表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/14

9話



「おい、聞いたか?」


「ああ、聞いた。なんでも、ミルヒシュトラーセ公爵が娘の夫選び初日から謎の男に傷を付けられたって話だろ?しかも、その男は未成年だっていうじゃないか」


「そうそう、ミルヒシュトラーセ公爵ってあの魔界三魔天のひとりに数えられるほどの実力者だろ?そんな方に傷を負わせるなんて、いったいどんな悪魔だったんだよ」



(⋯⋯オレです。オレがやりました)



いま、城のあちこちで話題になっているオレの話。なんでこんなことになったのかね。


今日になって知ったんだが、リザルグ殿って魔界三魔天とかいう魔王陛下に次ぐ実力を持つ三悪魔のひとりだったらしいんだよ。(親父もそのひとりらしいんだがな)しかも、魔王陛下に呼び出されてことの詳細を聞かれたとき。なんとあの男は最後に



『あの若造はまだ本気を出していなかった。この俺と対峙できるほどの力の持ち主だ。なんとしてでも探し出します!』



⋯⋯と、自信満々に宣言したそうな。


そしてそれを聞いた魔王陛下は、リザルグを倒した氷那斗に興味を持ったらしく『リザルグを負傷させたという男を探し出せ』という御触れを出したそうな。


ご丁寧にオレの似顔絵と名前を出してくれやがって。しかもその似顔絵が、壊滅的にオレに似ていなかったのが余計腹立つな。


ま、いまのオレはこんな姿してるからバレることは取り敢えずない。目下の問題は、いまオレの目の前で泣いている⋯⋯



「⋯⋯ラティシア嬢、大丈夫ですか?」


「うっ、ううっ⋯⋯ぐすっ⋯⋯」



頼むからそこでしゃがんで泣かないでくれ。ドレスが汚れるし、オレが泣かせたみたいに思われるから。


氷那斗は仕方なく立ち上がり、ラティシア嬢の手を引いて畑から出た。そして、近くの木陰に移動する。



「ラティシア嬢、なんでそんなに泣いてるんです?何かあったんですか?」



理由はなんとなくわかる気もするが



「ぐすっ⋯⋯す、すみません。ヒナト様は王城に住み込みでいらっしゃるので、ご存知だと思いますが⋯⋯ち、父が、わたくしの夫が決まったと言って、似顔絵を描いて見せてきたのです」


「あー⋯⋯」


「っ、なんと、言いますか、悪魔ひとを見かけで判断するのは失礼だとは思うのですが⋯⋯その⋯⋯」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」



わかる、わかりますよラティシア嬢。オレもあれを見たときは思い切り叫びたくなったからな。あんの悪魔、絵心のえの字もないくせに似顔絵なんて描くなよ。どこぞの化け物かと思ったぞ。


うーん、説明するのは難しいんだが取り敢えず説明しておきましょう。あの似顔絵、正直なところ、とある海中生物の成れの果てかと思ったくらいひどかった。


多分、顔だけ描いたつもり⋯⋯だと思いたい。なんか丸い顔に黒のクレヨンでバッサバッサ適当に髪の毛を描いてあって、返り血や混じる赤髪も描いた⋯⋯つもりなんだろう。顔や髪が赤く塗られていた。所々に塗っているつもりなんだろうが、あまりにもお粗末すぎてほとんど真っ赤になっていた。


それに番傘のつもりなのか、上にギザギザの何かが描かれていた。狐の面も描いたんだろうなぁ、不格好な角みたいなのまで生えてたぞ。


⋯⋯わかりますかね?つまり、角が生えたタコと河童と牛が混ぜこぜになったみたいな姿をしてたんですよ!しかも、番傘が河童の皿みたいなってるし。それに、いやらしい下卑た笑みを浮かべているんだぞ!?気持ち悪いどころか気色悪いったらもう!


そんな似顔絵を見せられたラティシア嬢の身になってみろ。王城では、ミルヒシュトラーセ公爵のご令嬢はあんな化け物と添うことになってしまったのかと憐れみの目を向けている悪魔ひとが大勢いるんだぞ!?


オレはあんな化け物顔なんかしてねえよ。もう少しまともに描けよ。それか、描けないなら初めから描くな!オレの認識がとんでもないことになってるだろうが!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