第11話 前半
父の仇、ゼクスと闇竜
個室による密閉感もあるのか息が詰まる…が
その緊張感は運ばれ来た料理によって
粉微塵に吹き飛んだ。
アクリダを塩茹でにした蒸しアクリダ…
アクリダ種は熱を通すと蟹の様に赤くなり
美味しくなり大変美味である。
次に来たのは魔導士サラダ
泥の魔導士と呼ばれる魔物から取れた野菜で
栄養価、味、品質共に最高峰の高級品
そして何より極め付けなのが…
翼竜の尻尾ステーキだ
熱々の鉄板の上に置かれたじゅうじゅうと
音をあげる肉厚なステーキ…
翼竜ティガレキスオンの尻尾は美味で
長く生きた個体ほど肉厚でジューシー
そんな色とりどりの料理にクルムの腹の虫は
我慢せずにはいられない。
『遠慮無しに食べたまえ。私からの奢りだ』
ゼクスの言葉に一瞬疑うクルム
『安心しろ。毒なんか入れてないさ』
…恐る恐るステーキを口に運ぶクルム
口の中に広がる肉汁…
勝手に手が動いてしまう。
…気付けば料理を全て平らげていたクルム
誤魔化しと言わんばかりに丁寧に口の周りを拭く
『さて、クルムとやら
今回私が君を呼んだのは他でもない。
私と手を組まないか?』
ゼクスからなんと協力要請
『いったい…何を企んでるの?』
クルムがゼクスに問う
しかし割り込む闇竜
『貴様分からんのか?ゼクスはな…』
『よせ、ゼノ。』
ゼクスが闇竜を差し押さえる
『簡単な話、ある怪異の調査の
仲間になって貰いたいのだ…
ウロボロスの証を持つ君とね?』
クルムを指さすゼクス
『私のウロボロスの…証…』
クルムは自分の胸に手を添える…
『そうさ。今この世界に起きている怪異…
それは……』
…すると突然、外から爆音が響いた!
窓の外からは闘技場の近くで立ち上がる煙
『…何かあったみたいだな』
闇竜が何かゼクスに知らせる
『そうだな。もしかしたらアレかもな』
ゼクスは言う『アレ』とは…
『私は現場に行く。
クルム、君も来てくれ』
クルムはゼクスの後をついて行く
現場に着く。
燃え盛る炎、人々の悲鳴…そして
炎の中で暴れ回る魔物…
その魔物はクルム達が闘技場で倒した
『キングホーンビートル』だったのだ!