第七話 探し人は『あしたば』
やっとこさ夢をみた!
夜の多分21時過ぎに布団に転がってると意識が飛び、ハッとして眩しい電気に当てられて、
午前3時。
買っておいたスケッチブックに箇条書きでメモをする。
「やっぱりみれた!!」
近いうち見れると思っていたけど、
その日の内に見れるとは思わなかったです。
「ウ魔すみ!」、また動き始めます。
「くそっ!なんなんだコイツ…」
哲夫が息を切らし根をあげる。
何度もスキル:瞬間火力を使っているというのに全く効いている様子がない。
相手の頬を何度も殴っているのにまるで岩を殴っているかのような……
スキル:瞬間火力を使って殴れば、
木ですら倒せるというのに、
目の前の薄ら笑いをうかべるコイツには全く効いていない。
それどころかわざと哲夫の攻撃に当たりに行きつつ、カウンターでじわじわといたぶってくる
「あぐっ」
腕が、膝が熱い。
「おやおや、もう限界かい?最初の威勢はどこにいったのやら。」
「もうやめて!!」
アリサが哲夫と名も知らぬ少年の間に割って入る。
足も震えている癖に、無理しやがって。
「でも結局無駄足も無駄足だったなぁー。折角オロラントまで遠路はるばる来たってのに。モイモイスまで行かなきゃかなー…」
「…お前は何がしてぇんだ。」
「へぇ、立つんだ?」
正直もうクタクタだ。
切り傷や擦り傷を全身に。
骨の一本でも折っちまえば泣いて詫びてくるかと思えば、
軽くいなされ、横から間接を外された。
最初っから勝ち目なんて無かったのか…?
「まぁ、ただのガキにしてはよく粘るほうかなぁ。勇気の紋章も無いってのに。」
嫌みな笑い方をしながら服の襟をはだけさせる。
左の鎖骨の下辺りに青い紋章が刻まれている。
「それが、勇気の紋章……?」
いや、それにしては禍々しい歪な形をしている。
「違うよ。俺はさぁ、魔王の直系。アルブフレオ。いずれこの大陸を、世界を掌握するんだ、覚えておいて損は無いよ?」
一瞬目を奪われた。
圧倒的な力にではない、その魅力に
「……馬鹿馬鹿しい。」
「なんだと?」
「その通りだ。」
見知った声。
この声は確か…
「魔王になるのは主ではない、ワシじゃ!」
さっき俺の木剣をへし折ったガキ。
パキッ
一瞬。
何の音かと思った。
辺り一帯に渇いた音が響く。
音が響くと同時にさっきの木剣を折ったガキの拳がアルブフレオの頬を捉えていた。
渇いた音の後から遅れて、瓦礫を掻き分けて飛ばされるアルブフレオが地を擦る音。
瓦礫から這い出て、アルブフレオが叫ぶ。
「お前か、お前だなぁぁ!!」
そう言うアルブフレオは口から血が伝っていた。
「お前、ではない。マオだ。」
先程までアルブフレオが座っていた所に一瞬で移動したマオは仁王立ちをし、やれやれとばかりにため息をついた。
ニヤリと笑うとアルブフレオは渦巻く突風を纏いマオに向けて突進する。
それを素手で軽く受け止めるマオ。
「ただのガキんちょ相手に力をひけらかして、カッコ悪いとは思わぬのか」
「同じ魔王候補を探すのにはこれが一番手っ取り早いんだよ!」
コイツら…俺の時は全く本気じゃなかったって事だ。
胸糞悪い……
この闘い、
マオが優勢かに見えた。
しかし、途中から目に見えてマオは防戦一方になった。
でも気付いてしまったんだ。
「おい、アリサ。ジロウ。お前らは先に帰ってろ。お前らが邪魔になってる……いや、俺もか」
後半は声は細く苛烈な戦闘から足手まといを退場させる。
アルブフレオは風を身体に纏って攻撃をする度に風の衝撃がマオを直撃する。
というより、直撃せざるを得ないのだ。
奥の射線上に俺やアリサやジロウがいるから。
「くそっ!なにが戦士になる、だ。バカにされて、守られて、足手まといになって」
……最悪だ。
自分とアリサとジロウが完全にアルブフレオの射程外に出たであろう頃、
アルブフレオの攻撃の衝撃が止んだ。
急いで、基地の跡地に向かう。
「あ、てっちゃん!」
「あぅ!」
きっとマオが自由に動けるようになって戦況が覆ったのだと、
そう思い勝手に足が動いていた
このまま逃げて終わりではすまなかった。
