第十五話 新星はいつも不安定
予定も何もないよね。
本当は10月中旬更新予定だったのですが、
無理でした(ヾノ・∀・`)ムリムリ。
今月中旬に転勤です。
ドキドキ半分、コワコワ半分、ワクワクがそのまた半分。
上手くいけばいいんだけどなぁー。
新しい枕を買いました。
「よ!」
「うわぁ!!」
店の外で南方面の道を眺めていたパパガヤを
後ろから驚かす。
「ははは、いい驚きっぷりだな!」
明日葉が笑うとマオもケラケラと笑い出す。
「もー、ビックリさせないでくださいよ。
どちらか行かれてたのですか?」
「宿泊先を変えてね。」
「なるほど、それでそっちから……」
律儀に店の外で明日葉達をまっていたパパガヤにマオは手を差し出す。
「……」
なにも言わずに少し考えてからマオの掌にはあめ玉が置かれた。
マオは手は差し出したまま、
もう片方の手であめ玉をポケットに入れる。
「……えっと?」
「わからぬのか?金をよこせ」
大胆な乞食行為にパパガヤは明日葉に視線を移す。
「……。」
「まったく。どういう教育をしているんですか……」
ため息と同時に明日葉を睨む。
「いや、特には……」
先が思いやられる。といった様子で、
パパガヤは紅茶に砂糖を入れる。
一口飲み、改めて明日葉を見据える。
「ふぅ。まあ、いいでしょう。とりあえず次の依頼のお話をしていきましょう」
「そうだな、」
「今回も配送のお仕事になります。賃金自体は安いのですが、これなんかどうです?」
そう言ってパパガヤが見せてくる紙には
【 レア食材運搬、果実 】
と書いてあった。
「果実……」
「えぇ、こんな、かんじのリンゴみたいなやつです。」
パパガヤが紙にペンで瓢箪のような形を書く。
「リンゴ?洋梨じゃなくて?」
「……ヨウナシ?いえ、北のイガニタという土地でとれた ろれっくちぇ?というものらしいです。たまたまココを経由して、オロラントに運ぶそうです。なのでバトンタッチする形でタイミング的にも丁度いいですし。」
「へぇ、このあいだのと大体一緒か。ただ賃金安いのかー。」
「そうですね。安いとはいっても6万近くは出ますよ。ただ今回の果実は痛みやすい物なので慎重に運ぶ必要がありますのでお気をつけください。
それと前回オロラントにいった際の指名手配犯を捕まえた賞金もオロラントのギルドで貰えますので」
「なるほど。それは吉報だ。仕方ないか、ついでだし、安いのでも我慢しますわ。それはそうと、多分そのリンゴの名前ろれっくちぇじゃなくて、ル レクチェ……だよな?」
「……あぁ!!そうです!それです!……えぇ!?明日葉さん、ご存知だったのですか?」
「いや、多分俺が知ってるので合ってれば俺の故郷にもあった果物だから」
「……明日葉さんはイガニタの出身なのですか?」
「いや、違うけど。多分名前が同じ物を聞いたことがあるだけかも知れないし」
「謎が深まりますね……?」
「明日葉!お腹すいた!!」
マオは待ちきれずテーブルをバンバン叩き始める。
「これ食ってろ。」
明日葉がマオの前にだしたのは銀色の丸い弁当箱だった。
マオが蓋を開けると、餅が沢山詰め込まれていた。
「お弁当……?」
「そうなんだ、最近コイツの食費がバカにならなくてとりあえずここ最近は弁当を食わせてから飯食べるようにしてて」
何も味付けはされていないものの、マオはガツガツと口へ運ぶ。
「これもなかなか……」
味のついていない餅をそのまま頬張る少女を前に、
見ている側がなんだかいたたまれなくなってくる。
「……なにか、頼みます?」
そう言ってメニュー表を手渡してくる。
「お?有り難く!とりあえずこのグランチェってやつにしようかな」
「わしも!」
「あぁ、弁当食べてからな。」
「ええ、遠慮せず好きな物を頼んでください。」
そう言いマオに微笑むパパガヤ。
「よっしゃ、マオ。その弁当食ったらこのおっちゃんがなんでも好きなだけ奢ってくれるってよ!!遠慮もいらないってよ!」
「ちょ、ちょっと明日葉さん……」
「ぬあああぁー!!お主、いいやつだな!」
そう言って目をキラキラさせるマオの前に置かれた弁当箱は空になっていた。
「なぁ、明日葉!全部!食べてみたい!!」
