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ウチの魔王様が、すみません!  作者: ホマージュ
第二章 後を引く余韻
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第十三話 おまけの肉串

おはようございます。


所謂第二章的な所のはじまりはじまりです。


一章と比べると全体的にゆるい感じで進みます。


元々ギャグとかほのぼの系路線の筈なので

ゆるふわ日常系の異世界と認識してもらえればと。



二章も宜しくお願いします


「あの……今王国では大変な事、起きていたりしませんか?」


この国を出て戻ってくるなり、

以前と何ら変わりのない国の様子に

モヤモヤが貯まり

ついつい王城近辺で巡回をしている兵士を捕まえて話をふる。


「なんだ?お前?特に大変な事なんて……お前見ない顔だな」


どうやら怪しまれているようだ。

爪先から頭の天辺まで観察される。

そらそうだ!

俺が兵士だったとしても急にこんなこと聞いてくる奴はとりあえず尋問するわ。


「あ、ただの商人なのですが何か上手くお力になれる部分はないかなー、なんて……」

ここで兵に睨まれたり余計な疑いをかけられたくはないのだが……


「……ハハッ!なるほどな、商魂逞しい商人だな!面白い、気に入った!何か仕事回せるものないか確認しといてやるよ。」


助かった!


「本当ですか!それはとても有り難いです!」


思わぬ収穫を得てしまった。

……狙っていたものとは違うのだが。。


「そういえば、モイモイスでも勇者召喚の儀を行うそうですね」


「なんだー?お前勇者様とお近づきになりたいってか?」


「えぇ、まぁ。もし長くお付き合い出来たら私としても理想的ですので……」


まぁ、私がその勇者なのですが。


「ほほぅ、貪欲な奴だなぁ。でも無理無理。俺も噂程度しか知らないし。」


ニヤニヤとしながら足元から頭の天辺までまたもや観察される。


そんな中、

「あしたばー、つり目のとこ行かぬのか?」

さっきまで屋台を眺めていたマオが駆け寄ってくる。

因みにマオの言うつり目というのはパパガヤの事である。


「あー、なるほど。こんな時期に、大変だな」

「まぁ、色々と」

「俺にも丁度同じくらいの娘がいるんだ、気持ちわかるよ。」

肩に手を置かれ同情される。


「あ、ありがとうございます」

「そしたらまた明日ここに寄ってみてくれ。軍でまわせそうなやつがあれば見繕っておくからさ。申し遅れた。俺はガウマン。こうみえても近衛兵長補佐をやってる。偶々今日は最後の見回りをしてただけで……運がいいよ、お前」


「ありがとうございます。私は明日葉と申します。近衛兵長補佐!その若さですごいですね!」


「だろ?へへッこないだ急に取り立てられてよ。昇進したんだ。そしたらまた明日な。

……頑張れよ、お父さん。」


そう言ってにこやかに離れていくのは30前半かそこらの兵士。

このあいだ急に昇進?

多分上の方の人間が一部根こそぎ、

この小さな魔王に消し飛ばされたから……

「だろうなぁ……」


視線は左隣へ。


「ん?どうした。」

何も知らずに明日葉の手を握って見上げてくるマオ。


お前の所為だ、と思いながらもため息が出る。

「や、なんでもない。」


しかし、

思わぬ所で新しい仕事を得れそうだ。

明日、まずここで先程の近衛兵長補佐から仕事を貰えれば、それと平行して両立出来そうな依頼を

パパガヤからも受ければいい。


今はまだ金はあるが、

金があるうちに稼いでおかなければ、

なくなったときに金策しかできなくなる。

未来の選択肢を減らすのは得策とは言えない。



「まぁ、今日は棚ぼたで満足するとしようか。」


はしゃぐマオに手を引かれながら露店のある通りに連れていかれた。






モイモイス王国の

オロラントから王都マサモイツに戻り早二日。

明日葉はパパガヤに会いに来ていた。



「おい、なんか聞いてたのと違ったぞ」



明日葉はパパガヤを見つけるや否や、

真っ先にパパガヤの襟を掴み揺さぶる。


「まーまーまーまー、何かあったんですか?」

「何かあったんですか?じゃねーよ。大変だったんだぞ!」


「何があったか教えて貰えないと私も何の事か……」

「……。」

明日葉はパパガヤを揺さぶる手を止めない。


「……え?」

「いや?」


明日葉はパパガヤを揺さぶる手を止めない。


「あの……やめてもらえません?」

「やめたくなかったけど、何だったかな。」


「ちゃんと整理してから揺さぶってくださいよ。」

「わかった。思い出したらまた揺さぶるわ」




考え込んだ後、明日葉はパパガヤの襟首を掴む


「ちょ!!で、何があったんです?」

「いや、何回かアンタに貸しだな。って思う部分があった筈だったんだが忘れてしまった。」


「……」

「……」


ひとつ、パパガヤはため息をつくと

言葉を続けた。


「そういえば知ってます?」


「何?」


明日葉から1歩退き、襟を正すとパパガヤはまた笑顔を作る。


「ここ、モイモイスで最近勇者召喚の儀があったそうですよ?」

「へ、へー。そうなんだ?」

「これで私ら商人も少しは安心出来る、ってもんです。」


「そう……なのか?」

「そりゃそうですよ、このモイモイスも魔族に領土をじわじわと奪われて来ているのですから」


多分自分の事だろうと思う。


ただ、何故?


