残虐の策略 魔王倒されるー3ー
「あの馬鹿……今の実力で死霊に勝てるとでも思っているのか……私はやらなければ事が多い。手短に説明するぞ」
アイシャはエリスとシリアに死霊に関する説明を再開した。
「魔方陣の発動には四人の生け贄と殺す場所は教えたな。その場所で殺害をさせないのが一番だが、墓地となれば諦めたほうがいい。これは発動のための第一段階に過ぎないからだ」
魔方陣の発動には工程が三段階ある。
最初が四ヶ所に生け贄を置き、その命によって文字を描く。
二段階目は魔方陣の中心に強力な呪物を設置する。
最終段階にはその呪物を壊し、一面に広げる事によってアンデッド達が蘇る形となる。
「魔方陣の中心って……時計塔。最悪、その呪物を破壊されなかったらいいって事なの。それが何なのかアンタは分かってるわけ?」
会長候補を殺す事に固執しなければ、第一段階はすぐに終えてもおかしくない。それならば第二段階を防げばいい。場所が時計塔と分かっていれば、それを設置させず、奪い取ればいい。
「そうですよ。呪物が何か分かっているのなら、今からでも時計塔に行って、探し出せばいいんじゃないですか?エリス様と一緒なら、すぐにでも行きますよ」
第一段階も終わりに近付いているのであれば、時計塔にすでに設置されていてもおかしくないとシリアは考えた。
「残念ながら、決められた物じゃない。物でなくとも人間でも構わない。呪いを体に宿していれば、会長候補をここで殺す可能性もある。そのための聖骸布が必要だったとも考えられるか」
聖骸布は呪いの進行を防ぐ効果がある。それは魔方陣の中心に開放するためには、違う場所で呪殺されると困るからだ。
「人の可能性もあったら、それを防げるわけないじゃないの。どっちにしても会長候補を匿うのはしたほうがいいわね。二人が殺されたんだから、あっちも喜ぶだろうしね」
「それなら、今から学園に行くんですか?私もエリス様とご一緒させてもらいますから」
会長候補は学園を休むわけにもいかず、すでに殺されていなければ学園の中にいる事になる。
「二人は学園に行くのだな。アンドも一緒に行ってやれ。それと……一応、忠告だ。死霊は普通の物理攻撃、魔法では殺せない。出来るとすれば、サイガかエリスだけだ。聖剣を使えないのであれば、あれを解除する事だな」
アニメで死霊を倒すために、エルナは光と火の合成魔法を使った。勇者は聖剣に選ばれ、使用する事により光属性も体に宿す事が出来る。エリスが宿すのも、エルナと同じで属性は火なのだ。
「あれって……何でアンタが知って……」
エリスは店長を睨み付けた。店長がパートナーであるアイシャに言っていてもおかしくない。
それはエリスが魔法を使えない理由でもある。
「まぁ……いいわ。これが終わったら色々と聞かせてもらうから。サイガの事も……知り合いのアンタなら知ってるかもしれないし」
「構わんぞ。聞きたい事が何なのかは想像出来るがな。それを知ったとして、どうするつもりだ……とは聞かないほうがいいな」
エリスはそのアイシャの言葉で分かってしまった。本人も言っていたように、サイガが魔王である事に。




