魔方陣完成 聖鍵合体対死霊合体 ー9ー
「でも……そんなのいつ移動させられたって言うんですか?何か起動されるためのスイッチが……もしかして、あの鐘の音……が……」
「……そうかもしれない。エリスが肌寒く感じる前から準備され、地面の揺れと鐘の音がスイッチとなって俺達だけが反転してしまった……っと、シリア!」
シリアの言葉に、サイガは返答した時、急にシリアは膝を崩した。シリアだけでなく、マキナも重力に押し潰されそうになり、息も荒くなっていく。
赤い光がサイガ達に追いつき、時計塔までに達してしまったのだ。それによって死体は増えていくも、サイガ達を襲うのではなく、キースの魂に集まる禍々しい物に触れ、消えていく。
それはキースの魂に群がる物になったわけではなく、表の世界への入口となっているのだが、その中からガイエルが姿を現した。
「流石勇者の末裔でも言ったところだな。俺様と死霊が生み出した世界、魔界の瘴気を浴びても雑魚二人のようにはならないようだな」
ガイエルは蛇の目に長い舌、筋肉質の黒肌は人間に近いものがあるのだが、体全身に無数の穴があり、自らの体を武器の貯蔵庫とし、その穴から取り出す。それがガイエル本来の姿。だが、キースの魂と分離したのにも関わらず、右目と右耳はキースのままなのは、まだ繋がりを必要としているのか。
「キースの部分を残すなんて……」
マキナは言葉にするのも苦しくなっていた。瘴気とは人間に害がある空気。じわじわと体を蝕み、死に至らしめる。エリスに影響がないのは勇者の体に抗体が作り上げられているからだった。
「お前らは相手じゃないんでな。あの時の続きだ。俺様を倒さない限り、元の世界に戻れないぞ。それに時間が経過するごとに死霊があっちの世界で暴れる事になるな」
ガイエルはサイガとエリスに揺さぶりをかけ、平常心を失わせようとした。マキナとシリアを助けるためだけでなく、死霊を止めるためにも急いでガイエルを倒さなければならない。だが、焦って倒せる相手ではない事は、サイガも分かっている。
「そっちも余裕そうじゃない。アンタは前勇者に聖剣なしで倒された最初の魔王よね。そんな実力で私とサイガに勝てるとでも思ってるわけ?」
エリスに至っては揺さぶりが効かないどころか、ガイエルを挑発仕返した。
「あの時と一緒にするな!俺様が負ける事はなかった。あれはサイガ、貴様が」
「それを聞かせるわけにはいかないのでな。お前の相手はサイガだけにさせてもらうぞ」
ガイエルの言葉を最後まで聞く事なく、エリスとマキナ、シリアの姿が消え、その代わりにアイシャと蝙蝠二羽と入れ替わった。
「ゆっくり休んでいたのに……アンドに起こされたんだぞ!お前達がいないってな。しかも、罠に嵌まっているとは……お前がいながら何しておったんじゃ」
アイシャはガイエルを無視し、サイガに説教を始めた。