「そうだな!このおっちゃんに聞いてみなさい」
「おっちゃんって歳じゃな」
「いいかのっ!」
「そ、そんなに食べれるわけ……」
「がんばる!」
身を乗り出して息巻くマオの横で既に店員を呼ぶ明日葉。
「すみませーん、ドリンク以外のメニュー全部一通り注文いいですかぁ?」
完全にパパガヤは明日葉とマオのペースに飲み込まれていた。
そして運ばれてきた料理はもれなくマオの胃の中へ吸い込まれていく。
その不思議な光景にパパガヤはただ頷くだけだった。
配送の依頼を受けたし、
あとは冒険者パーティーを雇って、
シスターを借りに行って、
王城の兵の詰所で出発日を伝えて正式に依頼を受けて……
というのを明日か明後日までには終えて出発しておきたいところだ。
「そしたらまずは冒険者ギルドへ向かうか」
満足そうな表情のマオの手を引き、
歩いていると
毎度お馴染み、肉串の露店を見かけるがいつもの気前の良さそうな筋肉のおっさんが見えず、金髪の華奢な女の子が店番をしていた。
「こんにちわ。」
「いらっしゃいませ!肉厚な肉串はいかがですか?」
「あれ?おっさんは?」
「おじさんはちょっと体調を崩してしまって……」
「おじさん?娘じゃないの?」
「違います!違います!私がまだ小さい頃に、父と母が旅に出てて……」
「親がおらぬのか?」
不躾なマオが口を挟む。
「そうね、丁度あなた位の歳の時かな。」
店番をしていた娘はしゃがんでマオに目線を合わせて笑う。
「でも、ワシも同じじゃ。親がおらん」
「……肉串、たべる?」
「たべる!」
なんだか健気なかんじがして
明日葉はショックを受けていた。
「お兄さんは?肉串、いります?」
さっきの店では明日葉はあまり食べていないため、腹に余裕はある。
「もらおうかな。流石にこれのお代は払うよ」
「ありがとうございます!400Gです!」
「ん?」
「400Gです!」
さすが……というべきか。
てっきりマオにあげた肉串はサービスなのかと思っていたが……
とりあえず400G支払い、
笑顔で手を振る少女にマオも手を振り返す。
なかなか可愛い子だったが、しっかりしておられる。
この一瞬で一般市民の日当分を売り上げてしまうのだから、とてつもなく商魂逞しい。
いや、単価設定がおかしいのか。
笑顔で肉串を頬張るマオの手を引き、
冒険者ギルドに到着。
とりあえず受付に向かう
「こんにちわ。ご依頼ですか?」
「昨日頼んでおいたCランク冒険者パーティーを紹介してもらうって話で……」
「ちょっと待ったぁ!それ、俺らに任せてみないか?」
「えっと君達は……?」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「すみません、失敗しました」
ボロボロになりながらも帰還した冒険者パーティーリーダーの一言をかわきりにメンバーの愚痴大会が始まる。
最早、恒例行事だ。
パーティー名は「生活必需隊」。
パーティーリーダーにして剣士のミーツ。
国内最年少で個人ランクBに昇格したルーキー。
「あのババア!偽情報掴ませやがって」
いかにもなハットを被る藍色の髪の魔法使い、セリア。
ランクはC。
「それもそうだけど、セリアが熊用の落とし穴に落ちてでてこれなかったからじゃん」
ゴツゴツした体格で、威圧感が凄いがパーティー内最年少。身長188cmのランクCの盗賊、ダイソウ。
「何よ!私が悪いの?あんなとこに穴があるなんて誰も予想してなかったじゃない!」
「でもセリアが穴に落ちなければ……」
「いやいや、私よりもあんな認知症入ってそうなババアの話を鵜呑みにして道案内したアンタのせいでしょ!!それで穴に落ちたんだし!」
「だってあんな優しそうなおばあちゃんが間違ったこと言うなんて誰にもわからないよ!」
「ちょっと待ってくれ!」
二人の口論を止めたのはミーツ。
涙を浮かべ、2人を抱き締める
「俺もあんな優しそうなおばあちゃんが嘘言うなんて思わなかったし!穴に落ちたセリアをあとで引っ張りあげればいいや。って思った俺が悪かったんだぁ!ごめん、ごめんよおぉ」
「んもう、ミーツはすぐ泣くんだから……」
「そうだよね、おばあちゃんは悪くない。」
