残虐の策略 魔王倒されるー5ー
キースの屋敷内は魔法による破壊が行われていただけでなく、血生臭さが充満していた。それは多くの人間が殺されていたからだった。キースの家族、雇われた使用人達、中にはキースを襲った相手さえも色んな箇所を刻まれた状態で殺されていたのだ。
「おい!まだ息がある奴がいる。回復魔法で治してやってくれ」
血塗れとなった床を這うように逃げようとしてるのは、キースを襲った人間の一人。両足と片腕を斬られた状態になっており、今にも生の糸が切れそうだ。
「分かりました……これは……呪いが付加されているせいで、私の回復魔法では無理です」
斬られた箇所から血が流れているだけでなく、肉が黒く変色し、腐っていく速度が異常であり、マキナの回復魔法のレベルでは追い付く事が出来なかった。
「くそっ!何があったんだ。仲間の魔族が暴走でもしたのか。答えてくれ」
「お……俺達は……ただ……パートナーや友達を殺され……墓の前で……謝るよう……無理にでも連れていこうと……なのに……来た時には殺されていて……」
最後まで言えずに事切れてしまったのだが、これが事実だとすれば、キースを襲った相手に死霊は関与していない。ただ、暴走化したパートナーを殺された事に対して憤り、行動に移したのにすぎない事になる。それだけでなく、中にいる人達を殺した事を否定していた。死の直前に嘘を言うとは思えない。
「他にも誰かが……死霊かもしれません。急いでキースを」
魔法が発動し、何かが壊された音が鳴り響く。まだ戦闘は続いているのだ。キースを襲った相手はまだ何人かいたはずであり、殺された仲間の仇を討つために戦っているのかもしれない。
「……行こう。犯人が誰なのか確認するぞ」
サイガはキースを助けるとは言葉にせず、死霊の犯行とも思っていなかった。死霊は滅多に姿を見せないばかりか、綺麗な状態の死体を好む。それは利用するためであり、この場でも死体を使っていてもおかしくないからだ。
「助けに……来ました……貴方は何を!」
サイガとマキナは戦闘が起こっている場所に着いた。そこには暴死霊や操るアンデッド、暴走した魔族の姿はない。
マキナが見たのは逃げる相手にキースが魔法を放ち、殺す場面だった。




