魔方陣完成 聖鍵合体対死霊合体 ー11ー
「くそっ……どうなってるんだ。弱点を克服したっていうのか」
サイガがガイエルと二度戦闘を行った際には、この攻撃が内部破壊となり、倒すきっかけになった。体から煙も出ていたはずなのに、吸収しただけでなく、それをサイガの背中へと穴を通じて吐き出したのだ。
サイガの服は燃え、背中が焼け焦げた状態になり、膝をついた。
「俺様は一度死んだ身だからな。体はこの場に留まるための器に過ぎず、魂の存在だ。俺様の身代わりとなるのは多く存在する。この場にいる限り、お前の攻撃は全て反射される」
ガイエルはキースの体に集まった魂を奪い、それを口に入れただけでなく、無数の穴からも魂を吸収したのだ。それがガイエルの魂を守るだけでなく、貯蔵し、サイガに反射させたのだ。
「人間の姿ではなく、元の姿に戻ったらどうなんだ?その姿……あの時と同じだからな。力を制御していたせいで騙されたぞ。俺様は勇者ではなく、貴様に倒されたのも同じだからな。だが、今は違う。この状態で負けるはずがないからな」
「お前程度……元の姿に戻らなくても倒せるんだよ!」
サイガは以前にも人間の姿をした事があり、ガイエルはその姿を見た事があった。それはガイエルとの二度目の戦闘。その時も、サイガは元の姿に戻る事はしなかった。
「それなら試してみるがいい。全ての攻撃を反射し、自らの攻撃で死ぬか、絶望して俺様に殺されるかの二択しかないんだからな!」
ガイエルはサイガに攻撃を仕掛けない。それは自らの絶対防御に自信があり、それによってサイガに絶望を与える事が出来ると確信しているのだ。
サイガはエリスが消えた時に落とした剣を拾い、ガイエルに斬りかかると、無防備な状態のままで受けたのだ。だが、ガイエルの体が横半分に分断されたわけではなく、すり抜けた形になった。
それはガイエルの後ろに魔族の姿をした魂が半分になり、離れたのがサイガには見えた。つまり、サイガが斬ったのは別の魂となる。
そして、魔法だけでなく斬撃も反射した。今度は背中を狙わず、サイガの上。首を切断しようと黒い直線が引かれ、そこから剣が出現した。サイガにとっては死角からの攻撃だったのだが、赤い光に照らされていた事によって影が生まれ、攻撃位置を確認出来た事で凌ぐ事が出来た。
しかし、普通の攻撃は反射されるとなると、サイガは圧倒的に不利な状態に陥った事になる。
「おい!お前は自ら死んだ身と言葉にしたが、死霊も同じのはずだ。お前達は何故蘇る事が出来た?」
アイシャはサイガに攻撃の手助けや助言などをするわけでなく、ガイエルに蘇った真相を聞き質した。
「サイガを助けるでもなく、俺への質問だとはな。どうせ、お前も死ぬわけだ。それぐらいは答えてやる。俺様みたいに蘇る事も出来ないわけだからな。一つは死霊の力だ。俺をこの男の体に魂を呼び込んでくれたからな。そして、もう一つは死の世界、死界にゲートが開いた事だ。それによって、死霊は何者かに喚ばれた。それが何者かは俺様にとってはどうでもいい。俺様は蘇り、勇者の末裔や、貴様等に復讐出来たらいいのだからな」
「何者かが死者の世界へゲートを開き、死霊を喚んだというのか……面白い情報だな。それ以上の事は手に入らないようだし、時間もそろそろか……サイガ! この世界はガイエルだけでなく、死霊も協力した。つまり、死霊が倒されれば、残虐の無敵さもなくなる」
確かにこの世界に死霊が関与しているのであれば、死霊を倒す事で戦況は変わってくる。しかし、死霊の姿は見えず、現実世界の方で暴れており、サイガが倒しにいく方法もない。
死霊を倒すために、アイシャはエリス達と場所を交換したのだ。そして、現実世界の蝙蝠と巨大な羽となった蝙蝠は繋がっており、アイシャの元にエリスと死霊が戦闘に入ったという情報が届けられたのだった。




