残虐の策略 魔王倒されるー11ー
「何をしている。これ以上魔法を使えば、魂まで殺してしまう。我等の計画を自ら潰すつもりなのか」
死体をガイエルの盾にさせたのは死霊であり、声はするがマキナの目には見えていない。
「死霊も来たのか。丁度お前には聞きたい事がある。どうやって、貴様達が蘇る事が出来たのかをな。二人同時に相手にしてやってもいいぞ」
マキナの目には見えていなくとも、アイシャには死霊のいる場所が分かっているのか、このフロアの影がある場所に光の槍を突き刺していく。
「……我が影の一部となっているのを気付いていたか」
光の槍が死体に出来た影に突き刺さった事で形を変え、表に出現した。その姿は全身黒いマントに身を包み、顔は人間の骸骨であり、手には水晶玉のような物を持っている。
「あいつは魔王で俺様を馬鹿にしたんだ。引き下がれるか!事が終わるまで、そこで待って……」
ガイエルは熱くなり、アイシャとの戦闘を続けようとしたが、盾となった死体から布が飛び出し、右目部分だけを残して全身に巻き付いていく。その布は聖骸布であり、ガイエルの魔力が低下していくのが分かる。ガイエルの魔力は、キースの体にとって呪い扱いされているのだ。
「熱くなりすぎだ。我等は完全に復活したわけではない。現段階ではあちらの方が実力は上だ。呪いは満ちたんだ。準備が整うまで姿を隠しておけ」
「くそっ!覚えていろ……お前達を殺すのは俺様だからな」
ガイエルの体は自らの影に吸い込まれていく。それはアイシャが使った移動魔法の一つであり、エリスの前で死霊も使用していた。それをアイシャは邪魔する事もせず、簡単に逃がした。
「簡単に逃がしてくれたものだな。我も逃がしてもらうとしよう」
死霊は全ての死体を影に吸い込み、自らも影に沈んでいく。
「何故あの二人を逃がしたのですか?死霊は姿を現したのに……私達がいるからですか」
魔王二人を相手に、アイシャはサイガ達を守りながら戦わなければならない事になる。アイシャの強気な言葉によって、二人を退かしたのだとマキナは思った。
「いや……死霊から情報を奪うつもりでいたさ。だが、サイガのガイエルに受けた魔法による呪縛の進行が予想以上に早そうだ。早急に治療しなければならない。サイガの治療は私にしか出来ないからな。それに……魔王を倒すのは魔王役目。力を取り戻してもらうためにもな」
最後の言葉はマキナには聞こえておらず、アイシャはサイガの呪縛の治療に入った。




