冒険の始まり1
「君達が新しくカプセルから目覚めた者達か。」
マーカーにたどり着くと、急にNPCが話かけてきた。
「おぉすげぇ、まるで本物の人間みたいだ。」
目の前にいるNPCは30代半ばほどの偉丈夫だ。
顔の表情の動き等はまさに本物のようだ。
「まず君達には、その体に慣れてもらうための訓練を受けてもらう。
この奥にいる魔物が見えるか?」
草原の奥に目を凝らすと、RPGの定番であろうスライムが徘徊している。
「最初の訓練として、スライムを5体倒してもらいたい。」
そう言うと、赤色の液体が入った瓶を5個くれた。
アイテムを手に取ると、文字がポップアップする。
”ライフポーション”
「なるほど、回復アイテムか。」
「よっしゃ! スライム共覚悟しろ!」
「ちょっ――!」
卍エクスカイザー卍はアイテムの確認もせずに、敵に突っ込んでいく。
流石にゲーム初心者でもこんな事はありえないと思うのだが……
私は慌てて彼の後を追う。
――
―
卍エクスカイザー卍は手に持った剣を、綺麗なフォームで振っている。
その動きはとても素人とは思えない。
なるほど、攻撃のモーション自体はゲーム内の設定に準じるのか。
ダイレクトログインとはいえ、動きには補正が入るようだ。
つまり私も――
「今援護します!」
特に意識する事なく、スライムに矢を放った。
真っすぐ飛んだ矢はスライムに突き刺さる。
ポップアップで表示されたHPバーが無くなるのが見える。
”ギ¥%&ァ!”
声ならざる絶叫を上げてスライムが溶けていく。
「やるな! この調子でどんどん行こうぜ!」
そう言うと、彼は次のスライムめがけて駆けて行く。
私もその後ろに続く。
確かにこれは爽快だ。
何の訓練もせず、達人の感覚を味わえるのだ。
普通のVRでは味わえない快感だ!