第十四話 現実は思うようには進まない
なんだったかなー。
あれ、なんだったかなー。
えー?思い出せないけどここの前書き、
書こうと思ってた事があったはずなのですが、
なんだったかなー。
誰か覚えてたら教えてください。
「おう!来たか。街と町を繋ぐ街道整備の仕事があったぞ。」
「受けます!」
何も説明を受けずに取り敢えず受ける姿勢を示す。
「即答だな……」
明日葉の食いぎみな返答に衛兵は軽くひいいていた。
「なんか楽そうなので……」
「楽、ではないかもしれないけど商人には丁度いいかと思ってな」
「丁度いい……?どんな内容ですか?」
「町と町をつなぐ大きな街道に結界があるのは知ってるよな?」
「大体等間隔で建ってる杖みたいなやつですよね」
「そうだ。
王都の神官を連れて、結界の張り直しをしてもらう。
ここ、マサモイツから各都市に向かう主要な街道全てに設置してあるから一つ一つ確認をしながらその街道を移動するんだ。」
「はぁ~っ、なるほど。魔除けのエネルギー補充の旅かぁ」
「有り体に言えばそうなるな!」
「で、おいくらほど……?」
人差し指と親指をくっつけて、わざと視界の端でいやらしくちらつかせる。
「ハハハッ!商人にはそこが一番重要だよな!街道一本、というよりは距離と危険度によって変わるが近いところで言えばオロラントで大体総額9万Gくらいかな 」
「きゅ、9万!」
あまりの予想外の額におったまげる。
「まぁ、街道の結界の張り直しは遅くなればなるほど危険になるからな。危険手当てだ、危険手当て。」
「そんなに危険なのですか?」
「総額9万だけど、まずシスターも同行しなきゃならないんだがな、そのシスターが基本的にちゃんとしたパーティーがいないと同乗してくれないからな。なんだかんだ6人で頭割りとかになるかな」
「だとしても!いいですね!丁度僕はオロラントに向かう用事があるので、それと合わせていきますね!」
「あぁ、了解だ。そしたらオロラント迄の街道のは抑えとくよ。なんの用事かわからんが、出発報告から10日以内に達成報告をしなきゃいけないからそれだけは気を付けてくれよ。」
「ありがとうございます!」
なるほど。
今回はパーティーで参加前提のクエストのようだ。
そしたらまず始めにシスターさんを確保してから、冒険者なんかは無数にいるだろうし。
先に先約を取っておこう。
とりあえず教会に向かい、神父を訪ねた。
「最低でもCランク以上前衛職2人と後衛職1人の冒険者パーティーか……」
シスターを貸し出す条件を出されたのだ。
まぁ、同行するシスターの安全を保障するためにも仕方のない条件ではあるが、
まさか神父に
"僕の連れが魔王候補でめちゃくちゃつよいんで、護衛なしでもいいですか?"
とも言えないし、
ましてや自分が勇者候補であることも明かせない。
まぁ、その勇者候補自体は戦力には微塵もならないのだが……
「やっぱ、人集めないとダメかぁ。」
内心山分けになるという報酬も、
総取りできれば結構な儲けだというのに。
……まてよ?
普通に冒険者を雇って、
支払う金額を減らせたりは……
「とりあえず、冒険者ギルドに向かうか。」
相場がわからないため、
とりあえず冒険者ギルドに向かう事にした。
もしできるのであれば報酬山分けではなく、
冒険者一人一人を1日借りるという形で
冒険者には日当を渡し、報酬の頭割りはせずに自分だけおいしいところを持っていきたい。
「ダメかー……。」
冒険者ギルドに着き早々に冒険者一人一人を1日雇う形の金額を聞こうとしたら、
受付嬢に
「街道の結界の張り直しならそれではできませんよ?」
と笑顔で断られてしまった。
聞けば毎回この時期になるとこの手の話がよく来るらしい。
「商人の考えることは皆一緒か。」
まぁそんなに都合よくはいかないみたいだ。
それに個人で集めると連携もとりにくいからと、普段からパーティーを組んでる冒険者パーティーをいくつか紹介してもらった。
報酬の頭割りは仕方のない事として、
自分の場合はオロラントの酒場での依頼とパパガヤの配送の依頼、
それに追加で街道の結界の張り直しをしに行くのだ。
他の商人が持ってくる依頼と比べると通常よりも所要時間が多くなる割に報酬は結界の張り直しの依頼分だけになる。
なかなかそんな依頼に同行したいと言ってくれるパーティーも少ないだろうし……
「あー、やっぱミスったなー。」
頭をかき、過去の軽率な自分を恨む。
既に頭の中では切り替えて交際するフリをする事については割りきれているのだが、
どうにもそれのせいで色々と縛りが出てきてしまうのが辛い。
とりあえず、
複数のCランクパーティーに依頼の打診をしてもらっているが、どうなることやら。
ぐだぐだしていても歩いていれば、
目的地についてしまうのが世の理である。
風呂敷を広げただけで
なにも進んでいないまま準備日の1日が潰れた。
「早くも1日が終わってしまった……。」
宿の部屋に戻るなり、今借りている宿の部屋を見渡す。
「明日葉!メシ!」
「広いな。」
「?」
ベッドが二つとテーブル、ソファと別にハイテーブルとハイチェアが置いてあり、部屋に余裕がある。
…およそ30畳はあるであろう。
こんなに広くなくていいんじゃないかと……
この宿のこの部屋で1泊750G。
人間二人分の日当代がほぼふっとぶ。
そんな宿に泊まっている理由の一つとして望めば3食付く、という所にある。
大食らいのマオがいる現状、食費が浮かせるのは大きなメリットであるが……
「おい、明日葉。そんなとこで固まってどうした。」
「あぁ、いや。部屋広くないか?」
もし出費を抑えられるのであればそれに越したことはない。
正直、オロラントで泊ったような宴でBarのような広さでいい、
どうせマオは殆ど眠っているのだし、8畳程度あれば十分だ。
「そうか?」
「そうだな、マオももう少しいいメシを食べたくないか?」
「食べたい!」
「なら部屋少し狭くなっても構わないな?」
「それなら仕方ない、宿などなくともたらふく食えればそれで十分じゃ。」
「っふ、そうだよな。とりあえずメシ行くか」
「うぬ、」
明日、
パパガヤが配送の依頼を融通してくれ、
そのまま冒険者ギルドへ行き冒険者と顔合わせ、
教会へ行ってシスターを借り、
ガウマンから正式に街道の依頼を受注して。
あれ、意外とうまくまとまりそうだ。
明後日にはまた出発できそうな感じでホっと一息。
王都にいればいるだけ出費が嵩んでいくだけに少し肩の荷が下りた気がした。
短いです。
筆がのらないです。
まぁ、筆なんてここ数年持ったことないですけどね!
とりあえず、宝くじ買いました。
多分次の更新はちょっと早めです。(はたして……)