せめて一言。
気にくわないが、助けてくれたマオとかいうやつに「ありがとう。」とそして「次は負けない」って誓いの言葉を
こてんぱんにやられたアルブフレオの想像しながら、細い路地を曲がる。
「え?」
勝つと思っていたマオはアルブフレオに頭を踏みつけられながら、地を這っていた。
「なんだぁ?魔王になるんじゃなかったの?人間のガキなんか庇いながら戦っちゃって…」
「…弱いやつからは奪っちゃいけないって……あ、したばが……」
「んー?あしたばぁ?誰だよ、それ。」
マオを踏みつける足をグリグリと動かし、痛ぶる。
「うっ」
痛みに苦悶の表情をするマオ。
「ハッ!世の中は弱肉強食!弱いやつは奪われる、自然の摂理。わざわざ弱者を護るだなんて…バッカじゃねーの?」
自分の頭をツンツンと叩きながら踏みつける足に力を入れるアルブフレオ
「あし、たばを!!バカにするなぁぁぁぁあ!!」
一瞬マオが立ち上がるかと思えたが、
アルブフレオの一撃がマオの背中に叩き付けられる。
「がぅ……」
最後の力を振り絞ってしまったのか、涙を流しマオの動きが止まった。
「くそっ。見た目はなかなかだったから従属するんなら可愛がってやろうかと思ったのによ、気絶しちまったか。」
マオの髪をグイッと持ち上げ顔を眺める。
「どーしようかなー。俺って紳士的だから同意の上で無理やりってのは、ちょっとなぁ……」
そういうアルブフレオの表情は嫌らしい笑みで溢れていた。
「おい!」
足が震えて路地に行けずにいた哲夫がびくりとする。
今度は知らぬ大人の声。
「あぁ?なんだよ、ゴドス!俺ぁ今お楽しみ中なんだよ。」
「やっと見つけたぜ…ここのヤツラと話つけに行くんだよ!お前も来てくれ。」
体躯のよいスキンヘッドの大男はゴドスというらしい。
「はぁあ?俺、今忙しいんだけどぉ?」
「なんだ、その子供は」
「あぁ?これな、俺の新しいおもちゃ」
「お前の事にはあまり口出ししないが、こっちのが急ぎだ。そのかんじなら行って戻ってきても目は覚まさねぇだろ。ほれ」
ゴドスは縄をアルブフレオに投げると
「とりあえずこれで縛っとけよ。すぐ終わらせてまた回収しに来ればいいだろ。」
「…俺の邪魔すんの?」
「いや、お前がいねーと、俺らも不安なんだよ。皆お前を頼りにしてるんだぜ?」
「…………仕方ねぇな。ただコイツも俺と同じ特別製だ。一晩もあればすぐ動けるようになっちまう。」
「…まじか」
「だから20分だ。コイツは俺のペットにするんだ。逃げられちゃ敵わねぇよ。」
「まぁ、お前がいれば15分もかかんねぇかもしれねーしな。早くしてくれ。商談の時間が迫ってんだ。話さえつきゃぁ今日そのまま作戦も出来るからよ」
「ケッ。商談っつーのは俺ぁ嫌いだね。」
そう言うとゴドスと共にまた路地に消えていった。
静まりかえる一帯にポツリと縄で両手両足を縛られたマオが一人取り残された。
「…もう、大丈夫か?」
辺りを警戒しつつ、哲夫はマオに近づく。
キレイな顔立ちは無惨にも傷だらけだ。
「おい!おい、しっかりしろ!」
哲夫はマオを揺さぶるが反応は無い。
「……………ぁ……。」
「おい!おい!なんて言った!もっかい言え!!」
「…ぁ……………たば………」
何度も口にしていた『あしたば』、
変な名前だがきっと人の名前だ。
コイツの保護者かなんかだろう。
気を失っても尚、名前を呼ぶ相手。
「っくんぬぉぉぉぉ!!!!」
自分も身体はボロボロだが力を振り絞ってマオを背負い立ち上がる。
「俺が……探してやるよ!『あしたば』を!!」
少し久しぶりな投稿なのですが、
一気にある程度夢を見れてるので、多分第一章的な部分終わるまでは行けます。
ところで、
夢に見たものを書いてるのが私の基本スタンスなのですが、
明晰夢とか夢のことをググってたら、
夢を日記につけたりだとか、
夢を書き出したりとか、
なんかよくないらしいですね……
夢と現実の差がなくなってしまうんだとか……
いやいや。そんなことないでしょ。
わかるよ!
と今は思っているけど、今後どうなってしまうのでしょう。
考えて面白いお話とか、作れないし。