残虐の策略 魔王倒されるー12ー
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少女は世界で生きる事を許されなかった。村の迷信によって、神に捧げる生け贄として選ばれてしまったのだ。
彼女は捨て子であり、村人達は生け贄として捧げるためだけに、ある家で育てられ、拒否権などあるはずもなかった。
そして、彼女もその運命を受け入れていた。それが一緒に住んでいた少年には許せなかった。迷信を信じる大人だけじゃなく、運命だと受け入れる少女も。
少女は優秀だった。勉学も武術もスポンジが水を吸い込むように覚えていくのに対して、少年は無能だった。
生け贄には子供の命が一つ。それ以上でも、それ以下であってもならず、断崖絶壁から飛び降りなければならない。
その事を少年は知っていた。だからこそ、儀式の中、少女が飛び込む前に、少年は飛び降りた。
両親は優秀な少女を育てたく、無能の少年を不必要だと言葉にしていた。それが理由ではなく、少年は少女の事が好きであり、だからこそ命を捧げる事が出来た。
落下の衝撃に体は砕け、沈み行くのに抵抗出来ず、暗い底に向かっていく。そこは地獄に繋がっていたのか、海の底にいたはずが紅い空へと変わり、下には血のような海が広がっている。
そして、巨大な竜が空を舞い、少年を喰おうと大きな口を開けた。少年の体はすでに死に体であり、僅かに動いていた心臓も停止し、竜の中に消えていくはずだった。
しかし、少年の心臓は再起動しただけでなく、魔力が少年の体を駆け巡り、砕けた骨も組み合わされ、構造も変化していく。
「小僧……目を覚ましたようだな」
少年の目の前に白い長髪に金色の瞳、白のドレスを着た女性が立っていた。




