魔方陣完成 聖鍵合体対死霊合体 ー7ー
「……そうなりますね。覚悟を決めたはずなのに……」
マキナはエリスの言葉に賛同しながらも、目から涙が流れていた。魔方陣を阻止し、残虐を倒すという事はキースの死を意味しているのに等しい。一度対峙した時には覚悟を決めたはずが、時が経過した事で揺らいでしまったのだ。
「マキナが手を汚す事はない。エリスとシリアの二人と一緒に死霊を相手にしてくれ。キース……ガイエルは俺がやる」
サイガはマキナだけでなく、エリスやシリアにも人を殺すという事をしてほしくなかった。それがガイエルであっても、体はキースであり、魂を壊す事になるからだ。
「そんな……魔王二人を同時に戦うのは厳しいかもしれませんが、残虐相手に一人で戦うなんて無茶です。私も一緒に」
「……それでいいんじゃない。サイガが残虐を相手にしている間に、私達で死霊を倒す。死者相手に魔法は必須だから、マキナも一緒に戦ってもらうわよ」
サイガが魔王だと勘づいたのか、エリスが助け船を出した。本当に魔王であるのなら、残虐に勝てるはずだと試すというのもあるのかもしれない。
「エリス様はサイガさんを信じているんですよ。だって、勇者のパートナーに選ばれたんですから。マキナ様もサイガさんを信じましょ。サイガさんには何か考えがあるんですよ」
シリアの言う通り、サイガには考えがあったのだが、それを口にする事をしなかった。それよりも、気になる点がいくつもあったからである。
一つは闇の日ではなく、光の日を選んだ事。闇の魔力が高まれば、魔方陣の完成も早まるはずであり、夜であろうと光の日であることには変わらず、低下は免れない。それはエリスが聖剣を使用出来ない事を知っていて、光属性を宿す事が出来ない。さらに魔族であるアイシャの力を警戒しているという可能性もある。
二つ目はサイガが眠っていた時に行動しなかったのか。力を取り戻すためだとしても、サイガが目を覚ましてからだというのはタイミングが良すぎるのだ。まるで、サイガが目を覚ますのを待っていたかのようにも思えてくる。
「前方に死者が……マキナ様とサイガさんは魔力を温存しておいてください。雑魚は私が相手をします」
地面からスケルトンやゾンビが這い上がってきた。それは人間の死体から生まれたものだと分かる。
「これは……魔方陣の完成が近付き、アンデッド達が出現したわけではなさそうですね」
アンデッド達は時計塔を守るように出現し、赤い光から生まれ出たわけではない。魔方陣が関係するのであれば、そこから這い出てくるはずである。
「ああ……死霊の仕業だ。死者は魔界から呼び出される。人間の死体を使うのは、足止めのためだ」
シリアは自分の実力を分かっており、サイガ達の体力と魔力をセーブさせるため、率先して前に出た。そして、マキナは死者が魔方陣とは無関係だと判断する頭脳があった。
死霊相手にマキナとシリアをエリスに付けて戦わせようとしたのは魔法を使えるからだけではなく、死霊は力よりも知略を重視し、それに対抗するために二人の頭脳が必要になるかもしれないからだった。




