広がる溝1
学校から帰宅し、早々にログインする。
2.0を導入してから、oリナoの姿でいる時間が明らかに増えた。
その弊害で、ついつい日常生活でも”oリナo”の癖が出てしまっている。
このままでは自分のアイデンティティーが行方不明になるのでは、と悩む事もある。
私は誰なのだろうかと……
椅子に腰かけると、メニューを操作する。
何もない机の上に、急に料理が並べられた。
仮想現実での食事にそこまで意味はない。
ただ、味は本物と変わらないし、刺激を与えられた脳波満腹をしっかり感知する。
当然、現実では栄養補給がなされていないので、別の形で摂る必要があるが……
口に入れた料理の味は、本当に現実と変わらない。
仮想現実でここまで再現出来るものなのだろうか?
ほんの1週間前まで考えられない世界だ。
「うん、ご馳走様。」
メニュー操作で食器を片づけようとすると、入室申請が来ている事に気づいた。
――ユウキ? 誰だろう?
相手に音声通話を飛ばす、流石に面識のない相手を部屋に通すわけにはいかない。
調べた情報では、コンピューターウィルスを持ち込まれる可能性も0ではないらしい。
「もしもし、どちら様ですか?」
「おう、oリナo! 卍エクスカイザー卍だぜ!」
あぁ、卍エクスカイザー卍だったのね。
あくまでもゲーム内での名前なので、2.0の登録ユーザー名は別という事か。
ちなみに私は、ユキさんに初期設定をされたせいでoリナoになっている。
「今鍵開けるね。」
「おう!」




