残虐の策略 魔王倒されるー8ー
「されるわけにはいきません!」
マキナはサイガの前に防御用の風魔法を唱えた。間に合ったのは合体魔法がキャンセルになった事で、僅かに詠唱が変化したからだ。
キースが放ったのは風の刃。マキナは盾としたのは風の壁。至近距離故に風魔法同士の衝撃がサイガとキースを離したが、キースの体は魔法を反射した形になり、左腕を切り離した。
サイガに直撃していれば真っ二つに体が切り離されていただろう。マキナの魔法の選択が良かったから防げてたのもあるが、ガイエルの体が完全に侵食していない証拠でもある。そうでなければ、防ぐ事は出来なかったはずだ。
「偽者め……その姿をしているだけでも許せないのに、こいつを殺すのを邪魔するとは……先に殺さなければならないのは」
キースは左腕が切り離されたはずなのに、苦痛に顔を歪める事がないばかりか、血が溢れ出す事もない。まるで、キースの体がすでに死体と同じになっているのか、左腕は離された時点で崩れさってしまった。
それだけではなく、切られた断面から緑色の魔族の血が流れ出すと、内部から腕が生えてきた。それは黒肌であり、ガイエルの左腕。キースに魔法を唱えされるだけでなく、キースに攻撃する事でも、ガイエルの支配が強くなっているのだ。
「すみません。助けるのが無理であるのなら……私がキースを殺してあげるべきなんです」
マキナはキースの体からガイエルの腕が生えた事で、人間から遠ざかっていくのが分かった。時間の経過により魔族になるだけでなく、存在が変わってしまうのであれば、ガイエルとなる前に、キースのままで死んだ方が救われると考え、サイガの言葉を無視し、防御魔法ではなく、攻撃魔法に切り替えた。
「くっ……止めろ!一旦ここから離れるんだ。腕が変わった事で魔力が上がったのは分かっているだろ。キースの声が出ているが、ガイエルは詠唱を始めてる」
サイガはマキナの風の壁で無事だったが、端の壁まで飛ばされていた。そして、その言葉は遅く、マキナの動きを止める闇魔法が発動され、断頭台の刃の魔法へと連携していく。