何故、王様が殺された事が広まっていないのだろう。

「因みに、勇者様召喚の儀ってやつで、何か事故とか……何か起きたりとかってしてませんかね?」


「?」

「……」

「勇者召喚の儀で失敗はあっても事故?とかそういうのは聞かないですね。どうしたんですか?」


「いや、ただ、勇者を召喚するのに何もデメリットなくできるのかなぁ、なんてハハ……」


「確かに。うまい話の裏には総じて何かがあるもんですからね、明日葉さん!早くも商人が板についてきたかんじですね!」


「損得勘定だけじゃないとは思いますけど、今商売をさせてもらってて、つい。」


自分がこの世界に召喚されて既に一月程経っている。

そして召喚された日に王はマオに殺されている。


それだというのに、町は、国は何事もなかったかのように回っている。


「なんだかな……」

異世界に来たというのにふと転移直前の朝の事故、

そして人が1人亡くなったというのに何事もなくいつも通りの日常を取り戻していた元の世界を思い出す。


「どこの世界も同じってことなのかな……」

ボソリと呟く。

歯車である人が1人亡くなっても世界、いや社会は何ら変わりなく回り続ける。


「なにかいいました?」

「いえ!」


「そういえば明日葉さん、宴でBarという宿から依頼がどうの、って連絡が来てるのですが思い当たるフシあります?」


「あ。」

完全に忘れていた。

なんだったかな、恋人の振りをするんだったか……

あぁ、しかも期間も相手の性別も種族もわからず困ったもんで頭の隅に追いやっていたようだ。


「これ、信用問題に直結するんで商人続けるならこなしておかないと仕事も回せなくなっちゃいますよ」


「え」


「幸い、依頼人があまりすぐに動いてくれないみたいで少し猶予はあるみたいですけど。」


「実はこれ、知らずに紙を取ったら受注、ってことになっちゃって、僕から断る事って出来ないですかね」


「わからないものに触っちゃいけないでしょう。それと、依頼を断る事は依頼発注者の同意がなければ出来ませんね。」


「そうかぁ」


「そしたらオロラントに戻るついでにまた荷を運んだりします?」


「そうですね、行かなきゃいけないならその方が効率的ですもんね。でも……気まずいなぁ。」


「何か問題でも?」


「問題、という程でも……いや、問題だなぁ。」


頭を抱えつつ、

明日葉はパパガヤにオロラントでの出来事を一つ一つ順番に話をしていった。

魔王候補の事を除いて。



「なるほど。話はわかりました。」


「結構身体張って、ギルドと美術品を守ったつもりなんですけどねぇ」


「うーん、では私の方でオロラントの商業ギルド周辺を調べてみます。そういえばお嬢さんは?」


「あぁ、マオなら先に宿で休ませてます。」


「そうなんですね、

では明後日に状況をお伝えしますので、明日葉さんは帰ってきたばかりですし、お休みになってください」


「そうですね、お言葉に甘えさせて頂きます。」



パパガヤと別れ、直接宿には戻らず少し遠回りをした。




『79点で8200Gになります』



どこかデジャヴを感じながら同じ物を。

ついでにミルクを買い、


「おっさん、肉串とりあえず5本!」

「まいど!兄ちゃん気前いいね!」

「だよね、高いよね。でもめちゃくちゃ旨かったからさ」

「嬉しい事言ってくれるね!そのパンの袋、さては今日は特別な日かなにかかい?」

「まぁ、そんなところかな?」

「よっしゃ!そしたら肉串一本サービスしてやろう!」

「本当か!おっさん!ありがとう!!」


宿への帰路につきながらも、

肉串1本200G、これはまけられない……んじゃなかったのかよ。

なんてツッコミは最後まで飲み込んでいた。






「明日葉!待っていたぞ!!」


寝間着姿で人形を抱き、

ベッドの上で仁王立ちするのは、未来の魔王。


「ほら、肉串も買ってきたぞ。あとパンとミルクも」


マオははしゃぎながらもベッドの上に小さなテーブルを用意し、明日葉のぶんのクッションまでセットする。


待ってました!と言わんばかりのキラキラした眼差しで皿に出される肉串をすぐさま奪うように取り、笑顔で頬張る。


「んまい!」

マオは肉串のタレを頬につけながらがっつく。

何の肉なのだろうか、牛のようなジューシーさで鳥のように柔らかい。

かといって淡白な味ではなく噛む度に溢れる肉汁で深みが増す。

少し濃いめの甘じょっぱいタレが絶妙なバランス。


幸せそうに次々と頬張るマオの頬や手を拭いてやる。

マオも特に抵抗はせず、ただ無言でニカッと笑顔を向けてくる。



こんな平和な日が続いて行ければどんなにいいことだろうか。


目下課題や問題は山積みだが、

なんとかなるかな?

なんて、軽い気持ちで


今は、今だけは忘れておこう。


いやぁ。


今日は暑かった!

とは言ってもこれ投稿されるのは次の日の朝なのですが。


何度も汗をかいて、なんだか気持ち悪いです。


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