逃げの一手
「おい、お前!」
と腕試しに誘われる。
イヤな予感はしてたんだよな、あんだけ目立ったしさ。
声を掛けてきたのは僕より少し身体の大きい(太い)ガキ大将みたいなやつ。
「誰?」
思わず聞いてみる。
「お前、俺を知らないのか?
俺のオヤジは王国騎士団組頭、その長男のブッチャだ!」
「はあ。」
組頭ということは下から2番目の組織長であまり偉くないな、とあまりスゴさがピンとこないので思わず間が抜けた返事をしてしまった。
「な、なんだ!そのバカにしたような態度は!!」
逆になんで偉そうなんだろ、こいつ。
「ふん!いいか、俺のスキルは闘士だ!
このスキルがあれば俺は最強の騎士団員になれるはずだ!未来のために腕試し第1号にしてやるよ」
「いやだよ。
痛いのもだし、自分のスキルがイマイチわからないのにやってもお互いのためにならないじゃん。」
バカにしたつもりはないがブッチャはさらに激昂する。
「その舐めた口を利けないようにしてやる!!
いくぞ!スキル発動!!」
スキルを発動させ、ブッチャが突進するようにいきなり殴りかかってくる!
「え、ちょ、、!」
びっくりして思わず足がもつれ、倒れてしまう。
「ハハハ!だせぇな!」
いや、いきなり殴りかかるなよ。
体勢を持ち直すや否や、ブッチャは次々に攻撃を仕掛けてくる。拳打にだけでなく蹴りや肘打ちも加えた複合的な攻撃、まるでいっぱしの闘士のような動きだ。
しかしすごいな、これがスキルの力か。
とりあえず距離を取るためひたすら逃げ回る。
怖いしそれしかできないもの。
周りにはギャラリーがいつの間にかオレたちを囲んで輪になっていた。友人たちも心配そうに見ているが僕も男だ、あまり助けは呼びたくはない。
なんとか逃げ回り、交わすだけで精一杯なオレだがそろそろ体力が切れてきた。息が上がり肩で息をするくらいになってきた。
「ハア、ハァ、ハァ、、」
「どうした、もう逃げ回るのは終わりか?」
ブッチャが余裕綽々で僕を追い詰めるように対峙する。
「さあ、、サンドバッグにしてやるよ!!」
そこからオレはしばらく殴る蹴るのサンドバッグに。痛みがなくなるくらいまでひたすら攻撃された。
薄れ行く意識のなかで考える。なんだよ、このスキルって。
どう使うんだ、念じるのか?
それとも何か呪文が必要!?
もう殴られるのはイヤだ、誰か助けて!!
『ああ、やっと出番か??』