閑話 第10.5話 機動力はお姫様
はい。
立て続けです。
一章終わるまでは週1ペースの更新予定なのです。
ここはマサモイツの王城。
執務室に次々に色々な者が出入りを繰り返し、列を成している。
その中心にいるのは政務官と一緒になって
報告を受けつつ、必死に机に向かう1人の女性。
「報告致します!今月の領内の催しと……」
「あぁ。それいいから!置いといて!」
「こちら。今月の領内の税収と全体の収穫高でございます」
「それも後回しで!」
「姫様。今月の我国内での商人の通行履歴と荷の詳細でございます」
「あとで見とく!置いといて」
「 お渡しさせて頂きます。こちら領内魔物被害範囲の変移とその詳細に御座います」
「ちょっとまって!それは口頭でも伝えて!広がったの??」
そう叫びつつもペンを持つ手は止まっていない。
各国へ要請する内容の吟味と添削を続ける。
「報告致します。魔物被害は拡大を続けており、北西部の村のモイタロを奪われ都市モイジャガの外壁にて2度衝突を確認。ドゥンマエメが指揮し此れを撃退」
「モイタロの村民に被害は?」
「村民に大きな被害はありません。ただ、モイタロは皮を鞣す役割を持った村で、魔物に占領を受けているため、皮産業は打撃を受けております。」
「そう。それは貴方の仕事では無いわね、でも有り難う。まず人命最優先で、モイタロの村民で避難又は移住希望する者は王都で受け持つわ。保障出来る分は全部!」
「そうなると運ぶ手間も人材も掛かりますが……」
「構わないわ、国庫を開きます。お金で解決出来る物は国に。まだ魔物との衝突は起きそうなのでドゥンマエメ隊は駐留を」
「かしこまりました」
「あ!でも専守防衛に努めるよう伝えて。間違っても援軍もないまま村奪還とかリスク有りすぎて有り得ないから!王命ね。」
フライングし勝ちな将校への釘も刺しておく。
「姫様!…………」
「報告です!………………」
「お伝え致しま………………」
「~~~~~っっ!!!」
力の入りすぎでペンが折れた。
なんで……
なんで大臣まで死んでんのよ!!
今日の業務全部、ぜーんぶ!!
「私のやる仕事じゃない!!!」
ついつい慌てふためいている現場に見ていられなくなって
口出しをし、手をだし、何故か丸投げされている現状。
政務も軍事も、決断力に欠ける。
人材不足も深刻である。
しかし、国の収益自体は保障をできるだけ
思っていたよりも余裕があるようだ。
それもこれも余裕を持って不足の事態にある程度立ち回れるように余力を残しておいた父のお陰か。
「はぁ。」
ため息が出る。
本当であれば、勇者を召喚後。
軍事費の一部と兵士を何人か支給し、
周辺の魔物の巣窟を少しずつでも壊滅してもらい、国を立て直すつもりだったのに……
あの日から私の日常は一変した。
王不在を貴族連中に悟られぬよう、
通常通りの通達は怠らぬようにチェック。
政務も大臣が見ていた分のやっていたであろう采配を。
対魔物用に軍を再編成し、その采配も。
あの日を境に……
しかし、あの日の出来事で
おかしい点がいくつかある。
あれからおよそ二週間近く経ち、
いくら考えてみても、遺留品をみても人数も合わないのである。
あの日配置されたはずの兵士と大臣、召喚士そして勇者。
総人数は23人の筈。
死体は形が残っているものも含めて20人分
勇者を含み3人、差が出るのだ。
きっと勇者は難を逃れていると仮定しても、
「この2人は、なんだ……?」
それに王の着けていた装飾品の喪失と、
当日私が扉を開けて室内を確認したときには何故か子供の、少女遺体もあった筈。
しかし、後日そのような遺体は発見されず。
依然として疑問は残る。
自分の知らないところで、他の思惑やらも交錯しているのだろう。
しかし、負けてやらない。
勇者様がまだどこかで生きていると信じて、
見つけ出して、
いつか仕事に追われる私を助けてくれる、
その日を信じて。
それまでは私は
「やれることをやるだけ、ね」
「姫様。モイタロのルーデリッヒ侯爵が報告に来ております。」
やれやれ。息抜きをしようと庭に出れば
次から次へと仕事が増えていく。
「……仕方がないわね」
そう言う姫の口元は緩んでいた。
姫はなんだかんだいっても国の為に動けていることに満足感を得ている様子。
チラッとモイモイス王国の姫の現状を出したあと、
また次回から明日葉とマオのストーリーになります。
姫はロマンチストで夢見がちですがデキる女ってやつです