魔方陣完成 聖鍵合体対死霊合体 ー5ー
「あわよくば借金を肩代わりしてくれたかもしれないのに。というか、自分の物にするんだったら借金を払わなくてもいいじゃないのよ」
ミクス王が聖剣を取り戻すというよりも、エリスの借金を返済してくれたら御の字だと考えていたのだが、上手くいかなった事に不満を持っているようだ。
「聖剣もなしで、エリスが魔法を使えないとなると……残虐と死霊両方相手にするのはキツいぞ。各個撃破するしかないな」
残虐だけでも厄介なのに、死霊を倒すには特殊な方法が必要であり、同時に倒すのは難しい。エルナの時も魔王達が協力し合う事はなかった。それは自分の実力を過信していたからだ。それも一度倒された事で、協力という考えが生まれたかもしれない。残虐や死霊も勇者一人の力で倒されたわけでなく、パーティーの力があったからだ。
「まぁ……聖剣がなくても、それなりの準備をしてるから。それよりも、全員揃ったんだから、夜の外に出てみるんでしょ」
「全員揃ったって……店長の姿はないんだけど。それに外に出るのは警備隊の手伝いか?」
サイガの家の中だから店長がいないのは当然かもしれない。シリアがマキナの部屋に寝ていたのがおかしいのだ。シリアも一緒に住む事なったのかを聞く事は出来なかった。
「店長にはやってもらう事があるから、それに集中させてるのよ。それと警備隊の手伝いとかじゃなくて、私達が外に出る事に意味があるのよ。夜はすぐにでも寝たいんだけどさ」
「その説明は私がします。エリスとサイガが共に行動する事で残虐や死霊を誘き出すという手段でもありますが、一番の目的は私が一緒に行動する事で、住民に安心感を持たせるためです。シリアと私が調べたところ、死者を蘇らせるには理由があるんです」
それは目を引き付けて結界を壊そうというわけではない。人々に恐怖や絶望を植え付けるため。サイガや現在の魔界の住人は違うが、一部にはそれを力に変換する魔族が存在する。最たる例が残虐と死霊なのだ。その事をサイガはすっかり忘れていた。その恐怖や絶望を拭いさるためにも勇者と王女が街を回る必要があるのだ。




