっている電線を指さして見せた。


 そして、調子に乗って、『デンセン音頭』を歌って踊ったそうだ。


その話を聞いて、私は思わず吹き出した。母はどこまで、突っ走ったのだろう。


自分のテリトリーだからといって、爆走も甚だしいものがあると思った。


そして同時に、母はずっと保育士として働いていたかったのではないかとも思った。


きっと、それが彼女の天職で幸せだったのかもしれないとさえ思った。


ちなみに、サキが保育園で『デンセン音頭』を歌うと時、「そんな歌知らない。」と言われて、信じられない思いをしたという。

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