広がる溝2
入室許可をすると、卍エクスカイザー卍が部屋に入ってくる。
彼は部屋を軽く見回してる。
「お前って、結構かわいい趣味してんだな。」
「ちょ、それどういう意味!」
彼は面白い物でも見つけたようにニコニコ笑っている。
彼もまた、見た目はゲームと同じ姿にしているようだ。
元々、2.0の初期設定にエレウシスオンラインのグラをコンバートする仕様がある。
プレイヤーの大半はコンバートして済ましているだろう。
しかし、何故エレウシスオンラインだけなのだろうか。
やはり同じ会社からの提供だけあって、そういう部分で提携しているのだろうか?
「隣いいか?」
「うん。」
一通り部屋を見て回った彼は、私の隣の椅子に腰かけた。
先程までニコニコ笑っていた顔が、急に真面目になる。
「お前、最近ユキさんと一緒にレベル上げしてるんだって?」
「そうだけど?」
最初の話題で察しがついた。
そうか、その事を聞きにきたのかと。
「なんだよ、俺も誘ってくれればよかったのに。 いつの間にか12レベルも差がついてるしよ。」
「あはは、2人の方が効率いいかね。」
――しばしの沈黙。
意を決したかのように彼は再び口を開く。
「あの事、責任感じてるのか。」
「え?」
「シャルロットの事だよ。」
「……」
答えられない。
責任は、確かに感じている。 私はあの時彼を見捨てたのだ。
「あれは事故だろ? お前一人が背負う必要なんてないって。」
結局は、あれはきっかけでしかなく。
”貴方にも協力して欲しいの、この世界を取り戻すために”
最初から決まってたのかもしれない事で……
「最近の急なレベル上げもそのせいなんだろ?」
「それは……」
私は見ていられなくて視線を逸らした。
違う、違うのよ。
この思いは口には出せない。 彼にはまだ純粋にエレウシスオンラインの楽しんでいて欲しい。
「シャルロットだって、その内元気に――」
「無理なのよ!」
私の返答に彼の口が止まる。
瞬きも忘れて硬直している。
「だから私がやるしかないのよ! そのために必要な事なの。」
そう、私しかいない。
唯一”マザー”と接触する可能性がある人物である私しか。
その時のためにすぐに強くなるしか。




