第四話 前半
何とかアクリダから逃げ切ったクルム達
額から汗を流し呼吸を整えながら
クルムは考えていた。
何でこんな旅をしているのだろうか…?
それは今から2年前
クルムの産まれた村は山々に囲まれた
所にある小さな村だ。
その村に住む民は【善】の種族で
クルムもその種族の若者だった
小さいながら春は心地よい風が吹き
夏になれば様々な恵みをいただき
秋と冬はしんと静まり返った山と共に過ごす…
そんな春夏秋冬に恵まれた村だった。
そう…あの日が来るまで
それは冬の日に起きた。
牧を集める為、森を1人歩いていたクルム
木の枝を集めさて村に帰ろうかと思い
村の方に振り向く。
するとクルムは驚愕した
村から火の手が上がっていた
今は乾燥する冬。火の手の回りは早い
集めた牧を捨て急いで村に走るクルム
…急いで村に着いたものの、村は壊滅
村の広場にはクルムの父が誰かと戦っていた。
『…くっ!この卑怯者…‼︎』
クルムの父は黒衣の防寒具を着た男を睨んだ
『卑怯?違う。これはお前の【油断】だ。
あの時俺を倒しておけば今頃、マリアと仲良く
暮らせていただろうに』
マリアとはクルムの母だ。
と言う事は相手は父の事を知ってる人?
しかしクルムはあの黒衣の男が許せなかった。
村を荒らした男を‼︎
クルムは瓦礫の中にあった包丁を手に取る
父の加勢に向かうからだ。
しかしクルムの父は『近づくな。逃げろ。』と
目で合図をクルムに送る。
父の判断は正しい。クルムも加勢した所で
如何にかなる相手ではない…
クルムは込み上げる思いを押し殺しゆっくりと
後退していく。
『ほう?今ここでか?面白い!
やれるものなら…やってみな!』
黒衣の男の背後に巨体が降り立った。