いつもの茶番である。
全員腕は立つものの、おつむが少しというか大分弱い。
受付はとりあえず「またか。」とため息をつく。
こんなでも一応実力だけでいえば王都内10位に入ってしまう現状、
人材不足が深刻だ。
三人とももう少し頭がよく、とは言わない。
せめて、悪くなければ……
ため息しかでない受付嬢が入り口に視線を移すと、
丁度、子供連れの金を持ってそうな男が現れた。
「こんにちわ。ご依頼ですか?」
「昨日頼んでおいたCランク冒険者パーティーを紹介してもらうって話で……」
なんだろう、引き継ぎはしていないが。
「ちょっと待ったぁ!それ、俺らに任せてみないか?」
おいおいおい。
「えっと君達は……?」
「俺達は生活必需隊!これでもCランク冒険者パーティーだ、俺はBランク冒険者のミーツという。」
「え!Bランク」
「こっちがセリア、魔法使いで。こっちが盗賊のダイソウ。」
「街道の結界張り直しのやつなんだけど」
なるほど、この男は商人か。
しかし街道の結界張り直しであればそれなりに国から信頼を得ている商人しか回して貰えない筈……
「大体なんでもできるぞ!俺達は!」
ここ最近の依頼達成率は20%強かなー……
でもまぁ、んー、護送なら確かにコイツらでも
「本当か!向かう先はオロラントなんだが……」
なるほど、ならば
「受付は此方でお願いいたしますー」
「あ、はい。」
「オロラントまでの護送であればおよそ7万G程……」
「そんなにとるのか!!」
驚いた声を上げるのはミーツ。
コイツはホントに……。
「え?高いのか?」
うわー。言わんこっちゃない。
そもそもこの手の国からの依頼は頭割りが基本だ。
オロラントであれば大体9~10万は貰う筈、
商人1人と冒険者3人で普通は頭割り。
最低でも65000Gの内、5000がギルド、
冒険者には20000Gずつ分配するのが定石。
それをミーツみたいなアホ発言をすれば……
「あの、本当はいくらなんですか?」
大抵はこう来る。
「国からの依頼になるので総合報酬から頭割りでの金額になると、先日お話ししていると思うのですが。
多分オロラントであれば例年通り9~10万であれば65000~70000G程頂くのが……」
「僕たちは3人だから1人1万で構わないぞ!」
くそ。お前は黙ってろ!
「本当か!それはとても助かる。」
「だ、と、し、て、も。ギルドに所属している以上、彼らを登用する場合でも、ギルドへの手数料も5000Gお願いいたします。」
「まぁ、それは……」
そう言い、35000Gの支払いをする男が不憫に思えて仕方がない。
名前は……アシタバ、というのか。
書類をまとめていると、
早速親睦を深めているようで
ミーツ達と握手を交わしている。
帰り際に流石にこれが普通だと思われても困るのでアシタバを呼び止める。
「あの、アシタバさん。少しよろしいでしょうか?」
「はい」
「あのですね、
今回は35000Gで契約を交わしましたが、不正防止と命をかける冒険者の賃金低下を防ぐためにも、国の依頼には冒険者との直接取引を禁じております。我々も組織ですので、手数料も必要ですし、
今までもオロラントまでのものでしたら65000Gというのが固定になっているのです。
今回だけ特別になっている、ということと、この事は他の方にはご内密に。」
「わかりました」
「あと、彼らは自身の賃金を自ら半分に減らしてしまう世間知らずのアホです。くれぐれも取り扱いにはご注意下さいね。」
「……確かに。」
「では、おきをつけて。」
軽く手を振り、
アシタバを名乗る商人の後ろ姿を見送る。
一応これで精神的には悪い気はしない。
……ハズ。
というか、子連れだったよね!?
……大丈夫かなぁ。
……あぁ、もう!
私、ちゃんと言ったからね!?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
後半は冒険者ギルドの受付嬢の視点ですね。
ちょっと説明足りなかったかな。
どういう風に書いたらいいかわかりません。
やっとこさ、また外に出そうな感じになってます。
外に出ないとストーリー始まらんから大変です。